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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
594/999

7-27 クラス吟遊詩人

―1―


「しばらく待ってれば気ぃつくだろ」

 おっさん連中が戻ってきた。

「にしてもよ、その耳、半分の子かよ」

 モヒカンがあちゃーって感じで顔に手を当てていた。


「出発するよー」

 おっさん連中を無視して砂竜船が動き出す。


『半分の子だと問題があるのか?』

 天啓を飛ばし聞いてみる。

「いや、俺ら冒険者は差別しないが、な」

「そうだぜ、俺らは受け入れているんだぜー。それによ、半分の子は色々な部分で能力が優れて――優秀な場合が多いからよ。まぁ、それで妬まれることはあるんだけどな!」

 優秀ならいいんじゃないかって思うけどさ、そう単純でもないのか。

「妬むのなんざ、下の方の連中だけだ。上は優秀なヤツがいた方が生存率が上がって楽できるからな、歓迎するぜ」

 スキンヘッドのおっさんが禿げ上がった頭をぺちぺちと叩いていた。それを真似して俺の頭の上の羽猫も俺の頭をぺちぺちと叩いてた。俺は禿げてませんからね、これはそういう種族なだけだからな!


「十中八九、こいつも冒険者だろうけどよー、何で楽器を持ってて、しかも一人なんだ。よく分かんねーヤツだぜ」

 モヒカンが難しい顔をしていた。ひゃっはーとか言ってそうなのに似合わないな。

『何故、冒険者だと思うんだ?』

「そりゃあ、お前……いや、オーナーさんよ。当然じゃねえか」

 当然なのか。

「片方の親と同じなら大丈夫だがよ、混じって出るようなのは、どちらからも避けられるからな。となるともう冒険者になるくらいしか道がねえって寸法よ」

 そうなのか。それでも優秀なら受け入れればいいと思うんだけどなぁ。逆にそれが不味いのか? 両方の種族から取り合いになってしまうとか?


 にしても、この狐耳の青年、見れば見るほど美形だな。サラッとした髪に透き通った肌、今は目を閉じているが、和風だがキリッとして整っている顔立ち――何というか、素でモテそうな面をしていやがる。これは俺の敵かもしれないなぁ。許せんよな。


 これで性格が悪そうだったら、途中で投げ捨てよう。




―2―


 しばらく砂竜船を走らせていると狐耳が目を覚ましたようだ。

「み、水……」

 苦しそうにうめき声を上げ、水を求めている。ふむ、水か。


『14型』

 14型に頼み真銀製のコップを用意して貰う。


――[アクアポンド]――


 コップに水を溜め、そのまま狐耳の顔にぶちまけた。

「はぅあ!」

 狐耳が跳ね起きる。

「僕のテイルハープはっ!?」

 そして、すぐにキョロキョロと周囲を見回し、抱えていたハープを見て安堵のため息をついていた。いや、だから、なんで、そんな大きな物を持っているんだよ。人が抱えて持たないといけないような大型の楽器を持ち歩くとか、ちょっとおかしいと思います。


「お前、何者だ?」

 飛び起きた狐耳に世紀末モヒカンがドスをきかせた声で話しかける。それを聞いた狐耳は再度キョロキョロと周囲を見回し、そして微笑んだ。

「はい、僕は皆さんと同じ冒険者です」

 それを聞いたモヒカンがずっこけていた。いやぁ、いいリアクションをするなぁ。

「そうじゃねえだろうが、お前が誰で何で倒れていたかを、こっちは聞いてるんだろうがよー!」

 そうやって凄むとモヒカンが山賊みたいだな。

「いやぁ、暇つぶしで砂漠を横断しようとしていたんですよ。少し砂漠を舐めていました」

 狐耳は何やら真剣な表情でそんなことを言っている。

「お前さん、砂漠は暇つぶしで横断するようなところじゃないと思うんだが」

 狐耳の言葉にスキンヘッドのおっさんが困ったように頬を掻いていた。うむ、俺も、実際に歩いて渡ったことがあるから思うんだが、砂漠は暇つぶしで越せるような場所じゃないと思うぞ。《転移》スキルがあって夜をスキップ出来ても苦労したのに、それすらなく渡ろうなんて正気の沙汰じゃない。


「そうですか? まぁ、理由はそれだけですよ」

 狐耳は楽しそうに笑っている。


「お前さんよ、冒険者と言ったな。悪いが、ランクとクラスを聞いてもいいか?」

 ふむ。《剣の瞳》で悪人ではないと判断したが、鑑定して名前と種族くらいは見ておくか? いや、今の段階で下手なことをするのは不味いか。鑑定は使ったのが相手にバレることもあったからな。


「クラスは吟遊詩人ですよ」

 へぇ、そんなクラスもあるんだ。大きな竪琴を持っているもんな、らしいと言えばらしいか。

 しかし、周囲の反応は俺と違っていた。皆が何を言っているんだと言わんばかりの表情で狐耳を見ている。


「吟遊詩人なんてクラスは聞いたことがねぇ」

「適当なコトをいってるんじゃねえよ」

 一瞬の沈黙から立ち直ったおっさん二人がそんなことを言っている。へ? 吟遊詩人ってクラス無いの?

「そうですね。僕も僕以外に見たことがありません」

 なんだと。レアなクラスなのか?


 むむむ、謎過ぎる。


「さすがに疲れたので、近くの町まで運んで貰えると助かります。もちろん、お礼はしますよ」

 狐耳がそれだけで黄色い声が飛びそうな笑顔で、そんなことを言った。皆が意見を求めるようにこちらを見る。


 むむむ。


 まぁ、余り広くない砂竜船で、人が一人増えて狭くなるのはキツいが、困ることと言えばそれくらいだしなぁ。

『良いだろう。しかし、問題があると判断したらすぐに投げ捨てるからな』

 俺の天啓を聞き、狐耳が驚いたようにこちらを見ていた。

「何故、テイムした魔獣を大切に砂竜船に乗せいているんだろう、しかもナハンの雑魚じゃないですか、変わった人たちだな、と思っていたら――驚きました、星獣様だったんですね!」

 な、なんだとぅ。誰が雑魚だ、誰が。まぁ、雑魚って単語は翻訳さんの変換なんだろうけどさ、それでも俺をそんな風に見ていたのか。こやつ、今すぐ投げ捨ててやろうか。って、星獣?


『星獣様が分かるのか?』

 俺の天啓に狐耳が頷く。

「ナハンではマウ様が有名ですよね」

 フウキョウの里に居た羽猫を知っているのか。ナハンって大陸だと辺境扱いなのに、よく知っているな。

『ナハン大森林を知っているのか?』

「ええ、今、僕たちは、そのナハン大森林の雨期を待っている状態ですからね。この砂漠越えも、それまでの修行を兼ねた暇つぶしでしたから」

 修行で砂漠を越えようとか頭おかしい。


 にしても、この眼鏡でもかけていたら潰したくなりそうな狐耳、ホント、何者なんだろうな。

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