7-51 氷の城を探索だ
―1―
とりあえずミカンと共に炎の犬が湧いていた入り口へと進む。氷の壁だからさ、陽射しをそのまま取り込めそうなのに、中は暗いんだな。いや、外は陽の光が見えないくらい吹雪いているもんな、暗くて当然か。
羽猫に灯りを……って、今、エミリオがいないじゃん! ま、まぁ、俺には《暗視》スキルがあるから、移動には困らないけどさ。
ふむ。中は螺旋階段か。
――《剣の瞳》――
しかし、何の反応も返ってこなかった。近くに魔獣の気配は無さそうだな。よし、降りていこう。
「主殿」
そこでミカンが話しかけてきた。うん、ミカンちゃん、どったの?
「灯りを付けても良いだろうか?」
あー、そうか。ミカンは《暗視》スキルを持っていないもんな。暗いからか瞳孔が縦に伸びてて、見るからに夜目が利きそうなんだけどなぁ。まぁ、俺はどちらでも困らないから、どうぞどうぞ。
ミカンは自身の魔法のポーチから魔法のランタンを取り出し、魔石を入れて明かりを灯す。ランタンの明かりが周囲の氷に反射して眩しいくらいだ。にしても、見るからに氷で、透き通っているようなのにさ、向こう側まで見通せないんだな。何だろう、これも魔法的な不思議物質だからだろうか。
螺旋階段を降りきると二手に分かれた通路に出た。右と正面か。まずは右から進むか。
右の通路を進む。すると通路はすぐに右へと折れ曲がった。
もしゃもしゃ。
そこで謎の音が聞こえた。思わず振り返ると……そこには歩きながら干し魚に齧り付いているミカンの姿があった。ミカンちゃん、歩きながら食べ物を食べたらダメですよ。
通路の先は大きな広間になっており、いくつか扉が見えている。部屋の中に入り、扉を開けていく。扉の中はそこそこの広さの個室になっていた。客室か何かだろうか? まぁ、こっちは外れか。
にしても魔獣の姿を見ないな。もっとわんさか現れるかと思ったんだがな。
―2―
来た道を戻り、城の中を探索していく。
途中、大きな扉を見つける。ここが怪しいな。
大きな扉をミカンに開けて貰い、中に入る。中は絨毯の敷き詰められた豪華な部屋になっており、その奥に巨大な玉座が見えた。おー、王様との謁見の間って感じだな。ここにレッドカノンが偉そうにふんぞり返っていたのかな。
にしても、こんなにも寒そうな氷の城なのにさ、その主は炎の化身みたいな魔族って皮肉がきいているよな。レッドカノンが頭を冷やしたい時とかに戻ってきていた!?
ふむ。玉座の後ろには謎の旗がかかっているな。描かれている紋章は竜の頭かな。レッドカノンの家紋とか、そういう感じなんだろうか。
まぁ、色々、探索だな。とりあえず玉座に近寄って見る。椅子の背もたれ部分が非常に大きいな。天井に届きそうだ。
よし、とりあえず座ってみよう。
体を丸め、無理矢理椅子に座ってみる。これで足が組めたらなぁ。今はこんな事をしている場合ではない。
と、その瞬間だった。
足下の床が開き、俺は椅子ごと落下する。
「主殿!」
ミカンの叫び声が聞こえる。どうする? とりあえず《魔法糸》で……。
しかし、落下はすぐに止まった。
下の隠し部屋に移動した――のか?
小さな狭い部屋の中には無数のキーボードのような四角いボタンが並んでおり、その上の空間に見たことのない文字が次々と浮かび上がっていた。
《異能言語理解》スキルが浮かび上がっている文字に字幕を入れてくれる。えーっと、何々?
エラー、エラー、
環境に異常あり、
エラー、エラー、
システムをリセットしてください、
かな?
同じ文字を繰り返しているけどさ。どういうことだ? 環境って、外の吹雪のこと? システムをリセットって言われてもさ、これをどうしたら良いのか、分からないなぁ。
無数に並んでいる四角いボタンが怪しいってのは分かるけどさ、下手に触って大変なことが起きたらって思うと……。でも、このまま、ここに閉じ込められたままってのも考え物だしさ。
うーむ。
とりあえず、他の場所を探索して、どうしようもなくなったら、このボタン類を適当に押してみるか!
よし、まずは探索だな。
で、これ、どうやって上の部屋に戻るんでしょうか?
2021年5月10日修正
その置くに巨大な → その奥に巨大な