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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
596/999

7-29 砂漠をぬけた先

―1―


 凍った砂漠の中、砂竜船に竪琴の音色が響き渡る。3日目も終わりだな。


 そして4日目が始まる。


 砂竜船は何事も無く砂漠を進んでいく。

『魔獣が現れないな』

 俺の天啓にモヒカンが大きなため息を吐いた。

「おい、下水の芋虫よ……」

 と、そこで14型がモヒカンに睨みをきかせた。

「いや、オーナーさん。普通はよー、砂竜船に乗っていたら魔獣に出くわさねえんだよ」

「トンガリの言うとおりだ。特殊なコトがない限りは強い魔獣でもなければ砂竜を恐れて現れることはない」

 スキンヘッドのおっさんが狐耳を睨む。狐耳は我関せずとでも言わんばかりに涼しげな顔で竪琴をかき鳴らしている。

「たくよー。変なコトを言うなよ。そんなことを言っていると魔獣が現れるかもしれねえじゃねえか」

 俗に言うフラグですね。って、アレ? ってことは最初に現れたサンドワームって結構強い魔獣なのか。ミカンちゃんが一撃で倒していたから、雑魚かと思っていたけど、そうでもないのか。そういえば俺が『名も無き王の墳墓』や採掘場で戦ったのは結構強い魔獣扱いだったもんな。

 そうか、ミカン、結構、強くなっているんだな。


 昼頃には、遠くに沢山の石造りの建物が見えてきた。

「予定外のことが起きた割には早かったな」

 スキンヘッドのおっさんが安堵のため息を吐いていた。

「そりゃー、有能な私が砂竜船を動かしているんだからね、当然なんだぜー」

 砂竜船を動かしているウリュアスが楽しそうに笑う。

「おいおい、まだ油断するんじゃねえ。まだ半分だ」

 あー、そうか。ここで終わりだーって気分だったけどさ、ここから竜馬車に乗り換えてナリンまで4日かかるんだよな。結構、遠いなぁ。




―2―


 砂竜船が一際大きな石造りの建物の近くで止まる。すると、その石造りの建物の中から武装した蜥蜴人が現れた。

「ノアルジー商会の人ですナ。話聞いてまス」

 俺は話し聞いてないですー。よく考えたら、俺、何も把握していないんだが、えーっと、俺はどうしたらいいんだ?

「じゃ、まかせたよー」

 ウリュアスが片手を上げて、武装した蜥蜴人に合図を送り、そのままするすると砂竜の首をつたって降りていく。


「さ、オーナー、俺たちも降りるぜ。ここからは竜馬車に乗り換えだ」

 あ、ああ。そうだったな。何というか、スキンヘッドのおっさんがルートを把握しているみたいだな。となれば、俺はでーんと構えて任せていれば大丈夫か。


「と、お前はここでお別れだ。とっとと降りやがれ」

 モヒカンの乱暴な言葉に狐耳は肩を竦めていた。


「仕方ないですね。では、グルコンさん、ここでお別れですが、気が変わったらナハン大森林に来てください。前回の失敗で『名を封じられし霊峰』の攻略には人がいることが分かりましたからね。有能な冒険者は歓迎しますよ」

 うん? 『名を封じられし霊峰』って何だ? 迷宮か? 何処かで聞いたことがあるような無いような……。

「なるほど、お前は、あの最難関って言われている八大迷宮の攻略に挑戦しているパーティだったのかよ。その異質な力も納得だぜ」

 スキンヘッドがにが虫でも噛み潰したかのような顔でそんなことを言っていた。ああ、ナハン大森林のもう一つの八大迷宮かッ!

 なるほど、そこが最難関だったのか。でもさ、まだ他の迷宮『二つの塔』ももう1個のトコも未攻略だよな。それに俺が攻略した八大迷宮もあったワケだしさ……。そういうところに挑戦せずにいきなり最難関から挑戦するってさ、それってどうなんだろうな。自意識過剰過ぎやしませんかねー。


 ふむ。狐耳の情報から推測すると八大迷宮『名を封じられし霊峰』は雨期にしか挑戦出来ない? しかも有能な冒険者が沢山必要? 多ければ多いほどいい? って感じなのか?


 ……。


 ま、普通に後回しだな。それはそれとして、だ。


 俺は狐耳の方を見る。狐耳は言うことを言って満足したのか、こちらへ軽くお辞儀をして、すぐに歩き出していた。そのまま大きな竪琴だけを覗かせて人混みに消えようとしている。と、ここだな!


【名前:カナイ・レン】

【種族:半妖狐族】


 鑑定チャンスだぜー。狐耳は鑑定されたことに気付いたのか、驚いた顔をしてキョロキョロと周囲を見回している。そして、誰が鑑定したのか分からなかったのか、そのまま小さなため息を吐くと人混みに消えた。


 にしても妖狐族なんだ。てっきり安直に狐人族って名前かと思ったら微妙に違うんだな。

『グルコン殿、妖狐族を知っているか?』

 ちょっと聞いてみる。

「ああ。狐人族に似た種族だが、魔法に長け人を惑わし、たぶらかすのが得意な種族だな。うん? まさか!」

『ああ。あの吟遊詩人、妖狐族だな』

 スキンヘッドのおっさんが頭をぽりぽりと掻いていた。ちゃんと狐人族は狐人族でいるのか。エルフとダークエルフみたいな感じなんだろうか。

「まぁ、害のある種族じゃねえ。情に厚く、身内に甘い種族だとも聞いているからな」

「おっさん、あいつを見る限り、そうは思えなかったぞ」

 モヒカンの疑問はもっともだ。

「まぁ、種族がそうだってだけだからな。色々な奴がいるだろうさ」

 確かにな。全体で見れば、そういう傾向だったとしてもさ、色々な個性はあるだろうからな。


「おーい、おっさんたち、早くしろよー」

 俺たちが話しているのを待ちきれなかったのか、ウリュアスが、かなり先まで進み叫んでいた。見ればウリュアスの隣にはシトリとミカンの姿も見える。おー、あっちは女の子ばかりだな。いや、こっちには14型さんがいるから、セーフ、セーフだよッ! ……ん? さっき、ウリュアスのヤツ、俺も含めておっさんって言わなかったか? お、俺は違うからなッ!

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