表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
688/999

8-39 魔族との戦争開始

―1―


「おい、ジャイアントクロウラーが歩いているぞ」

「誰かのテイムした魔獣だろう」

 誰がテイムした魔獣だ! って、まぁ、ここでコトを荒立てても良いことがないからな。気にしない、気にしない。


 と言うわけで、キュイキュイ鳴いてます。


 きゅいきゅい。


「マスターを……」

 だから、14型さん、その凶悪な篭手を構えるのは止めなさい。俺がせっかく無害な魔獣のふりをしているのに、それが無駄になるじゃないか。


 大規模な魔獣の行軍、その先頭には魔族と魔人族の姿が見えるという。そんな訳で神国の兵士や傭兵を集めて行軍、もうすぐ接敵――それが現在の状況だ。


「おい、そこの! 識別布をつけろ。特にテイムした魔獣には忘れるな。乱戦時に間違えて攻撃されても知らないぞ!」

 神国の兵士ではなく、傭兵と思われる、とっぽい兄ちゃんが俺の腕に識別布を巻いてくれた。


 とりあえず俺はキュイキュイと鳴いていよう。


 きゅいきゅい。


「にしても、上半身を起こして歩き、さらに人のように武装をしているなんて、変わったジャイアントクロウラーだな」

「ヘルクロウラーを騎乗用として育てて使っている騎士もいるくらいだ。こんなのがいてもおかしくないだろう」

「変わったランクアップをした変異種かもしれないな」


 きゅいきゅい。


 って、だから、14型さん。無表情なまま相手を射殺しそうな視線を送るのをやめてください。これから戦争になるんだからさ。


 魔獣の数は地平線を埋め尽くすほど、更に先頭には魔族……だもんな。どう考えても、これが本命、魔族の総力決戦って思うよなぁ。


 しかし、これすら陽動。


 本命は、この大群を陽動とし、空飛ぶ城で神国中枢へと迫っていた。それに気付いたセシリア女王は足の速い俺に救援要請。俺は、この前線部隊の隊長に伝言、それと、この大軍の相手って訳だ。

 この魔獣の大軍をサクッと殲滅して、とって返し、急襲を仕掛けている空飛ぶ城を挟み撃ちって寸法さ。

 その空飛ぶ城には勇者ジョアン、紫炎の魔女ソフィア、森のシロネ、聖女シトリが向かっている。まぁ、ジョアンたちなら安心して任せられるからな。にしても、ジョアンが勇者……か。確かにあいつは、どんな時でもさ、何度もで立ち上がる勇敢なヤツだったけどさ、勇者って呼ばれているのを聞いて驚いたよ。


 しかし、魔族の目的が読めないな。こんな魔獣の大群を囮にしてまで、神国に攻め入る理由はなんだ? 今更、神国に攻めても、何も得られる物なんて無いと思うんだが……。




―2―


 14型が、王宮で見かけたことのある豪華な鎧に身を包んだ若騎士に、セシリア女王からの書簡を渡す。

「確かに受け取った」

 この人が、この前線の将軍って感じなのかな。


 若騎士が手渡された書簡に目を通す。

「ふむふむ……むむむ」

 何やら難しい内容なのか?


「ラン殿」

 若騎士が俺の方を向く。


 きゅいきゅい。とりあえず鳴いて誤魔化しておく。


「今日はここで陣を張ります。明日には魔族との戦いになるでしょう。そのお力、期待しています」


 きゅいきゅい。


「マスターに任せるのです」

 そして、何故か14型が得意気だ。

「にゃ、にゃ」

 それを見て、何故かエミリオが腹を抱えて笑っていた。こいつら、緊張感がないなぁ。


 そして、翌日。


 陣形を整えている俺たちの前に、魔獣の群れが現れた。そして、その中から、グリフォンに乗った男が、一人、こちらへと進み出てきた。男はキラキラと銀色に輝く長いマントを纏っている。いかにも大将って感じの目立つヤツだなぁ。


 鑑定は……、


【鑑定に失敗しました】


 この男が魔族か。


 その男が大きな声で叫ぶ。


「ヒトモドキども! 聞こえるか!」

 何かの力で声を大きくしているのか、声は俺たちの方まではっきりと通っていた。


「こういう戦場では、名乗りをあげるのが礼儀だからな! それが、いくら蹴散らすだけのヒトモドキが相手だとしてもな!」

 いやぁ、あの単騎で突出してきたお馬鹿な魔族に、いきなりアイスコフィンやアイスストームをぶちかましたらダメかなぁ。


 ダメかなぁ!


「俺の名前はリフリッジレイター。さあ、恐怖に震えろ!」

 男の言葉に合わせて、魔獣の群れの中から手に筒を持った男たちが前に出てくる。何だ? 何をするつもりだ? 沢山、魔獣を揃えたのに、そちらをけしかけてはこないんだな。


 男たちは膝をつき手に持った筒を構える。まさか、銃か? そんなモノが、この世界にあったのか?


「魔族の言葉に惑わされるな! 突撃!」

 若騎士の言葉に前線が動く。


「撃て」

 リフリッジレイターの言葉に合わせて、炸裂音と共に筒から弾が発射される。やはり銃か。


「そのような豆粒を撃ち出す道具で何とかなるとでも!」

 兵士たちは銃弾をモノともせずに駆けていく。そりゃそうか。この世界、SPっていう魔力で作る盾に体が覆われているから、生半可な攻撃じゃあ、傷を負わないしさ、ちょっとした攻撃なら回復魔法で治るし、銃なんて、脅威にならないよなぁ。魔族は何がしたいんだ?


 すると、前を進んでいた兵士たちが、突然、苦しみだし倒れた。へ?


「クヒヒヒヒ、効果覿面だなぁ、おい!」

 何だ? 銃弾に毒でも入っていたのか?


『何をした!』

 とりあえず天啓を飛ばし聞いてみる。


「ハハハッハ、お前らがクラスチェンジとやらに使っている石、知っているよなぁ!」

 よし、釣られて語り出したぞ。まぁ、秘密を知っていると喋りたくなる気持ち、分かるぜ。が、そんなんじゃあ、小者扱いされるだけだぜ!


「お前ら、ヒトモドキの体を造り替える黒い石だ! そいつを加工して弾にしたのさ! お前らは強制的に体を造り替えられ、死に至るって訳よ!」

 何だと? 魔族がクラスモノリスを集めていた理由って、コレかよ!


「お前らの中にはよー、その力を鍛え上げて、恐ろしい力を身につける奴も居るからな! そんなヤツでも、これなら一撃! お前ら、ヒトモドキが必死に鍛え上げたものが無駄になる気持ちはどうだ? 最高だろう!」

 魔族でも鍛えた人は脅威――か。


 確かに一撃必殺は怖いな。


 が、それも俺が居なければ、だな!


 ああ、今こそ俺の出番だぜ!

2018年2月7日修正

魔族と魔人族の姿見えるという → 魔族と魔人族の姿が見えるという

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ