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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
591/999

7-24 顔見せするだけ

―1―


――《転移》――


 翌日、《転移》スキルで支社に戻ると、眠たそうな目の猫人族が居た。えーっと、確かナゴシくんだったかな。

「オーナー、準備は出来ています……」

 おー、何だか凄い眠そうだ。もしかして、俺が明日来るなんて言ってしまったから無理をさせてしまったのだろうか。


 ナゴシくんの案内で支社を出て、砂竜船乗り場へ向かう。

「ナリンへは用意した砂竜船で砂漠を4日ほど。更に竜馬車で4日ほどで到着予定になります」

 へー、1週間ほどで着くんだ。思っていたよりも近いな。それに乗り物ばかりって随分と楽な旅になりそうだな。


 ナゴシくん、14型、羽猫とともに迷宮都市の商業ギルド地区にある砂竜船乗り場に到着すると、そこにはすでに冒険者たちの姿があった。


「ラン殿」

 こちらの姿に気付いたミカンちゃんが声をかけてくる。おー、ちゃんとミカンちゃんも護衛としてついてくるんだな。


「おう、下水の芋虫か」

 見知ったスキンヘッドのおっさんが声をかけてくる。おー、小迷宮『異界の呼び声』で出会ったスキンヘッドの拳士のおっさんじゃないか。


「何だ、お前もノアルジー商会の護衛を引き受けたのかよ」

 モヒカンもいるな。確か、この人、この世紀末ぽい感じなのに、これで治癒術士だったよな。


「芋虫ちゃん、こんにちはー」

 そう声をかけてきたのは、3姉妹探求士の妹の方だった。あれ? スキンヘッドのおっさんのパーティにいたのは長女のキャッツルガの方じゃなかったか? この子は、確かバーンのパーティに居た子だよな? 入れ替わっているのか?


「お久しぶりでス」

 スキンヘッドとモヒカンの影から蜥蜴人族の少女? が現れお辞儀をする。あれ? えーっと、クロアさんと一緒にいた治癒術士を目指していた、えーっと、名前はシトリ? だったよな。

「先輩達に治癒術士としての修行を受けているのでス」

 あー、そういえば、このモヒカン、治癒術士のクラス持ちだったな。


『キャッツルガはどうしたのだ?』

 俺が問いかけるとスキンヘッドのおっさんが自分の照り上がった頭を叩き、3姉妹探求士の妹が肩を竦めていた。


「あいつは助っ人だからよ、今もいろんなパーティを渡り歩いていると思うぜ」

 モヒカンが教えてくれる。

「バーンが神国に行ってるからねー。今、バーンのパーティメンバーは暇なんだよー。だから、このクエストに参加、っと、私はウリュアスだよ、よろしくねー」

 探求士の少女――ウリュアスはそう言って手に持った短剣をクルクルと回している。


「で、ノアルジー商会の人間は誰だよ。下水の芋虫の後ろにいる嬢ちゃんは、お前の仲間だろ……となると、そこの眠そうな猫人族か!」

 モヒカンが親しげに俺に話しかけてくる。えーっと、気さくに話しかけてくるのは俺も護衛の一人だと思われているからだよなぁ。


「揃っているようですね」

 眠そうなナゴシくんが皆を集める。


「ああ、準備は出来ている」

 スキンヘッドが拳を打ち鳴らす。

「うむ」

 ミカンも気合充分という感じで頷いている。

「そこの子の試運転も済ませたんだぜー」

 あー、ウリュアスが砂竜船を動かすのか。

「おー、待ってたぜ」

 モヒカン、無駄に偉そうだな。

「は、はいでス」

 シトリは緊張したように小型の杖を両手で握って声を震わせていた。


「今回は私たちの商会のオーナーをナリンまで道案内、護衛をしてもらいます。その砂竜船は小型ですが、もちろんノアルジー商会の所有物ですので、大切に扱って下さい。向こうの竜馬車も同じです」

 ナゴシくんが説明を始める。あー、この砂竜船、うちの商会の持ち物なんだ。まぁ、よく考えたらさ、物を運んで砂漠を越える必要はあったんだから、持っていても不思議じゃないよな。


「いやいや、ちょい待ち」

 何故か、モヒカンが会話にストップをかける。

「その肝心のオーナーの姿が見えないぜ。これから来るのか?」

 ナゴシが説明を開始したことで、彼がオーナーではないと気付いたようだ。


 ふっふっふ、そのオーナー、実は俺なんだぜー。


 仕方ないなぁ。


 俺は皆の前に出る。


『自分が……』

「マスターが、その商会のオーナーなのです」

 俺の天啓にかぶせるように14型が言葉を発した。いや、あの、14型さん、ちょっとタイミング、良すぎませんかねー。


 そして、何故かミカンちゃんが大きく片方の猫目を見開いて驚いていた。いや、あの、君、知らなかったの? 知ってたよね、知っていたはずだ。もしかして、俺のコトをノアルジ商会で働いている一社員みたいに思っていたのか?


 う、うーむ。


「おいおい、下水の芋虫が、だと」

 モヒカンがわなわなと広げた手を震わせ、そのまま後ろにさがり、尻餅をつく。モヒカン、驚きすぎだ。


『今回は冒険者という立場ではなく、商会のオーナーという立場になる。皆、よろしく頼む』

 よろしく頼むんだぜー。


 って、アレ? ウリュアスは余り驚いていないな。まぁ、探求士と暗殺者って怪しいギルドに所属しているんだから、それくらいの情報は持っていたのかな。


 まぁ、何にせよ、出発進行だぜー。

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