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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
610/999

7-43 鐘、入札です?

―1―


「素晴らしいお姿です、ら……ノアルジーさま」

 部屋の外に出た俺をファリンが褒めてくれる。そうだろう、そうだろう。かっこいいよね!


「競売開始というーことで一番のトップがー来た? むむむ」

 ハルマは何やら、まだ唸っているようだ。


「ハルマ、時間がないんだろ? 早く案内してくれ」

 俺の言葉を聞きハルマがはっと驚いたようにこちらを見る。

「あわわわ、申し訳ないーです。すぐに案内しーます」

 ハルマがすぐに振り返り、こちらを確認もせず慌てたように歩き出す。何だか、テンパっている感じだなぁ。大丈夫なんだろうか。


 ハルマの後を追い、前回と同じように2階へと上がり、俺たちは用意された席に座る。今回はちゃんと座れるんだぜー。

 それに合わせて給仕達が飲み物を持ってくる。


「それでは競売開始になりーます。入札などーのやり取りは私が代理で行いーます」

 まぁ、その辺はハルマに任せれば大丈夫か。


 俺たちの周囲の席には多くの商人、商会の姿が見えた。おうおう、皆、お金を持ってそうだなぁ。


 バルコニーの下でも多くの商人達が集まり、飲み物を手に競売の開始を今か今かと待ちわびているようだった。


「ふん、ノアルジー商会か。遅れてくるとは、新興のくせに大物気取りか」

 俺が下の様子を見ていると、席の隣からそんな言葉が聞こえた。む、何やつ!?


「何やら聞こえたが、どういった意味だろうか?」

 俺がそちらの席へと振り向き、言葉を飛ばすと、席に座っていた普人族のおっさん連中があざける表情から驚きの顔へと表情を変化させていた。


「い、いや、あれだ。大手の商会である私のところに挨拶に来ないのは、あれだ」

「生意気だ、と?」

 俺が言葉を発する度におっさんがしどろもどろになり、目を泳がせていた。何だ? よーわからんな。


「ノアルジーさま。ドラド商会です。帝国に拠点を持たない商会としては最大手と言われています」

 俺の隣に座っていたファリンがこっそりと教えてくれた。へー、そうなんだ。ファリンは優秀だなぁ。それに比べて、もう一方の隣に座っている14型さんは、相手を馬鹿にしたように見ているだけで、なんというか、なんというかだなぁ。ファリンが有能なだけに14型さんの残念ぷりが目立つなぁ。


「ドラド商会の皆さん、新興ゆえ商会の約束事が分からなかったんだよ。すまん」

 とりあえず形だけ謝ってみた。


「わ、分かればいい。ふん」

 ドラド商会でも一番偉そうにふんぞり返っていたターバン巻き巻きなおっさんが、腹にめり込むように腕を組んで、そんなことを言っていた。ぶよんぶよんだなぁ。太れるほど裕福って事か。




―2―


「それでは、これより競売を開始します。まずは、この品から!」

 舞台の上に立ったアラビアンな服装の男がバルコニーの上にまで聞こえる声で語り出した。ふむ、魔法か何かで声を増幅しているのかな。透き通るような分かりやすい声だ。


「本日、一品目は『古代の鐘』になります。これは我が国に伝わる謎の魔法具となっており、用途不明、正式名称不明、何しろ鑑定が出来ない、そんな曰く付きの商品になります!」


 顔を表情が見えない程度の薄い布で隠した色っぽいお姉さんが台車に乗せた小さな鐘を運んでくる。おー、あれが古代の鐘。


「この曰く付きの商品、分かっているのは無異(ユニーク)品だということだけ。無異(ユニーク)品の価値は、商会を、商人をやっている皆様方ならご存じのはず!」


 よし、この紅い瞳で見破ってやるぜ!


【妖精の鐘3】

【全部で八個あるうちの三番目の妖精の鐘。八大迷宮『二つの塔』への道を切り開く】


 おっしゃ、当たりだ! 何というか、幸先がいいなぁ。これも日頃の行いか? 行いか!


 でもさ、不安なのが3って、ついていることだよな。ま、まさか、八個集めろとか言わないよな? さすがに、それは、ちょっと集められる気がしないぞ……。そうなると『二つの塔』の攻略は後回しになるな。


「さて、この品、本日のスタート価格は、金貨3,200枚! 3,200枚からスタートになります!」

 よし、ちゃんと金貨3,200枚からスタートだな。


「ハルマ、入札したいのだが」

「え!?」

 俺の言葉にハルマは驚いていた。


「入札はありませんか? 皆様方、入札はありませんか?」


「ハルマ、入札だ」

「わ、わかりました」

 俺の言葉を聞き、ハルマは慌てたように懐から何か白い旗のついた小さな棒を取り出し、それを高く掲げ、振っていた。


「いました! ノアルジー商会様、入札です!」

 ああ、これで入札か。これで妖精の鐘ゲットだぜ。いやぁ、もっと探し回って大変なことになるかと思ったら、お金で簡単に解決出来たな。まぁ、その金額が約10億という途方もない額なワケだどさ。昔の銅貨や銀貨でひぃひぃ言っていた頃からは考えられないよなぁ。


「他にいませんか? 入札はありませんか?」

 ホント、やれやれだぜ。


「ドラド商会様、入札ですね! 3,201枚入りました!」

 へ?


 俺は思わず隣を見る。


 隣ではターバンのおっさんが勝ち誇ったように、こちらを見て薄汚く笑っていた。な、何だと?

 確かにドラド商会についていると思われるナリン国の案内人が白と紫の旗を掲げて振っている。

 これは、アレか、嫌がらせか。


「ファリン、まだ余裕はあるか?」

 俺の言葉にファリンは力強く頷く。そして全ての枚数を教えてくれる。これは、な、俺が必ず手に入れないと駄目な物だからな。負けてたまるかよ。


「ハルマ、800枚以上は8枚以上増やしても良かったんだよな?」

 俺の言葉を聞いてハルマは何かを察したように震えながらも頷く。


「4,000で入札だ」

「は、は、はひぃ」

 ハルマが震えながらも黄色と二つの白い旗を振る。


「の、ノアルジー商会、4,000で入札です! 4,000枚入りました!」

 司会の人が興奮したように叫ぶ。こういう競売ってのはさ、相手にこれ以上やっても無駄だって思わせた方が手早く落札出来るからな。相手の心を折るような数で一気に攻めるべきだよな!


「ノアルジー商会、4,000枚です。他にありませんか?」

 ふぅ、さすがにこれは追ってこないか。良かった、良かった。


「では、ノアルジー商会の4,000枚でら……おおっと」

 な、なんだと。


「ドラド商会、4,001枚で入札です!」

 うわ、ケチくせぇ。1枚で刻みやがった。


 隣を見れば、だらだらと汗を流したターバンのおっさんが鼻息荒く勝ち誇ったように、こちらを見ていた。


 何という、うざさ!

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