8-36 フミコン通信機だ
―1―
『フミコン、通信機が完成したと聞こえたのだが』
俺の天啓を受けたフミコンは得意気に大きく頷いた。
「ラン王は例の板はお持ちかのう?」
フミコンが懐からステータスプレートを取り出す。例の板って、それのことかよ! って、アレ?
『フミコン、魔族でもステータスプレートを持つことは出来たのか?』
俺はフミコンに限定して天啓を飛ばす。そのステータスプレート、色は銅みたいだけどさ、最初から持っていた訳じゃないよな? だって、フミコンは何も持っていなかったもんな。
「スカイが持っていた物を譲って貰ったのじゃよ」
いや、そういうことじゃなくてだな。
「分かっておるよ。わしでも登録出来た……ということは女神、は、わしらのことまで想定していたのやもしれんのう」
ん? ステータスプレートも女神が作ったのか? あれ? そうだったか? いや、ちょっと待て、ちょっと待て、その前だ。『スカイから貰った』と言いましたか。
『スカイから貰ったのか?』
「わしも冒険者に登録しようと言ったら貰えたのじゃよ」
ちょっと待てー。スカイ君、普通は冒険者になるのに試験があったり、ステータスプレートを貰うためのクエストがあったりするんじゃないのか? いやまぁ、魔族であるフミコンなら試験は余裕だろうけどさ、でも、サクッと渡してしまうのは違わないかね。あいつ、本当に適当だなぁ。
『普通は試験があるのだよ』
「なるほどのう」
にしても、ステータスプレートか。これを使って通信するのか?
とりあえず、俺のステータスプレート(螺旋)を取り出す。こいつをどうするんだ?
フミコンがステータスプレートの周りにはめ込むような金属の枠を取り出す。
「これをはめるのじゃよ」
ふむふむ。
俺はフミコンから金属の枠を受け取り、自分のステータスプレート(螺旋)にはめ込む。ふむ、ぴったりはまるな。
で、どうするんだ?
「ラン王、その枠には右上の方にボタンが4つあるじゃろう? その一番下を押しながら喋ってみて欲しいのじゃ」
なるほど、これがスイッチか。とりあえずサイドアーム・ナラカでボタンを押さえて……って、俺、喋れないじゃん! いや、まぁ、《変身》スキルを使えば喋れるようにはなるけどさ、このために《変身》スキルを使うのは……。
あ、そうだ。
――[ウィンドボイス]――
「上から来るぞ」
ウィンドボイスの魔法を発動させ、登録していた声を再生させる。
「上から来るぞ」
するとフミコンが手にしているステータスプレート(銅)の方から同じ声が聞こえた。これ、殆どタイムラグを感じないな。距離が近いからだろうか。
「ほっほっほっ、どうじゃ?」
うむ、凄いと思うぞ。
「この板が、板同士で何やらデータのやり取りをしておるようじゃったのでのう、それにスカイが持っていた通信機の機能を流用して、会話が出来るようにしたのじゃよ」
あー、そういえば確かにステータスプレートって何かデータのやり取りをしているぽかったな。それを利用したのかよ。もしかしてフミコンって天才か?
『これはどれくらいの距離まで通話出来るのだ?』
「その板の機能を使っておるからのう、その板が使える限りは大丈夫じゃよ」
へ? ということは、ほぼ、制限無しとか、そういう感じなのか。それって、凄すぎないか?
『この他のボタンは?』
「ふむふむ。一番は上はぱーちぃーを組んでいる時にぱーちぃー内で通話出来るボタンじゃよ。その下、3っつは登録したもの同士で通話が出来るボタンじゃ。とりあえず、わしの4番目とそちらの4番目を登録したのじゃよ」
なるほど、登録した者同士は3人、いや、3ヶ所までってことか。パーティメンバー間と3つだけかぁ。便利は便利だけど、割と制限がきついなぁ。使う距離にもよるけど、トランシーバー的な使い方になりそうだな。
こうなってくるとステータスプレートの数が欲しいな。いや、待てよ。ステータスプレートの数がなくても、この金属製の枠が沢山あれば、入れ替えて使えば何とかなるんじゃないか?
『この枠を入れ替えることで登録数を増やせないだろうか? いや、それよりも、このボタンの数を増やすことは可能か?』
そうだよな、ボタンが増えればいいじゃん。
「無理じゃよ。現状ではボタンの数4つが限界じゃよ。その通信機の入れ替えも、その板に登録された情報を元にしておるでのう、一つにつき一つになるんじゃよ。板と板間は先程と同じように近くの場所で同時にボタンを押せば登録されるのじゃよ」
無理かぁ、無理かぁ。それに登録方法を聞くと誤動作が怖いな。余り普及させると、他の人に話すつもりが近くの人と登録してしまった、なんて事態も起きそうだ。
と、そういえば、そのフミコンのステータスプレート(銅)ってスカイが用意したって言っていたよな?
『スカイは何個かステータスプレートを持っていたのか?』
「そうじゃのう、すたーたーなんちゃらに金が1、銀が2、銅が10って言っておったのう。それが、わしが予想するに、板の数かのう」
へぇ、結構な数があるんだな。
ということならッ!
銅の10個は全部没収だな。ステータスプレートを持っていないが重要な役職の人に配ろう。フミコンにさくっと渡すくらいだから没収しても問題なかろうなのだ。まぁ、さすがに銀や金は考えるけどさ。
さあて、これでフミコン通信機の完成だな。略して……いや、略すのはいいか。まぁ、何にせよ、これで遠距離とのやり取りが楽になるぜ。
特に今は神国と迷宮都市でやり取りが活発になりそうだもんな。ホント、良いタイミングだぜ。
2017年1月3日修正
ぱーちぃー間で → ぱーちぃー内で