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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
627/999

7-59 ナリン国を出発

―1―


「ラン殿、申し訳ない」

 アルマが鎧に包まれた頭を下げる。まぁ、これはなぁ。


『盗んだのは、魔族だろう』

 俺の天啓にアルマが、ハッとしたように顔を上げる。

「ラン殿は、これが盗まれたと……そうお考えか」

 いや、だってさ、魔族の襲撃といい、タイミングが良すぎないか。

「なるほど、そういうことだったのか」

 アルマは一人で何やら納得している。


『どうするのだ?』

 俺の天啓にアルマは首を横に振った。

「出来れば討伐隊を組みたいですが、我が国には、そのような余力はありません。帰る途中の商人たちに頼み、情報を手に入れて貰うことしか出来ないでしょう」

 そうか。まぁ、ナリン国って帝国の属国になるような小国だもんな。そんな感じなんだなぁ。


『わかった。ノアルジ商会でも情報を集めてみよう』

 俺の天啓にアルマが顔をほころばせる。

「それは頼もしい!」

 まぁ、俺もクラスモノリスは欲しいからな。本社に戻ったら情報収集を頼んでおこう。


 頷き合った俺とアルマは、そのまま部屋を後にする。


 そして、王宮のエントランスに戻った所で、集まっていたファリン達と出会う。その中には猫人族のタクワンの姿も見える。

「ランさま、拳士のクラスはどうでした?」

 こちらの姿を見つけたファリンが話しかけてくる。さて、どうしようか。まぁ、普通に考えてファリンには伝えておいた方がいいよな。


『拳士の石碑はなくなっていた。時期的に考えて、魔族に盗まれたのでは、と思う。ファリン、帰る旅の途中で何か情報が無いか探っておいてくれ』

 俺はファリンに限定して天啓を飛ばす。俺の天啓を受けたファリンは驚き、そして周囲を確認し、ゆっくりと頷いた。


『しかし、一番の優先は本社に戻ってくることだからな。それを忘れないように』

 俺の天啓を受け、ファリンはいっそう力強く頷く。そうそう。魔族と関わってファリンが危険な目にあってもダメだしな。


 俺とファリンが、そんなやり取りをしていると、タクワンが俺の前へと進み出てきた。

「ランさま。このたびは、この私をノアルジー商会の一員として加えていただきありがとうございます。このタクワンが加わったからには、ノアルジー商会の料理が一段階上の物になることをお約束しますよ」

 ペルシャ猫のようなタクワンが、胸を張り、そんなことを言っていた。お、おう。頼むぜ。


 さて、と。


『ファリン、もう出発するのか?』

 ファリンは頷く。

「はい。戻ると決まっているのならば、早い段階で動きたいですから」

 ふむ。


 そして、ミカンが一歩、前に出た。

「ならば、その護衛、私が行おう。主殿、よろしいだろうか?」

 まぁ、人員的にそうなるか。

『ああ。ミカン、頼んだ』

 俺の天啓を受け、ミカンが刀の鍔をならし応える。あ、ちゃんと鞘に収まっているじゃないか。フルールが作ったのかな。


「フルールはぴょーんと飛んで戻りますわぁ」

 あ、そう。

「にゃ」

 羽猫も俺の側に寄り、手を挙げる。

「私はいつでもマスターと共に」

 はいはい、14型さんはそうですよね。


『それで、ファリン達は歩いて戻るのか?』

「いえ、ハルマさんに馬車を頼みました。そろそろ持ってこられるはずです」

 あ、そうなんだ。馬車を用意してくれるなんてナリン国も粋だねぇ。


「持ってー、来ましたーよ」

 話をすれば、なんとやら、ハルマが一頭の角の生えた馬がひく馬車と共にやってくる。あれが馬車? って、ことは角が生えたのが馬ってこと? いや、ユニコーンじゃないの?


『あれはユニコーンか?』

 俺の天啓に皆が首を傾げる。

「ランさまは馬を見るのは初めてですか?」

 え? アレ、馬なんだ。

『ああ。竜馬車はよく見るんだがな』

 俺の天啓にファリンが頷いた。

「以前は帝国でも馬車が主流だったんです。ただ、竜の方が荒れ地に強く魔獣避けになると、そういうこともあって竜馬車の方が主流になったんです」

 なるほど、そういうことだったんだな。


 そして、ファリンがハルマに数枚の金貨を握らしていた。うん? タダじゃないのかよ! うーむ。


「では、ランさま、こちらを」

 ファリンが落札した品々を渡してくる。ああ、気を利かせて落札してくれたのはいいが、微妙な物たちだな。


 とりあえず水垢離の陣羽織はミカンに渡す。

「主殿……」

『これはミカンの物だ。好きに使うといい』

 何やらミカンは陣羽織を抱きしめて感動したような顔でこちらを見ている。えーっと、落札したのはファリンだからな。


『それとこれはファリンに。道中で傷を負ったらすぐに使うように』

 とりあえず癒やしの魔石はファリンに渡しておいた。回復役がいないから、これは有った方がいいだろう。

「ランさま、ありがとうございます」


「フルールも待っているのですわぁ」

 あー、精霊銀の塊渡せって顔をしているな。

『ふむ。その辺は本社に帰ってからだ』

 まぁ、インゴットにしてから渡したいしな。だから、渡すのは《変身》スキルが使えるようになってからなのだよ。

 14型のパーツも戻ってからだな。今、渡して何か大変なことが起こったら――大変だからな!


 万能調味料は持って帰るか。ポンちゃんに良いお土産が出来たな。


「ランさま、それでは、また後ほど」

 ファリン、ミカン、タクワンの三人が出発する。


 さあて、それでは俺たちも帰りますか。


 フルールとパーティを組み、14型、羽猫と共に王宮の外に出る。そして、半壊した王宮へと振り返る。いやぁ、ナリン国でも色々あったなぁ。レッドカノン、アレで本当に終わりってことはないんだろうな。ま、今回は因縁が深いミカンに譲ったけどさ、もし、次があったら、俺が……。ま、次があったらだけどさ。


 さて、と。


――《転移》――

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