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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
661/999

8-12 グランドマスター

―1―


「俺がランだ。いや、この姿の時はノアルジで頼む」

 スカイはぼけーっとした間抜けな顔のまま、こくこくと何度も頷いていた。まぁ、死にかけて、気が付いたら、って感じでさ、気が動転しているのかもな。


「スカイ、もう一度聞くぞ、その光る板は何だ?」

 俺の言葉を聞いたスカイが手元の光る板と俺を何度も見比べている。

「あれ? 俺、生きてる? あー、やっぱり死ぬって脅しだったのかぁ、びっくりした」

 いや、死にかけていたからな、むしろ死んでいたからな。ん? 脅し? あの黒い手って闇属性の魔法だよな? 何か発動するキーワードか、行動があるのか?


「スカイ、お前、魔石を……」

 いや、この世界の住人って自分の体内に魔石があることは知らないんだったな。下手に教えて話をややこしくする必要はないか。それでショック死でもされたらたまったもんじゃないからな。

「スカイ、お前、死にかけていたぞ」

 俺の言葉にスカイが情けない顔で悲鳴を上げていた。いや、だから、くそっ、話が進まないッ!

「もう大丈夫だから、落ち着いて知っていることを全て教えろ。まずは、その光る板からだ」

 犬頭のスカイが手に持っている光る板をじっと見つめる。


「これは、冒険者ギルドのギルドマスターだけが持つことを許される使い魔っす」

 使い魔? 使い魔って名前とかなりかけ離れたデザインじゃないか。

「それを使って、何やら、誰かとやり取りをしていたようだが?」

 スカイが首を何度も縦に振る。

「そうなんすよー。使い魔ちゃんは優秀なんで、グランドマスターや各ギルドマスターとやり取りが出来るんすよー」

 ますます電子メールみたいだな。

「使い方は?」

「え? いやいや、教えたらダメですからー。これ、バレたら契約の闇魔法が発動する代物なんで、ダメすよー、ダメなんです」

 この犬頭はこの期に及んで、まだ、そんなことを……。ん? 契約の闇魔法?

「まさか、その光る板の存在を知られると、それを使っていたギルドマスターと知った人間を殺すような闇魔法が発動するのか?」

 犬頭のスカイが馬鹿みたいに何度も首を縦に振っていた。はぁ、なるほど。そりゃあ、誰も居ない場所に行こうとするわけだ。て、ことは。まさか、スカイが死にかけたのは俺の所為か? あー、うん、ちょっと、申し訳ないことをしたかな。ま、ま、まぁ、でもさ、生き返らせてあげたんだから、プラスマイナスゼロだよな? な?


「とりあえず、俺とスカイの間では発動しないはずだ。ほら、今も大丈夫だろう? だから、使い方を教えてくれ」

「あー、ホントっすねー。なら、いいか」

 軽いなぁ。

「情報を送りたい先を選んで、話しかけると、それが文章で表示されるんでー、それで間違いなければ『送る』を押すと……」

 押すと……?

「目に見えない使い魔が空に旅立って、一瞬で、その相手に文章を伝えてくれるんすよー。凄いでしょ? これこそ、ギルドマスターの特権ですよー」

 脳天気な犬頭は得意気だ。お前、それで、さっき、死にかけたんだけどな。


 ……つまり、だ。スカイは使い魔とか言っているが、間違いなく電子メールだよなぁ。空に衛星でも浮かんでいて電波中継でもしているんだろうか。


 これ、複製出来ないかなぁ。


 と、せっかく、この赤い瞳が使える状態なんだから、鑑定もしておこう。


【通信端末複製】

【月経由の通信端末の複製品。再現度が悪いため、機能が一部劣化している】


 うひょー、本当に通信機かよ。しかも複製品だと。これ、俺らでも何とか複製出来ないかな。あれば、凄い便利だよな。後は――月経由か。空にある二つの月が何か関係しているんだろうか? うーむ、これ、機械ぽいし、14型が何とかしてくれないかなぁ。ちょっと、後で見せるだけ見せてみよう。


 さて、と。


「それで、スカイ。先程、その通信端末を一度、投げ捨てたようだが、何があったんだ?」

 俺の言葉にスカイが情けない顔で地団駄を踏んだ。

「俺の西側の冒険者ギルドをシュエに譲るってグランドマスターが」

 あー、ようはスカイが首ってことだよな。まぁ、スカイよりも部下の方が有能そうだったもんなぁ。


「ギルドマスターしか持つことが出来ない通信端末は、今、スカイが持っているんだろう? どうするんだ?」

 この状況だとさ、引き継ぎや引き渡しは出来ないよな。


「それなら問題ないんですよー。俺ん時と同じで、グランドマスターの使いが来て、目隠しさせれるんす。それで気付いたらグランドマスターの前にいて、色々と誓わせられて、契約の闇魔法を結びつけた、これを受け取って、また目隠しして、気付いたら元の場所、みたいな感じなんで、もう後はシュエがギルドマスターで、俺が、俺の立場がぁ」

 スカイがまくし立てるように、吐き捨てるように、一気に喋る。どうどう、落ち着いて喋れ。考えずに一気に喋るんじゃない。


 にしても、一瞬でグランドマスターの場所までって、まるで、俺が手に入れた、このコンパクトみたいだな。もしかして、グランドマスター……魔族だったりして。いや、さすがにそれはないか。


 しかしまぁ、知れば知るほど、冒険者ギルドって謎の組織だな。国を跨いで運営している時点でおかしいもんな。しかも、こんな通信端末を使って世界中とやり取りをしているような組織だろ? 俺が王様なら怖くて足下に置きたくないよ。ホント、謎だ。


 ……。


 いや、待てよ。


「スカイ、その情報端末はまだ使えるんだよな?」

「使い魔は飛んでくれるすねー」

 なら、ちょっと試してみたいな。


「スカイ、今から言う文章を送ってみてくれ――ノアルジが新しく国を興すようだ。そのアイスパレスに冒険者ギルドを置きたい。協力求む――だ」

 国を興すってのは、はったりだが、これでどういう反応を起こすか、だな。

「りょ、了解。文章を作るんで静かにして欲しいすよー」

 あー、話しかけて文章を作るんだったな。


「スカイです。ノアルジーが国を作る。そのアイスパレスに冒険者ギルドを作りたいです。協力求む、っと」

 そして、スカイが光る板に書かれた文字を確認する。

「よし、文書、間違いなし! 使い魔ちゃん、お願いします!」

 スカイが通信端末を空に掲げていた。それ、必要なのか?


「にしても、スカイは文字が読めるんだな」

 それを聞いたスカイが驚いたように俺の方へと振り返る。

「いやいや、俺、ギルドマスターだから、読み書きくらい最低限出来るから、出来るから!」

 うさんくさいなぁ。


 しばらく待っていると通信端末に返信が来た。


【グランドマスター:通達する。スカイに任せる。一月後を予定として道具類を送る。ギルドマスターとして準備せよ】


 ふむ。ここに冒険者ギルドを置くのを許可するってコトか。にしても、道具類を送るって――ここの場所がバレているのか?


 その通信端末が居場所を知らせているのかもしれないな。知られて困る物でもないが、一応気に留めておくか。

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