2-59 蜥蜴
―1―
冒険者ギルトに到着。
「お、虫」
今日はちびっ娘か。
『うむ、今日はクエストを受けに来た』
「うむ」
朝が早いだけあって、冒険者ギルドの中には他の冒険者も多い。これは急いでクエスト板を取らないとな。
掲示板にかかっているクエスト板を見る。せっかくFランクに上がったんだからEランクのクエストを受けるか。Fからは一個上のランクのクエストも受けられるしね。
そして俺が受けるクエストは、これだ!
Eランククエスト
素材クエスト
ジャイアントリザードの討伐と素材の回収
南西にある水晶の丘に住むジャイアントリザードの討伐と素材の回収
素材の状態は良い物をお願いします。
クエスト保証金:5120円(銀貨1枚)
報酬:40960円(小金貨1枚)
獲得GP:40
うん、Eランクともなると報酬も獲得GPも一気に多くなるな。これなら一気に稼げるぞ。それに水晶の丘って場所も気になるしな。本当はすぐにでもランクアップ試験を受けて世界樹に乗り込むべきなんだろうけどさ、とりあえずは急ぐ用事も無いし、せっかくFランクになったんだから試しに今まで受けられなかったランクのクエストを受けてもみたいからね。
『このクエストを頼む』
俺は悩んでいる他の冒険者をかき分けクエスト板を取り、ちびっ娘に渡す。
「うむ、頑張れ」
はいはい、頑張るよ。
―2―
里を出て、森の中を進んでいく。自分で言うのも何だが、現在の俺の走る速度はかなりのものだ。多分、夜のクロークの敏捷補正効果も大きいのだろう。
俺はちっちゃな2本の足を高速で動かし森の中を駆けていく。気分は忍者にでもなったかのようだ。シュタタッとな。
里から出て森の中を南西に1、2時間ほど駆けると唐突に森が開けた。そこは非常に神秘的な光景が広がっていた。
小高い丘が全て水晶混じりになっており、太陽の光を浴びて輝いていた。とても幻想的で神秘的な光景だ。が、気をつけないと剥き出しの水晶で体を傷つけてしまいそうな危ない場所でもあった。
うーん、ここまで大体、30キロくらいかな。今の時速は15~20キロくらいってとこか。森の中を走ってその早さって……結構凄いんじゃね?
体を傷つけないように気をつけながら水晶の丘を登っていく。すると一際大きな水晶の塊に寝そべるように3メートルはあろうかという巨大な蜥蜴が張り付いていた。……アレか。
近くに他のジャイアントリザードの気配は無いようだった。クエスト分とは別にもう一匹は狩りたいんだけどなぁ。まぁ、複数に囲まれるよりは良いか。
確か、氷に弱いんだったよな。
――[アイスボール]――
俺は6個の氷の塊を浮かべる。さあ、行け!
氷の塊が次々とジャイアントリザードにぶつかっていく。しかし、全く効いた気配が無い。それどころか口を大きく開けて欠伸をしているくらいだった。蜥蜴も欠伸をするのか……。氷に弱いって嘘じゃん、効いている気配が無いじゃん。うーん、俺は氷の魔法が使えるから意外と楽勝で勝てるんじゃないかと軽い気持ちでクエストを受けたんだけど……失敗したか。
仕方ない。いつものように戦うか。まだ結構距離もあるし、まずは弓だな。俺はコンポジットボウに鉄の矢を番える。
――《集中》――
集中力が増した俺の視界には、遠くながらも(遠視の効果もあり)ジャイアントリザードの姿がはっきりと見える。喰らえ。
――《チャージアロー》――
鉄の矢に光が集まる。狙うは……やはり脳天か。
最大限まで溜め、光り輝く矢を放つ。矢を使い捨てることになるが気にしない。今は鉄の矢の消費が気にならない位には儲けているし、油断して苦戦してもしょうが無いからな。最初は全力で、そして馴れてきたら余力を残してくって方向で戦わないと失敗したときが怖い。死んでしまったら終わりの現実だから、初見は全力で確実に行動しないとな。
光り輝く矢がジャイアントリザードの脳天に突き刺さる。更に続けて放った矢も同じように脳天に刺さる。が、貫通まではしない。そして攻撃を受けたジャイアントリザードがこちらを向く。さすがにここまですればこちらの存在にも気付くか。
そしてジャイアントリザードが動き出した。その動きは異常に素早かった。結構な距離があったはずだが、気付けばすぐ目の前まで近寄られていた。
俺はとっさに風槍レッドアイをサイドアーム・ナラカに持たせ構える。
ジャイアントリザードが大きな口を開け噛みついてくる。素早い! が、集中力の増していた俺には確実に見えている行動だった。そのまま素早く右に回避。しかし、それを追うように更に噛みついてくる。危険感知スキルは働かない、それだけ余裕だってことだ。
大口を開け噛みついてくるジャイアントリザード。俺はサイドアーム・ナラカに持たせた風槍レッドアイを上段高くへ持ち上げ、それをそのまま叩き付けた。叩き付けによってぐしゃりと言う音ともに大口が閉まる。
そして、そのまま、
――《スパイラルチャージ》――
手に持った鉄の槍が唸りを上げ螺旋を描き閉じられた口に蓋をするように貫いていく。うん、ちゃんと鉄の槍でも貫けるぞ。
ジャイアントリザードは突き刺さった鉄の槍を嫌がり、両前足を振り回してくる。素早い動きだが、今の俺にはしっかり見えているぜ。俺はその場で右左と回避する。そして視界の右上から赤い線が降りてくる。危険感知スキル!? この攻撃は危険か!
――《払い突き》――
俺はとっさにスキルを発動させる。
ジャイアントリザードは器用に体を捻り、尻尾を斜め右上から叩き付けてきた。それをサイドアーム・ナラカの持った風槍レッドアイが払いのける。そのまま一回転。その動作によって突き刺していた鉄の槍は抜けてしまう……が、気にしない。次の瞬間には風槍レッドアイがジャイアントリザードの脳天を貫いていた。
うん、勝ったな。
結構、楽勝に見えたが危ないところもあったな。ジャイアントリザードが予想よりもずっと機敏だったのがなぁ。もし集中スキルの効果が残っていなかったら、ちょっと危なかったかも。
鉄の槍も壊さずに勝てたし、良かった良かった。
経験値とMSPは、と。経験値は120、MSPは3か。Eランクだし、こんなもんかな。
うん、1対1なら、なんとか普通に勝てそうだ。もう何匹か狩るかな。
4月22日修正
氷の魔法が使えるから意外とと → 氷の魔法が使えるから意外と




