7-61 二つの塔魔法側入り口
―1―
――[アクアポンド]――
――[アクアポンド]――
――[アクアポンド]――
三連アクアポンドだぜー。って、朝の日課も久しぶりだなぁ。にしてもさ、俺が本社に戻ってくることが少なくなったからか、水を溜める場所が大きくなりすぎてやしませんかね。もうね、池じゃん。貯水槽じゃん。このままだと地下世界まで水が溢れて大変なことになっちゃうよ! でも、それでいいのだ。つまり、平常心を保てと俺に師匠がいたら言うのだろう、年上の師匠がいたらの話だがな。
……。
さ、よくわからないお遊びはこれくらいにして、と。よし、今日は砂漠に行くか。
一緒に行くのは羽猫くらいか。今回は暇そうな人がいないしなぁ。久しぶりの一人旅だな。俺がそんなことを考えていると手に持った真紅妃と履いている黄金妃が震えた。いや、あのね、君らは装備品じゃん。いや、でも、旅の仲間……なのか? うーん、ギリギリアウトな感じがするんだけどなぁ。
まぁ、いい。
とりあえずオアシスまで飛ぶか。
俺は、そのまま本社から外に出る。さあて、行きますか。
――《転移》――
《転移》スキルを使い砂漠へと降り立つ。相変わらず、暑いなぁ。《変身》していると暑さや寒さを感じないからさ、こうも暑いと、その為だけに《変身》しようかな、って思うよなぁ。まぁ、我慢するけどさ。
とりあえず、だ。八大迷宮の一つ『二つの塔』は、この砂漠の何処かにあるんだよな? そして、そこに行き着くためには『妖精の鐘』が必要、と。
ここで、使ってみたら分かるかな。
俺は魔法のリュックから妖精の鐘を取り出す。そして、そのまま振ってみた。
しかし、何も起こらない。うん? 音すら出ないぞ。使い方が悪いのか?
とりあえず振りながら歩いて見るか。
妖精の鐘を振りながら、オアシスから離れるように南方向へと適当に歩いて行く。えーっと、これはアレだ。妖精の鐘を手に持って、鳴らしながらゆっくり歩いていると、何だか、俺が、ほうちょうを持って恨みを晴らそうとしている爬虫類みたいな気分になるな。
にしても、暑い。ホント、暑い。砂漠を歩くのもさ、砂に足がとられ……はしないな――黄金妃の効果か、砂に足が取られることはないけどさ、短い足でデコボコな砂地を歩いているから、きついきつい。
やはり、芋虫スタイルになって、ハイスピードの魔法で駆け抜けるべきか。でも、そうすると妖精の鐘を鳴らし続けることは出来ないしなぁ。むむむ。
……。
こう『妖精の鐘』が手に入ったら、全て解決、くらいにさ、簡単に考えていたけどさ、ちょっと甘かったみたいだな。一度、オアシスに戻って、何か他に情報がないか聞いてみるか。よし、羽猫、戻るぞ。
俺が北側へと向き直った時だった。手に持っていた妖精の鐘に小さな音色が生まれた。アレ? 今、鳴ったよな? 気のせいじゃないよな?
試しに何度か振ってみるが、音は生まれない。
方向か?
俺は、その場でくるくるとまわりながら鐘を鳴らし続ける。すると北東を向いた時だけ、微かに音が鳴っているようだった。これは来たかもしれん。
―2―
俺は音の鳴る方へと砂漠を進む。魔獣を蹴散らしながら、ゆっくりと歩いて行く。途中、休憩として、ナリンのチェックを消し、その場にチェックを入れて本社へと戻る。
本社でポンちゃんの新料理をもしゃもしゃし、また先程の場所へと戻る。
すると妖精の鐘が鳴らなくなっていた。いや、正確には先程とは違う方向で音が鳴るようになっていた。どういうことだ? 『二つの塔』は移動するのか?
それから、極力砂漠にいるようにして、凍ってしまう夜だけ本社に戻るようにする。
そうして、砂漠を歩き続けること3日目。砂漠に変化が現れた。
砂地が大きく、それこそ巨大な蟻地獄のように凹んでいるのだ。妖精の鐘は、その音は――その渦の中心を指し示している。渦に入れってコトか?
足を踏み入れる。すると流砂にでもなっているかのように、俺の小さな足が絡み取られ、その中央へと運ばれていく。いや、体ごと転がっていく。流砂のように? いや、これ、流砂だ!
そして、数時間転がり続けた先に大きな二本の柱が見えてきた。うん、これ、柱か? 柱は、流砂へと、それぞれが交差するよう斜めに突き刺さっている。
もしかして、これが『二つの塔』か。俺はてっきり上に上がる塔かと思っていたんだが、まさか、降りる方とは……。
――《魔法糸》――
《魔法糸》を手前側の塔へと飛ばし、流砂から脱出する。そのまま開いていた窓のような入り口へと滑り込む。俺が流砂に絡め取られていた間、のんきに空を飛んで追いかけてきていた羽猫も後を追うように入ってきた。たく、お前は、のんきなもんだぜ。
これが『二つの塔』か。やっとか、やっとだな。3日も砂漠を歩き続けるのは、本当に、本当にキツかったんだぞ。暑くて、暑くて、本当にキツかった。まぁ、でも、やっと辿り着いたんだ。
到着なんだぜー。
さあ、攻略開始だ。