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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
662/999

8-13 人、物、金が必要

―1―


 さてと、色々と謎は残ったが、これでスカイの件は片付いたのかな。

「スカイ、用事は済んだな? 皆が集まっている場所に戻るぞ」

 馬鹿みたいな顔をしたスカイが、何度も頷き、そして、ゆっくりと俺の後をついてくる。さあ、帰るぞ。


「あ、灯り……」

 そして、灯りがないことに気付いた犬頭はパタパタと先程の部屋に戻り、ペンライトのような魔法の灯りを手に持ち、またパタパタと駆けてきた。

 俺は《暗視》スキルがあるけどさ、スカイは持ってないだろうからな。階段で転けられても困るもんなぁ。ホント、灯りがないのは不便だぜ。


 謁見の間の前まで戻ると、その部屋の前にミカンが立っていた。

「ミカンは見張りか?」

 俺が聞くとミカンは一瞬不思議そうな顔して首を傾げ、そのまま微妙な角度で頷いていた。

 ミカンはまだ眼帯をしたまま、か。早くエルポーションを使ってみればいいのにな。効果を見せてくれ。


 と、そうだ。せっかく《変身》している状態なんだ。ミカンに渡して変異した刀の情報も読み取っておくか。


【猫之上蜜柑式】

【氷嵐の主に仕える蜜柑専用の刀。万能属性】


 万能属性って何だよ、万能ってッ! また、何やら新しい属性が出てきたよ! 属性は火水木金土風闇光の八属性だけじゃないのかよッ!

 あー、これ、インゴットに変えたら……ダメかな? 万能属性をもったインゴットになるんじゃないか? 凄い武器が作れそうじゃないか! だって、万能だよ、万能! 上位に全知全能属性とかあるのかな!


「むっ」

 俺がじーっと見ていたからか、ミカンが腰にさしていた刀の位置を俺から隠すように動かす。いやいや、さすがに俺でも人にあげた物を勝手にさ、インゴットに作り替えるようなことはしないからな。


 にしても、ここで新事実発覚だな。


 ミカンは本当に蜜柑だったッ! 未完でも未刊でもなく、果実の蜜柑なんだな。ということは、この世界の何処かには蜜柑の木が生えているのか? 名前の元になるくらいだから、やはりナハン大森林かなぁ。是非、手に入れたいな。


 猫之上蜜柑式か。ミカンは刀の名前を猫之上葉月蜜柑式って言っていたのに、上位鑑定では葉月が消えたな。どこに消えたのやら。

 そういえば葉月って確か八月の異称だったか。また、ここでも、8か。この世界って8が好きだよなぁ。

 ふと、思い出したけどさ、会社の後輩が八は末広がりだから、縁起がいいんです、みたいなことを言っていたな。この世界でもさ、そんな感じで有り難がられているのかな。

 はぁ……、会社の後輩か。俺の前世? の話だもんなぁ。もう、昔過ぎて記憶が朧気だよ。何で、こんなことになっているんだろうなぁ。




―2―


 謁見の間に入るとユエが声をかけてきた。

「ラン様……あれ? ノアルジーさま?」

 もう、どっちでもいいよ!


 で、何の用かね。

「スカイも戻ってきたようなので、今後のことを話したいのですが、よろしいでしょうか?」

 よろしいです。


 魔法のカンテラによって作られた明かりの中、皆で円陣を組んで座る。

「今後のことですが、しばらく、ここで隠れ住むという方向で行こうと思います」

 ユエが立ち上がり、話し始める。別に犯罪を犯したわけでもないんだから、好きに動いてもいいと思うんだけどな。

「それは、ここを新しい商会の拠点として使えるようにするための下準備だと思ってください」

 なるほど、そういう考えもあるのか。


「そして、充実させないとダメなのが、人、物、金です。現状、そのどれもが失われている状態です」

 ユエが肉球のついた猫のような手の3本の指を立てる。その殆どをさ、帝都に置いてきたような状態だもんなぁ。

「でも、まずは灯りですよね……」

 こうも、暗いとな。


「帝都が落ち着いたら西側の建築ギルドの棟梁を呼びたいです」

 ファリンが呟く。あー、この城を人が住めるように、住みやすいように手を入れたいもんな。

「それなら、何も分からないまま残ったタクワンも呼びたいじゃんかよ」

 ポンちゃんもファリンに釣られたように呟く。へ? タクワン? あいつ、置いてけぼりかよッ! 俺が苦労してナリンからゲットした人材なのに……。


「後は道が必要です」

 ユエが皆を見回す。道?


「人と物と金の流れを作るためには、道が必要です。それに付随して人がここに来る理由が必要だと思います」


 人を呼び寄せるための目玉か。例えば迷宮。ここだと『世界の壁』が一番、近いのかな? その財宝目当てで人が来て、ここにお金を落としてくれる――いやいや、無理があるな。


 温泉とか湧き出ないかなぁ。療養として、大評判みたいな。


 まぁ、何にせよ、ここまで来て貰うための道が必要か。今までと同じように食材や装飾品などの鍛冶商品をやりとりするにしても、道がなければ無理だもんな。


 そう考えると、この立地は失敗だったかもしれんな。帝都よりも更に南だもんな。内陸部だから、船から直接やり取りが出来ず、どうしても地上を動く必要があるしさ、ホーシアから更に遠くなったのもマイナスだよなぁ。

 迷宮都市も神国も、さらに遠くなってしまってるし……うーむ。


 魔族が封じられた永久凍土の方が近いくらいだ。


 いっそ、魔族と商売するか?


 ははは、さすがに、それはないな。


 うん、ない。

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