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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
2  世界樹攻略
62/999

2-54 赤槍

-1-


「来たな、完成してるぜ」

 俺は目の前に置かれた赤い槍を見る。


 その槍は騎士が持つような馬上槍の形をしていた。長く鋭い円錐状の本体に、その身から削り出したかのような無骨な握りが付いており、握り部分と円錐を繋ぐような一つの刃が作られていた。

『ランスか』

 ゲームなどだとランスに分類される感じだな。今まで使っていた鉄の槍がスピアか。

「今までお前さんが使っていた鉄の槍と違い、こいつは突く、打ち払う、叩き付けることが出来るぜ。更に握り部分の上に付いている刃の方で斬ることも出来るから、間合いに入られたときは上手く使うんだな」

 そして鉄のように黒かった牙は赤く染まっていた。

「作っている内に赤く染まってな。それだけ風属性の力を宿しているってことだぜ」

 風属性か。

「後な、こいつは自己修復能力も持っているから、お前さんにはぴったりだな!」

 って、それは皮肉ですか、皮肉ですか!?

「さあ、この世界に一つだけのお前専用の槍、『風槍レッドアイ』だ。受け取りな」

 俺は赤い槍を受け取る。イイネ、イイネ。何よりも俺専用というのが気に入った。やはり専用装備は良い物だ。そりゃさ、この風槍レッドアイよりも強い槍なんて沢山あると思うぜ、でも俺専用は、今の時点でこいつだけだ。


 うん、無骨な感じも気に入った! 最高だ。最高の気分だ。

『良いな』

「ああ、正直、かなりのもんだと思うぜ。大事に、そしてがんがん使ってくれよぉ」

 もちろんだとも。俺のメインウェポンだッ!


 さあて武器も手に入ったし、ネズミの巣に向かいますか。



―2―


 森を北西に駆けていく。方角自体は世界樹の位置を参考にして割り出しているので間違いないだろう。森の中を――50キロほどだろうか――走り続けているとついに森の終わりが見えてくる。


 そして開けた森の先には海が広がっていた。


 海だ。


 本当に海だ。


 水平線も見える海だ。


 しかし、よく見ると海の中にも木が生えており、森が形作られようとしていた。実際に海が森となるには膨大な時間がかかるのだろうが異常な光景だった。なんなんだ、この世界の木の繁殖力は。木にとって塩って天敵じゃ無いのか? それともこの世界の海は塩水じゃないのか?


 とりあえず海の水を飲んでみるか?


 寄せては返すさざ波。高くない非常に緩やかな波である。


 海の水は非常に透き通っており海中が何処までも綺麗に見える。海の中は色とりどりの珊瑚が繁殖しており、それに絡みつくように木の根が這っていた。うん、綺麗だけどちょっとグロい光景だ。一面珊瑚とか中には入りたくないなぁ。水の中に砂地が見えないんだもん。珊瑚を踏みながら歩くなんて……したくないしね。

 と、海の水をちょっと飲んでみようか……。飲んだ瞬間死んじゃうとか無いよな? ラースとの戦いで手に入れた危険感知のスキルは警告を発していないし……多分、大丈夫でしょう。

 サイドアーム・ナラカで海の水を掬い飲んでみる。


 しょっぱい。


 塩水だ。てことは……塩が作れるんじゃね? これは憶えておこう。そのうち何とかして塩を作りに来よう。俺のチートの幕開けだな、ふふふ。


 さーてと、このまま北上だったな。




―3―


 さらに30キロほど北上すると小さな城が見えてきた。……なんというか、例えは悪いけど田舎にあるラブホテルみたいだ。……いやまぁ、使ったことは無いんだけどね、無いんだけどね……ちくしょう。

 もしかしてアレがミーティアラットの居る巣か?


 うーむ。巣と言うから洞窟みたいなのを想像していたんだがなぁ。城か。ダンジョンか。……にしてもお腹空いたなぁ。


 とりあえずご飯にしよう。今日もグリーンヴァイパーの姿焼きです。なけなしの銅貨で買ってきたんですぜ。ああ、目の前に塩の海があるのに、手元には塩が無い。海に浸けて食べるわけにもいかないしなぁ。まぁ、塩水を見ながら食べることにします。もしゃもしゃもしゃ。


 にしても、ここまで結構な距離があったな。80キロくらいか。魔法糸と敏捷補正のおかげで思ったよりは早く到着出来たが、森の中を80キロの距離を走るとか、昔なら考えたくないな。日が暮れるぜ。


 せめて転移が2カ所だったならなぁ。一旦帰ったり、準備したりを気軽に出来るんだがなぁ。この試験が終わったらステータスプレート(銀)を貰うか。あれってスキルツリーが解放されるんだよな。てことは飛翔系のスキルツリーも復活するかも知れないよな。もしゃもしゃもしゃ。


 ふぅ、ご馳走様でした。と、では、このまま城に向かいますか。


 城に近づくと多数のホーンドラットが沸いてきた。ホント、何処にでも居るくっそ雑魚だなぁ。

 俺は風槍レッドアイを構え、目の前のホーンドラットを貫く。そして飛びかかってきたホーンドラットを打ち払う。それだけでホーンドラットは動かなくなった。お、イイネ、イイネ。ホーンドラットくらいなら無双出来そうな強さだ。

 と言うことで槍を腰だめに構えホーンドラットの群れに突撃する。俺の突進にはね飛ばされるネズミたち。角を前に突き出してくるホーンドラットも居たが風槍レッドアイは角ごと砕き貫いていった。


 そして小さな城の前に。ホント見れば見るほどアレだ、そっくりだ。


 城の門は無く、すでに朽ち果てているようだった。


 うんじゃまぁ、入りますか。


 俺は木々が絡みつき、半ば崩壊している城の中に入っていく。



【風槍レッドアイ】

【魔獣レッドアイの牙より作られた魔獣武器(エネミーウェポン)。風属性の力を宿しており何処でも風魔法を使うことが出来る。自己修復能力を持った氷嵐の主専用の赤槍】

2018年2月22日修正

地平線も見える海だ → 水平線も見える海だ

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