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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
603/999

7-36 パレードの途中

―1―


――《転移》――


 《転移》スキルを使いとりあえず迷宮都市のノアルジ商会支社に降り立つ。初めての《転移》にファリンが目を大きく見開き驚いていた。


「ランさま、これは、その、驚きました」

 《転移》スキル、みんなに人気だよね! やったぜ。


『ここは迷宮都市の支社だ』

 支社なのだった。皆でミカンを探しに行くのだ。

「ランさまー。フルールは荷物が重いのでここで待ってますわぁ」

 出鼻を挫かれたのだった。ガーンだな。

「マスター、この駄犬が変なコトをしないようにここで見張っておくのです」

 あ、はい。14型も残るんだな。にしても、14型さんが、ついてこないなんて珍しいな。それだけ、フルールを1人にするのは何をしでかすか分からなくて不安なのか。

 ……いや、フルールを1人にして何かあったら駄目だからな、その護衛のために残ってくれたと前向きに考えよう。フルールはある意味残念な犬頭だけどさ、うちの鍛冶職人のトップだしな!


「私は、支社の人間に挨拶をしてきます。よろしいでしょうか?」

『構わない。しかし、余り時間があるわけではないからな、手短に頼む』

 俺の天啓にファリンが大きな体を折り曲げお辞儀をする。いやあ、ファリンさん、俺の倍は背丈があるからなぁ。俺を肩に乗せて運ぶとか普通に出来そう。


 さてと、俺はミカンを探しますか。


 とりあえず食堂だな。ミカンといえば黙々と戦闘をしているか、何かを食べているかだからなッ!


 ぷかぷかと飛んでいる羽猫と2人で支社の食堂に向かうと、黙々と食事をしているミカンがいた。はい、ミカンげっとー。


「おお、ラン殿」

 ミカンが箸を片手に食事をしながら、こちらへと手を振る。食べるか喋るか、ちゃんと落ち着きなさい。


『ミカンは昼食か』

 俺の天啓を受け、ミカンが頷く。

「先程まで早朝訓練も兼ねて迷宮に行っていたのだが、その、お腹が……いや、その、あれだ、これは故郷のうどんを思い出す味だな」

 そういえばフウキョウの里には『うどん』という名前の紐状の小麦粉の固まりを魚介スープに浮かべただけの料理があったな。って、こんなやり取り、前にもやらなかったか?


「ラン殿が来られたということは、ついに向かうのだな」

 ミカンは一気にしゃべり、そして、こちらと手元に残った食べ物を見比べていた。いや、あのさ、ミカンが食べ終わるくらいは待つからね。


『そこまで急がない。ゆっくり食べるといい』

「かたじけない」

 ミカンは、そう喋ると同時に良い勢いで麺をすすり始めた。がっつり行くねぇ。まぁ、しっかり食べてください。


 にしてもさ、ミカンって、いつも何か食べているイメージだけど、全然太らないな。それだけ消費しているってコトか。戦闘狂だもんなぁ。




―2―


 ミカンと合流し、《転移》スキルでナリンに向かうことにする。

「そうか、また、飛ぶのだな」

 ミカンはあきらめ顔だ。

「一瞬で移動できて便利ですわぁ」

 犬は猫と違い気楽だなぁ。

「頑張ります!」

 鬼は何故か一生懸命だ。


――《転移》――


 今度はナリンの首都ナハトフロッシュへと飛ぶ。


 ん?


 空からナリンの王宮を見るとパレードでも始まっているかのように大騒ぎだ。一瞬しか見えなかったが、門が大きく開け放たれ、大通りを多くの竜馬車が行き交い、その周囲には沢山の人の姿が見える。前と雰囲気が違うな。競売が始まったからか?


 そのまま王宮の裏側に降り立つ。この裏側は日陰だからさ、表の喧噪とは無縁だな。


『ファリンは初だと思うが、ここがナリンの王都ナハトフロッシュだ』

 俺の天啓にファリンが驚き、そして何かを納得したように頷く。

「これがランさまの力……」

 まぁ、貰ったスキルだけどな。


 とりあえず王宮に向かいますか。


 ぐるりと裏側から池をなぞるように表側にまわる。おー、凄いな。大通りを囲うように兵士や人々の姿が、声が、それに豪華な竜馬車が次々と、うん、まるでパレードだな。


 と、そこで大通りの端に立っていた兵士に呼び止められた。

「おいおい、お前達、何処からやってきた。今は名だたる商会の方々が王宮へと向かっている途中だ。危ないから後ろに下がってなさい」

 うん?


「私たちはノアルジー商会のものです」

 兵士の言葉を聞いたファリンが前に出てる。

「ノアルジー商会!? 何故、ここから? どういうことだ?」

 兵士は混乱している。いや、俺がどういうことだって言いたいよ。

「ノアルジー商会が門を通ったという報告は聞いていないぞ。どうやって中に、いや、それよりもまずは」

 兵士は慌てている。

「本当に、ノアルジー商会なのだな? 偽りではないのだな? もし違っていたら、大事だぞ?」

 兵士は威圧的だ。


「疑っているのなら、証拠を見せます。ランさま、貴族の証をお願いします」

 兵士の態度にファリンは、ちょっと怒っているようだ。えーっと、この指輪がうちの商会の証になるのか。

「これを見るのです」

 俺が首に掛けた指輪を取ろうとした所で、何故か14型さんが俺の首部分ごと無理矢理引っ張り、指輪を兵士に見せつける。


「あ、ああ。疑って申し訳ありませんでしたっ! ノアルジー商会の皆さん、ここでお待ちいただけますか? 隊長に相談してきます」

 兵士は俺たちの返事を聞くよりも早く何処かへと駆けていった。えーっと、俺たちは待っていたらいいんだよな?


 次々と豪華な竜馬車が俺たちの前を通り過ぎていく。竜馬車は、そのまま王宮の中まで入っているようだ。まぁ、大きな王宮だもんな。竜馬車ごと入っても問題ないか。ないのか?


 にしても、隊長か。ナリンの隊長か。うーむ、嫌な予感しかしないなぁ。

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