8-22 鉱脈を続いて調査
―1―
――《魔素操作》――
黙々と魔素を操作し、毒ガスを中和し続けていると親方たちがやって来た。意外と早かったな。
「主殿、食べ物を持ってきた」
護衛はミカンか。ソード・アハトさんたちはアイスパレスの方で休んでいるのかな?
――《魔素操作》――
『置いといてくれ。それにしても親方たちとミカンだけで来たのだな。親方にハウ、疲れは残っていないか?』
俺の天啓に親方がガハハハっと大きな声で笑う。
「鬼人族の体力を舐めるなよ。一日休めば元気いっぱいよ!」
そうか、それは良かった。
――《魔素操作》――
「フルールもいますわぁ。置いてくなんて酷いですわぁ」
ああ、フルールもいたのか。足手まといにしかならなさそうなのに何で来たんだ?
「ああ、どうしても鉱脈を確認したいと言って聞かなかったのだ」
ミカンちゃんが呆れていた。脳筋のミカンを呆れさせるとか、フルールはなかなか凄いな!
「にしても……ランの旦那、何をやったんで?」
「毒ガスが殆ど見えなくなってます」
親方とハウ少年が驚いていた。まぁ、延々と、黙々と魔素を操作して中和していたからな。それこそ、寝る間も食べる間も惜しんで、な! まぁ、俺自身、頑張りすぎたかなぁと思うくらいに頑張ったからな。
「ここら辺一帯は、余り寒くないようだが、ランの旦那、何かやったんですかい?」
親方が首を傾げている。まぁ、元々、ここら辺は再生のファイアストーンの力で暖かかったみたいだけどさ、それにあわせて魔素の操作もしているからな。
「そういえば、最近はお城の方も、以前よりも寒くないようだが……」
ミカンが腕を組んで考え込んでいる。脳筋のミカンちゃんが答えを出せるのだろうか!?
「もしや主殿が?」
正解です。まさか、ミカンが正解を導き出せるとは……。
「まぁ、何かあれば、主殿の関与を疑えば間違いないからな」
ちょっと待て、ちょっと待て、ミカンの中で俺はどういう扱いなんだ。酷くね?
「間違ってないのですわぁ」
「だよなぁ」
「だと思います」
4人がうんうんと頷き合っている。俺、そんな異常なコトをするタイプじゃないじゃん。普通のことしかしてないじゃん。
『もうこの周辺に毒ガスの脅威はないだろう』
俺、頑張った。さあ、ミカンが持ってきたご飯を食べるか。
ご飯、ご飯、ご飯だぜー。
「ランさまは休憩ですのぉ? では、その間に鉱脈を確認しますわぁ」
フルールが動き出す。お前、鉱脈の確認とか出来るのか?
もしゃもしゃ。
「俺らは道の確認をするぞ。ハウ!」
「はい、親方!」
親方たちは作っている道の確認か。
もしゃもしゃ。
ミカンは周囲を確認しながら、自然体で立っている。何というか、ミカンちゃん、侍としての風格が出てきたよなぁ。
もしゃもしゃ。
―2―
「この鉱脈では錫や銅、それに真銀が眠ってそうですわぁ! ラン様、真銀ですわ、真銀!」
鉄はないのか。にしても、真銀って鉱脈から出てくるもんなんだな。もっと、こう、魔法で作ったとか、そういう金属なのかと思っていたよ。
「こっちルートはダメだな。この道は、この鉱脈への道として諦めて、途中から迂回路を作るしかねえな」
ふーん。まぁ、俺はよく分からないから、親方に任せるよ。
「蟻人族の方々が復活したら、再度ルートを検討ですね!」
ハウ少年の方が親方を操っているように見えるぜ。ハウ少年は優秀だなぁ。
「何を言ってるんです、ですわぁ」
しかし、そこへフルールが待ったをかけた。
「こんな美味しい鉱脈が眠っているんですわぁ。それを放置するなんて、あり得ませんわぁ。蟻人族の方には、こちらを優先してもらいますわぁ」
「でも、道と港は優先事項ですよ! 船長が戻ってきた時に港がなかったら大変ですよ!」
いやいや、俺も、別にファットが戻ってくるまでに道を完成させろとか言ってないからな。それはさすがに強行軍になるし、無理があるだろ。もしかして、出来る都合で考えていたのか? うーむ。
フルールとハウ少年がにらみ合う。フルールも子ども相手に大人げないなぁ。
『よし、分かった。蟻人族の方々を二つに分けて協力して貰おう』
蟻人族の方々、人気だなぁ。
「まぁ、俺は、それで文句はねえよ」
「そんな親方! それだと作業が遅れてしまいます」
「おい、ハウ! これはよ、元は俺ら建築ギルドの人員だけでやる予定だった仕事だろうが。あまり、外部の方々の力をアテにしすぎると、うちのもんが泣くぞ」
親方の建築ギルドの作業員さんたちってさ、どれくらい仕事が出来るんだろうな。あまりアテに出来ない気がするなぁ。
『ソード・アハト殿にも手伝って貰おう。それとエミリオも力になってくれるはずだ』
くれるよな? 羽猫が運搬を手伝えばかなり作業は捗るはずだ。でもさ、羽猫は結構、気まぐれなところがあるからなぁ。
「いや、でもよ。ランの旦那、城の防備はどうするんだ?」
親方がそれを気にするんだ……。
『自分と、そこのミカンで守ろう』
ゼンラ少年や蟻人族の新しい女王、と俺の陣営には守らないと駄目な人が多いからなぁ。まぁ、この場所は誰も知らないと思うから安全だと思うけどさ、それでも手を抜くわけにはいかないからなぁ。
「うむ。自分と主殿で守る」
ミカンが刀を鳴らしていた。ま、ミカン1人で大丈夫そうな気もするけどな。
仕方ない、ある程度、落ち着くまでは城でゆっくりするか。まぁ、手に入った再生のファイストーンで色々と実験をしたり、魔素を操作して、気候を変えたり、やることがないわけじゃないしな。
さあ、方針決定だぜ。