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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
626/999

7-58 やり残したこと

―1―


 そして、ファリンが最後に持ってきたのが『妖精の鐘』だった。これよ、これ。エリクサーが出品されなかったのは残念だったけどさ、これが手に入っただけでも競売に来た甲斐があったってもんだぜー。

 でもさ、確か、妖精の鐘『3』ってなっていたんだよな……。まさか、8個集めろとか言わないよな? 凄く不安だなぁ。まぁ、落ち着いたら現地に行ってみて、確かめてみようかな。


 さて、と。これでナリン国でやることは終了かな。


 じゃ、本社に戻りますか!


『では、これで戻ろうかと思うのだが、何か問題はないだろうか?』

 やり残したこととかないよな?


「ランさま……」

 と、そこでファリンが口を開いた。

「戻られるのは、あの、空を飛んで、でしょうか?」

『ああ』

 もちろん、《転移》スキルでぴょーんっと一瞬で戻るつもりだよ。


「申し訳ありません。私は陸路で戻っても良いでしょうか?」

 へ? 何? もしかして《転移》が苦手とか、そういう感じなのか?


「ナリン国王から譲り受けたグァグの雄と雌、それにルフの卵はランさまの空を飛ぶ力で運ぶには――衝撃が強すぎて、難しいと思います」

 あー、そういえば、そんな約束をしていたな。って、ルフは卵なんだ。卵から育てるって……、空を飛んで、人を運搬出来るようになるまで、どれだけかかることやら。それまでの育成方法とかも考えないとダメだしさ、むむむ。ま、まぁ、抜け目ないファリンのことだから、その辺は大丈夫だと思うけどさ。


 ……うん?


 そういえば、それら以外にも何か約束していたような……。


 あ!


 そうだ、拳士のクラスモノリス! 拳士の石碑を使わせて貰う約束をしていたじゃん! うっかり忘れる所だった。


 これはアルマに言わないとダメだな。いや、危ない、危ない。


『少し用事を思い出したのだが、アルマ殿が居られる場所を知っているか?』

 俺が天啓を飛ばすと、皆が、あーっという感じで残念な表情になり、天を仰いでいた。唯一、表情の変わらない14型が口を開く。

「あの者なら、外でマスターが出てくるのを、今か今かと待ての出来ない犬のように待ち構えていたと思うのです」

 な、なるほど……。


 14型の言葉を聞き、俺がサイドアーム・ナラカを使って個室の扉を開ける。そして外に出ると、偶然、通りかかったように装ったアルマが声をかけてきた。

「これはラン殿。気が付かれたのですね」

 待ち構えていた人の言葉じゃないよね。


「この国を発つであろうラン殿に、もう一度お礼が言いたかったのだ。偶然、そう偶然、会えて良かった」

 しらじらしいなぁ。


『いや、礼は要らぬ。それよりも、だ。ナリン国王と拳士の石碑を使わせて貰う約束をしていたのだが、今、使わせて貰っても良いだろうか?』

 俺の天啓を受け、アルマが破顔する。

「もちろんだ! ラン殿なら良い拳士となるだろう」

 まぁ、実際、使うかは分からないんだけどな。それよりもクラスを持って無さそうなファリンに習得させたいなぁ。力持ちな鬼人族なら拳士と相性が良さそうだしね。




―2―


「では、ラン殿、こちらだ」

 アルマの案内で半壊した王宮を歩いて行く。途中、帰り支度をしているいくつかの商会が見えた。そうか、競売は終わったんだもんな。


「彼らはアダンの町に帰るのだろう。悔しいことだが、この首都よりもアダンの町の方が商人の町として発展しているのだ」

 そうか。そういえばカエルの王様も、その嫌がらせで道をぐちゃぐちゃにしているとか、無茶苦茶なことを言っていたもんな。


「さあ、ラン殿、こちらだ」

 王宮の途中、中庭の中へと入り、そこを少し回り込むと、下へと降りる階段が見えてきた。へー、地下にあるのか。


 下へと降りる階段へと足を踏み入れたところでアルマが壁を叩いた。む、突然、何をするんだ?


 すると階段に灯りが灯った。まるで誘導灯とでもいわんばかりの静かな灯りが一定間隔で灯っていく。ふむ。迷宮で良くある謎の装置だな。これで暗い中を降りなくても済むか。まぁ、俺は《暗視》スキルがあるからさ、なくても大丈夫だったんだけどな! ……くそ、せっかく《暗視》スキルを取ったのにさ、習得してからは必要な時ってのが来ないんですけどー。無い時はさ、灯りを忘れたー、暗闇でも見えるようなスキルでもあればー、って散々思ってたのにさ。何、この微妙な嫌がらせ。


 そして、階段を降りた先には厳重に封じられた金属の扉があった。アルマが金属の扉に何かの金具を差し込み、がちゃりと回す。すると金属の扉が重そうな音を立てながら開き始めた。おー、本当に厳重だなぁ。


 そして、開かれた先の小さな室内には……何も無かった。


 へ?


 これから、何かの装置が起動して出てくるとか、そんな感じなのか?


『アルマ殿、ここが拳士の石碑がある部屋なのか? 何処にあるのだろうか?』

 俺の天啓を受け取ったであろう、アルマからは返事がなかった。


 アルマは室内を見て、固まっている。


 ま、ま、まさか。


『アルマ殿、まさか』


 アルマが、よろよろとよろけるように後ろへと下がる。

「そんな、そんなはずはない! 鍵は私が持っているのに……」


 まさか、魔族か? やつらがやって来ていた理由ってこれか? そういえばレッドカノンがフウキョウの里を襲ったのも、目的は侍のクラスモノリスだったよな? 迷宮都市、砂漠のオアシスでは治癒術士のクラスモノリスが――これは、偶然、じゃないよな。


 どうやったかは分からないが、上手く持ち逃げされたってワケかよ!

2020年12月13日誤字修正

それら意外にも何か → それら以外にも何か

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