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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
664/999

8-15 迎えに来たんだぜ

―1―


――《転移》――


 《転移》スキルを使い、旧本社前へと飛ぶ。さて、と。どうしても着地の余波で目立ってしまうけどさ、その後は《隠形》スキルを使って目立たないように行動しよう。


 んでは!


「ラン様……!?」

 俺に声をかけてきたのは――フエだった。俺ってば、いきなり見つかってるじゃんか!

「不味いです」

 いきなり見つかってすいません。

「フロウ帝が、ラン様が前帝を匿っているのではと疑っています。兵士に見つかりでもしたら……それに今は、と! ラン様お隠れください」

 まぁ、ゼンラ少年を匿っているのは間違いないんですけどね。それはフエも知っているはずなのに、黙っててくれているのかな。にしても、急に隠れろって……ん!?


――《隠形》――


 俺はとっさに旧本社前の茂みに身を隠し、気配を消す。


「やれやれ、このような老いぼれまで駆り出すのだから、フロウ帝は人使いが荒い」

 そこに現れたのは武装した兵士を伴った剣聖のじいさんだった。何で、剣聖のじいさんが? フロウと繋がっていたのか? まぁ、闘技場で大ボスをやっていたくらいだから、あり得るか……。


「いえいえ、それだけフロウ帝も剣聖様の力を頼りにしているということでしょう」

 フエ君、何だか、大変そうだなぁ。

「お世辞は要らぬよ……む」

 と、そこで剣聖が腰に下げた剣に手をかけた。ん? 不味いッ!


 そして、剣が抜き放たれ、斬撃が飛ぶ。茂みに植えられていた花々や木々が削り飛ぶ。


「け、剣聖様どうされました!?」

 フエが驚き叫ぶ。

「いや、何者かが潜んでいる気配を感じたのじゃよ。しかし、気のせいだったようじゃ。我も老いたものよ」

 あ、危ねぇ……。剣撃が俺の眼前を通り過ぎていったぞ。もう少しで俺がスライスされるところだったじゃないか。何処が老いた、だよッ! 《隠形》スキルを使わずに、ただ隠れただけだったら、斬られていたかもなぁ。覚えてて良かった、《隠形》スキルッ!




―2―


 しばらく茂みに潜み続け、ほとぼりが冷めるのを待つ。


――《剣の瞳》――


 よし、反応は……大丈夫そうだな。近寄ってきている反応はフエ、かな。

「ラン様……?」

 フエが茂みに近寄り、小さな声で俺へと呼びかける。

『ここにいる』

 俺は茂みに隠れたままフエに限定して天啓を飛ばす。何があるかわからないからな、まだ隠れていた方がいいだろう。


「ラン様、何故、戻ってこられたんですか?」

 フエは疲れ切った声だ。

「ラン様もご存じのようにノアルジー商会の資産は全て新しい商会に譲渡され、それよりも前に切り離すことが出来なかったものは全て所有権が移ってしまっています。今更、何を……」

 あ、そうなんだ。だから、フルールとかは道具を取りに戻ろうとか、俺に頼もうとせずに自分で一から作ろうとしていたのか……。となると、俺が自分の物だと思って持ち出しても窃盗扱いになってしまうのか。はぁ、もっとちゃんと準備をしてからコンパクトを使えば良かったなぁ。


『いや、タクワンを迎えに来たのだ』

 俺の天啓を受けたフエの顔が疲れた様子から少しだけ、ほころんだ。

「それは是非お願いします。フロウ帝に変わってからの帝都では猫人族の彼は働きにくいでしょうから……今、連れてきます」

 物はダメでも人はオッケーなんだぜー。これでタクワンを再雇用出来るな。後は大工の親方か。


 本当はタクワンを回収したら、一度、コンパクトを使ってアイスパレスに戻りたいんだけどな。ただ、そうなると、また《転移》で戻ってくる必要があるわけで……。あんな目立つのをもう一回やるのは、なぁ。


 しばらく待っていると何やら不満げなタクワンがやって来た。

「話が違う! この私の力が必要だと言うから来たのに、酷い仕打ちだ!」

 あー、新しくなった商会では上手く働けなかったようだな。


 俺は歩いてきたフエとタクワンに、茂みから少しだけ体を出して、手を振ってこたえる。やぁ、タクワン、元気かい?

「ラン様! いったい、この商会はどうなっているんですか!」

 あー、すいません。その、タクワンの隣にいるフエって人に乗っ取られました。

『タクワン、迎えに来るのが遅くなってすまない。移転先に案内しよう』

 俺の言葉をきいたタクワンは嬉しそうに涙を流していた。も、もしかして、今の職場でいじめられたりとか、してました?

「良かった。私は、少しだけ、そう少しだけ働く自信がなくなっていたのですよ」

 あ、なんか、本当にごめん。


『ところで、フエ、建築ギルドの面々に会いたいのだが、今は何処に居るのだろうか?』

 俺の天啓にフエが大きなため息を吐いていた。

「それを、こちらに聞きますか……。これだから、ラン様は……」

 いや、俺がどうしたのよ。知ってそうな人に聞くのは当然じゃないか。

「そうですね……。今はこちら側の南区に集まっているようです。フロウ帝が貴族中心の社会を考えられているようで、彼らは元の立場に戻りました」

 あの寂れてしまった場所? ま、まぁ、寂れた原因を作ったのは俺の商会だったワケなんだけどさ。

 そ、そうか、そんなことになっているのか。


 まぁ、話を聞きに行ってみるか。

『フエ、情報ありがとう。タクワン、すまないが、もう少し付き合って欲しい。まだ会うべき人たちがいるのだ』

 そうなのだ。

『なんなら、タクワン。それまで、ここで旅立ちの準備をするか?』

 俺の天啓にタクワンが慌てて首を振っていた。

「いえ、必要無いです。このタクワンが持っていくのは料理の才能と腕だけですから」

 タクワンは得意気な顔で、そんなことを言っていた。何だろう、格好いいことを言ったぜって浸っている感じがぷんぷんするぜー。


 ま、まぁ、それじゃあ、タクワンと一緒に南区に行きますか! 兵士さんには見つからないように気をつけながらね!


 ……て、もしかして、タクワンが一緒に居ることで隠れて進む難易度が跳ね上がった!?

2020年12月13日修正

目だ立たないように → 目立たないように

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