7-70 二つの塔魔法側中層部
―1―
異能言語理解スキルを使い、14型が書き起こした文字を読み取る。
南東が、『4人目の旅人は東に向かい燃える火山を見つけた』
北東が、『最初の旅人は北に向かい希望の光を失い旅を諦めた』
北西が、『三人目の旅人は西に向かい大きな木を見つけた』
南西が、『二人目の旅人は南に向かい激しい風に吹かれ最初の町に戻った』
……。
意味が分からない。これを読んだら、謎が解けて先に進めるんじゃないかと簡単に考えていたけどさ、意味が分かりません。
一人目、二人目、三人目、四人目。
東西南北。
燃える火山、希望の光、大きな木、激しい風。
見つけた、諦めた、見つけた、戻った。
うーむ、それっぽい単語だけを取り出してみたけど、それが何を意味しているのか、分からないな。いやまぁ、こうじゃないかなー、こうかなーって予想は出来るけどさ、これで間違いないってピタってはまる感じじゃないんだよなぁ。
とりあえず読み取った内容を14型に伝えてみる。
『どうだ、14型、何か分かるだろうか?』
俺の天啓を受けた14型が首を横に振る。
「マスター、申し訳ありません。私は戦闘メイドとしては一流になるよう作られていますが、それ以外のことには向いていないのです」
はいはい、分からないってコトだな。まぁ、14型さんは機械だもんな、柔軟な発想とか謎解きみたいなのは苦手かもしれないな。
うーむ、インスピレーションが、むむむ。
そうだ、今までにこの迷宮で手に入れた物の中にヒントがあるんじゃないか?
【エルマナポーションM】
【魔法のポーチM(4)】
【光のローブ】
【白の腕輪】
だけだよな?
この中で怪しいのは光のローブと白の腕輪か? ポーションやポーチが関係するとは思えないもんなぁ。
うーむ、うーむ。
「マスター、休憩にするのです」
俺が考え込んでいると、14型が背負っていた二つのリュックを下ろし、中からティーセットを取り出した。おいおい、何でそんなものを魔法のリュックの中に入れているんだよ!
……って、アレ?
そういえば、このリュック、この迷宮で手に入れたんだよな。俺、鑑定したか? いや、してないよな?
【魔法のリュック(0)】
【亜空間にアイテムを収納できる魔法のリュック。収納できる種類は4】
……。
あー、うん。
収納できる種類は4になっているのに表示は0。つまり、中には、すでに何かが入っているってコトだよな。
これかー、これだよなー。
「マスター、どうぞ」
14型がお茶のような飲み物を俺の口の中に注ぎ込む。あちっ、あつい、あついってのッ!
『14型、やめろ。熱い』
「熱い……ですか?」
こいつ機械だから、熱さが分からないのか?
「最初は熱いお茶、次にぬるいお茶、最後に冷たいお茶を飲むと良いと聞いた覚えがあるのです」
だ、誰だよ、14型にそんなことを教え込んだヤツは。て、そうじゃない、そうじゃない。14型のせいで、またリュックのことを忘れそうになったぞ。
『14型、新しいリュックの中身を見たいのだが』
天啓を飛ばすと14型がリュックを俺に渡してきた。
「登録をお願いします」
あー、そういえば魔法の袋って所有者登録が必要なんだったな。まぁ、いいや。このままサイドアームで中身を取りだそう。
新しい魔法のリュック(0)の中には4本の短剣が入っていた。
あー、うん。これ、どう考えても台座に刺す感じの短剣だよな。鑑定、鑑定っと。
【ボレアスダガー】
【華美な装飾の施された短剣】
【ノトスダガー】
【華美な装飾の施された短剣】
【エウロスダガー】
【華美な装飾の施された短剣】
【ゼピュロスダガー】
【華美な装飾の施された短剣】
わー、凄いなー。芸術的価値があって高く売れそうだー。
……。
何だか、謎が解けた気がするんですけどー。
何だか、閃いちゃったんですけどー。
いやいや、それは置いといて、だな。ちょっと気になるのは短剣の名前なんだよな。これって俺が居た世界の神話に出てくる神様の名前と同じなんだよな。どういうことだ? 俺より前に俺と同じ世界の人間が、この世界に来て、この迷宮を作ったのか? そうなると、この迷宮を作ったのは迷宮王だろうから、迷宮王が俺と同じ異世界の住人ってコトか? でも迷宮王って、もう骨になっているからなぁ。真相を聞くことも出来やしない。
……。
ま、深く考えず、単純に異能言語理解スキルが、勝手に俺が分かりやすいように、俺の知識を元にして変換したって考えた方がいいかもな。
そう簡単に俺と同じ境遇の人間がいてたまるかよ。
いてたまるかよ……。
何でいないんだよ……。
あー、ダメだ、ダメだ。考えるとダメだ。
まずは迷宮攻略だ。
この八大迷宮を全て攻略すれば答えが分かるらしいんだから、まずは何はともあれ、頑張って全ての迷宮を攻略だ。
まずは、それからだよなぁ。
『14型、まずは北東の扉だ』
俺の天啓を受け、14型がスカートの端を掴み、優雅なお辞儀をする。そして、ティーセットを片付け始めた。
あー、お茶休憩をしようとしていた感じだったもんな。ま、まぁ、でもさ、それよりも早く謎を解く方が大事じゃないか。
さてと、扉を抜けると俺は何も出来なくなるからな。
『14型、台座のある部屋まで来たら俺の言うとおりに行動して欲しい。それが終わったら、またこの部屋に戻ってくるのだ』
「了解です」
さあ、14型さんの働きにかかってますよー。