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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
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8-18 方針決定進むだけ

―1―


「うむ。ジジジ、どうやらランに助けられたようだ」

 ソード・アハトさんが手に持っていた卵を降ろす。卵……だよな?

「この腕も助かった。ジジジ、斬られた状態でもいずれ生えてきただろうが、3本だけで生活するのは不便だろう」

 生えてくるのかよ! 3本で不便って、それを言ったら普通の人は2本しか腕がないんですぜ、なんて贅沢な――まぁ、俺は腕が6本あるわけですが。


「しかし、こいつは……」

 大工の棟梁が床を叩いている。氷ぽいのに向こうが見通せないし、固いし、不思議素材だよな。

『中も凄いぞ』

 俺の天啓を受けた大工の棟梁がうきうきとした様子で歩き出す。

「そいつは早くみたいな!」

 それを見たハウ少年が大きなため息を吐いていた。


『では、皆のところに案内する。少し暗いので気をつけて欲しい』

 透き通っているのに、向こうが見通せないからか、光も中に入ってこないんだよなぁ。昼間でも真っ暗です。


 螺旋階段を少し進んだところで大工の棟梁が大きく笑い出した。

「こいつはいい。ランの旦那、こいつは生活するのも苦しそうな最悪な場所だな!」

 その言葉とは裏腹に楽しそうだ。

「最悪すぎて、最高すぎるぜ。どう手を入れようか、今からワクワクしすぎて待ちきれないぜ」

 あ、はい。ま、まぁ、親方がやる気になってくれて助かるよ。


 拠点として活用している謁見の間に入る。

『ユエ、皆を連れてきた』

 俺の天啓に反応し、ユエが魔法のランタンを持って立ち上がる。

「お帰りなさいませ……ら、ラン様、予想していたよりも大所帯で、ですね」

 俺らの数を見てユエは少しひいているようだ。


「ジジジ、ご婦人、ご迷惑をかける」

 ソード・アハトさんが前に出て謝る。それを見た、ユエの瞳が大きく見開かれた。

「ら、ラン様! 蟻人族の方々を、どうやって!」

 ユエの瞳がらんらんと輝いている。

『ユエ、蟻人族を知っているのか?』

「知らない方がどうかしています! 帝国最強の守護者ですよ! 帝都の最後の守り、鉄壁の守護者!」

 ユエが興奮したようにしゃべり出す。ユエって意外とミーハーなんですね。その姿、旦那のファットが見たら、泣くぞ。


「ご婦人過大な評価痛み入る。ジジジ、私自身も帝国の守護者を自負していたが、しかし、剣聖には腕を1本持って行かれる程度でしかなかった。ジジジ、今では、その言葉も重い……うぬぼれていたよ」

 ソード・アハトさんは悔しそうに、そう呟いた。いや、ホント、この人、武人って感じの人だよなぁ。見た目は蟻だけど。


「剣聖! 剣聖様と戦ったのですか!」

 今度はファリンが食いついた。

『ファリンは剣聖を知っているのか?』

「鬼人族で剣聖様を知らない人はいません。憧れていない人はいません!」

 凄い食いつきだ。うちの女子って意外とミーハーばかりだったのか? そういえば、親方も鬼人族だったよな?

 俺が大工の棟梁の方を見ると、俺の視線から逃げるように顔を逸らした。あー、うん。親方もファンなんだ、な。さっきの戦いを遠目からだが、見ているだろうから、少し複雑なのかもしれんなぁ。


「ランの旦那、随分と大人数じゃん」

 ポンちゃんも現れる。あー、ポンちゃんの負担が増えるか。

『ポン、頼む』

 大変かもしれないけど、お願いします! 皆に美味しい食事をお願いします!

「あのー、ラン様、これからは私もいるのですが」

 と、そこで俺に声をかけてきたのは――タクワンだった。あっ! 存在をすっかり忘れていたぜ。

「まさか、私の存在を忘れていたとか言わないですよね? この天才料理人の私を!」

 タクワンの尻尾が拗ねたように垂れている。あ、はい。忘れていました。ちゃんと着いてきてくれていて良かったぜ。


「おお、タクワン! 待っていたぜ、助かるじゃんかよ」

 ポンちゃんが小さなタクワンの肩を抱き、ぽんぽんと叩く。

「うむ。どうやら、ここは私の料理を待っていた人が多そうだ」

 タクワンがにやりと笑みを浮かべる。切り替わりが早いなぁ。ま、まぁ、これでポンちゃんの負担は減るし、それに、これからは人数が増えるわけだからな、うん、良かった、良かった。




―2―


「ラン様、人も揃ってきました。道を作りましょう」

 新しく加わった皆が落ち着いてきた頃を見計らったかのように、ユエが提案してきた。道……ねぇ。

「蟻人族の方々が協力してくれるのです、道の作成、その護衛、と、かなり捗るはずです」

 かなり捗るのか。

「道は二つ必要です」

 二つ? 沢山ではダメなのか?

「以前にも話したと思うのですが、一つ目は流通経路の確保、人と物と金を呼び込むための目玉、それらを含めた道」

 まぁ、人に来て貰って金を落として貰うか、何かを売って金を得るか、そのどちらにしても道は必要か。

「そして海路です。ここから西に行けば海に当たります。そこまでの道と、そこに簡易な港を作っても良いと思います。帝都よりは遠くなってしまいましたが、それでも海路があれば、海上都市との交易や海産物の収穫が見込めます」

 ふむ。まぁ、ファットのこともあるしなぁ。海路は欲しいな。


「優先すべきはり……」

『海路だな!』

 俺の言葉にユエは驚いていた。


「まずは陸路だと思うのですが」

『いや、海路だ。現状、道を作ることから始めるというのならば、それは膨大な時間になるだろう。それに陸路では帝国領を通ることになる』

「しかし、海路でも、その海に行くまでは帝国領を通過しなければ……」

『いや、帝国は、この南の地まで手を伸ばしてなかったのだ。今から伸ばすにしても、何も準備が出来ていない状態からでは当分先の話になるだろう。ならば海に出るまでの道は、当分、安全になる。そして、海路であれば、ファットの高速船で陸路よりも早く動けるはずだ』

 海路を使って迷宮都市や神国、それにナハンなんかと交易できるはずだからな。帝国は――帝都は船を持っていないからな。だから、こそ、今まで帝都で俺たちのノアルジ商会が有利に商売出来たわけだしさ。


「それでは人が集まらないと思うのですが」

『当分は商品の輸出と輸入だけで充分だろう。今、人材が増えても対応が追いつかない』

 無理に人に来て貰う必要はないからな。要は俺たちが暮らせればいいんだよ。


「分かりました。ラン様の考え、粗も多いように思えますが、形になるように煮詰めてみます!」

 ユエの瞳が光り輝いた。いや、あのユエさん、ユエさんも一言多くないですかねぇ。未だに動けない14型とかに毒されてやしませんか?

2016年11月23日修正

現状、道を作りる → 現状、道を作る

ユエの目が光輝いた → ユエの瞳が光り輝いた

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