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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
683/999

8-34 偽りのヒトとして

―1―


 フミコンを連れて玉座の間へと入る。と、魔法のカンテラの明かりの下、ちょうどユエと子どもたちが居たので、フミコンが着られそうな服を見繕って欲しいと頼む。ユエは少し不思議そうな顔でこちらを見ながらも頷き、置いていた魔法のカンテラを持ち、遊んでいた子どもたちを連れて、部屋の外へと歩いて行く。


『さてと、ユエが戻ってくるまでの間、ここには自分とお前しかいない』

「マスター、記憶領域が極小で忘れてしまっているかもしれないのですが、私も居るのです」

 はいはい、14型さんは頭数に入っていないからね。

「なんじゃ、やはり、わしをいたぶろうというのか。なんと、酷いヤツじゃ!」

 フミコンはこちらを見て、ひょひょひょと気持ち悪く笑っている。おいおい、この爺さん、実はこの状況を楽しんでないか? 絶対、楽しんでるよな?


『教えて欲しい。魔族は何を目的に動いてるのだ? 何故、こちらをヒトモドキと呼ぶのか?』

 俺の天啓を受けたフミコンから気持ち悪い笑い声が途絶えた。

「魔族の目的のう……」

 そして、フミコンが、射貫くかのような鋭い眼光で俺を見る。

「星獣が、それを言うか、聞くか」

 いや、そう言われましても……。

「わしらの目的、その根底にあるのは、生きたい、死にたくない、じゃな」

 いや、それは生き物だったら、みんながそうなんじゃないか? そういうことじゃなくて、だな。


「なんじゃ、納得出来ないようじゃのう。暗闇で見えずとも、不満そうな感じがこちらまで伝わっておるぞ」

 納得というかだな……。

「まぁ、そうじゃのう。この狂った世界を終わらせてやる、そう信じて行動しておる者もおるじゃろうな」

 俺にはさ、最初から、こういう世界だったって感想しかないからなぁ。この世界が、間違っているのか、以前はどうだったかなんて、分からないもん。だから、狂っているから終わらせるって感覚が分からないな。


「そして、ヒトモドキについてかのう。うーむ」

 何だか、フミコンは、この話題を口にはしたくなさそうだ。


「この世界、いや、この女神とやらの世界にはのう、人はいないんじゃよ」

 人が居ない? いやいや、意味が分からないぞ。

「しいて言えば、わしらが人だったものじゃろう」

 人だったもの? いやまぁ、確かに魔族の鑑定の結果は人だったけども……。

「が、経緯はどうあれ、力を求め、人としての姿、考えを捨てたわしらが、今更人を名乗るのもおかしかろうて」

 フミコンは暗く、笑う。


「生まれてすぐ――いや、造られてすぐ、そんな時のお主らは、意志を持たぬ、それこそ、女神とやらの命令に従うだけの人形のような存在じゃった」

 やはり、ウルスラが言うように、この世界の人って、女神が造った存在なんだな。

「それが、いつしか意志を持つようになり……」

 だから、人の形だけを真似しているからヒトモドキ、か。でもさ、俺には、皆が、そんな、魔族が言うような命令に従うだけの人形には見えないよ。


「ラン様、とりあえず適当な服を持ってきました」

 と、そこでユエが戻ってきた。

「きまひたー」

「きたー」

 おお、ちびたちも一緒だな。にしても、もう喋れるのかよ。成長するの、早いなぁ。


「そうじゃのう、お主らは、もう新しい人じゃよ」

 フミコンがちびっこたちをみて独り言のように呟いていた。


『ユエ、助かる。それとフミコンは裸ゆえ、後ろを向いててくれると、さらに助かる』

「は、はい」

 ユエが後ろを向き、しゃがみ込む。そして、その背中にちびっこがよじ登り始めた。この子ら、ホント、アクティブだなぁ。


『14型、降ろしてやってくれ』

 俺の天啓を受け、14型がフミコンを地面に降ろす。そこで《魔法糸》も解除する。


『早く着替えるといい』

「すまんのう」

 フミコンがいそいそと着替え始める。


「ラン様、彼は何者なのですか?」

 ユエが後ろを向いたまま、こちらに聞いて来た。まぁ、気になるよな。


『この者はフミコンだ。若く見えるが、実際は結構な歳なので、そのつもりで対応して欲しい』

 俺の天啓に、フミコンが「あまり年寄り扱いして欲しくないのう」と呟いていた。わがままだなぁ。

『フミコンは、この城の技術者だ。これから彼の知識を借りるところだったのだ』

「そうだったのですね」

 そうだったんですよ……多分。




―2―


 着替えたフミコンがスキップをしながら玉座まで進む。

「ここが、下に降りる装置になっておるのじゃ」

 そして、玉座をくるくると回す。あ、それ、そんな風にまわるんだ。

「ほれ、充電したから動くぞ。早う、早う」

 俺と14型も玉座へと近寄り、そのまま手をかける。

「下へまいります、じゃ!」

 床が開き、俺たちを乗せた玉座が下へと降りていく。


 ……。


『フミコン、この仕掛けを作ったのは誰だ? 何というか無駄ではないか?』

 俺の天啓を受けたフミコンが指をふる。

「わかっておらん! ダメじゃのう、こういうのは浪漫じゃよ、浪漫」

 さいですか。


 フミコンが玉座から飛び降りる。

「完全に落ちてるのう。鍵は……あるはずもなし。手入力かのう」

 そして、そのまま室内をせわしくなく動き回る。


「マスター、これを動かすのが目的なのですか? 言ってくださればいくらでも私が動かしたのですが」

 はい、そうですか。

「そこなお嬢ちゃん、あんたらには機械の扱いは無理だと思うんじゃがのう」

「何を言うのです。この戦闘(バトル)メイドである私にかかれば、このような機械お茶の子さいさいなのです」

 何故、そこで張り合う。にしても、お茶の子さいさいって、俺、凄い久しぶりに聞いたよ……。


「待て、もしや、お嬢さん、機械人形か!?」

「いまさら、何を言っているのです」

 14型さんが偉そうだ。


「こんな精巧な機械人形じゃと……。もしやサーティンナンバーズか。いや、しかし、あれは……」

 うん? この爺さん、まさか14型を知っているのか?


『フミコン老、14型を知っているのか?』

 俺の天啓を受けたフミコンは首を横に振っていた。

「いや、わしの勘違いじゃ。しかし、優れた機械人形じゃのう。人と区別がつかぬ。わしでもみぬけなんだぞい」

「当然なのです」

 だから、14型さんは、何で、そんなにさ、無駄に偉そうなんだ。

2021年5月7日修正

こちらを身ながらも → こちらを見ながらも

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