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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
590/999

7-23 準備をするだけ

―1―


――《転移》――


 《転移》スキルを使い迷宮都市にあるノアルジ商会支社の中庭に14型、羽猫と共に降り立つ。そろそろ、《転移》スキルも手入れをした方がいいかなぁ。どのチェックが、何処だったか分からなくなりそうだもんな。

 さてと、まずは支社でナリン行きの情報を仕入れるかな。これは冒険者ギルドに行って聞いた方が良いのだろうか? いや、でもさ、まずは、この支社で聞いてみればいいか。


 中庭から支社の建物の中に入る。そこから適当な社員を捕まえるために建物を歩く。そして外に出る通路の途中にある食堂でミカンの姿を見つけた。何しているの、この子。って、そういえば、ノアルジ商会でバックアップするようにって頼んでいたんだったか。


 何だか、一生懸命に箸でスープに浸かった麺類をすすって食べてるな。少し食べては、休憩し、少し食べては休憩し――熱くて食べにくいのだろうか。

「おお、ラン殿」

 そんなミカンを見ていると、こちらに気付いたようだ。器用に食べながら手を挙げる。食べるか喋るかどっちかにしなさい。


『ミカンは、朝食か』

 俺の天啓を受け、ミカンが頷く。

「これは故郷のうどんを思い出す味だな」

 そういえばフウキョウの里には『うどん』という名前の紐状の小麦粉の固まりを魚介スープに浮かべた料理があったな。確かに似ていると言えば似ているだろう。

「ラン殿のおかげで、この迷宮都市でも住む場所、食べる場所があり、非常に助かっている」

 そうか、ここに住んでいるのか。その様子だと、まだ『名も無き王の墳墓』には挑戦出来ていないようだな。


「ミカンさんには、ここの用心棒もやって貰っているので助かってます」

 ちょうど通りかかった支社の一人が教えてくれた。って、えーっと、誰ですか? ホント、社員が増えすぎて、事業も増えすぎて、把握が出来ないなぁ。まぁ、俺がお金に困らなくなったってのは分かるんだけどさ。


「して、ラン殿は何用で、こちらに?」

 スープを飲み干し、どんぶりを置いたミカンがこちらを、眼帯をしていない方、キリリとした瞳で見つめてくる。あー、ミカンが持っている器、どんぶりじゃん。よく見なくてもどんぶりじゃん。この世界にも存在するんだな。

『あ、ああ。ノアルジ商会の代表がナリンに呼ばれているのでな。そこに向かう準備の途中だ』

 それを聞いたミカンが片眼を閉じ腕を組む。

「ラン殿、良ければその護衛に雇って貰えぬか?」

 あ、ミカンちゃん、一緒に来たいのか? このまま迷宮都市で修行をしてなくても良いのか? むむむ。今のミカンちゃんの実力が分からないからなぁ。何というかさ、今の俺だと護衛よりは道案内の方が欲しいって感じなんだよな。


『すまない、この支社で誰か話の分かる者はいるだろうか?』

 近くにいたさっき話しかけてきた猫人族の社員を捕まえて頼んでみる。すると、その猫人族の若者は緊張したように尻尾をぴんと伸ばし、よく分からない返事を残して何処かに消えた。え、えー? さっきは親しげに話しかけてきたじゃん。どうなってるんだ。


 そしてミカンちゃんは答えが返ってこないことで、ちょっと拗ねたように下を見ていた。いやいや、ちょっと待ってね。


 しばらくして、何処かで見た羊角の女性が慌てて、こちらへと駆けてくる。

「オーナー、どういったご用件でしょうか?」

 少しだけ息が荒いな。えーっと、確か採掘場で会った羊角の人だよな。名前、なんだったかなぁ。

『すまぬが、ナリンに行く用事が出来た。ナリンへの道に詳しい人材が欲しい』

 俺が天啓を飛ばすと、落ち込んでいたミカンが更に肩を落としていた。


「はい、分かりました。担当者に話は通しておきます。担当ではないので、詳しいことは分かりませんが、このような内容ならば冒険者ギルドから人が派遣されると思います」

 なるほど。なんというか、冒険者ギルドが、本当に何でも屋で人材派遣会社だよなぁ。


『それと、そこのミカンを護衛として指名したいのだが可能だろうか?』

 俺の天啓にミカンの耳がピクピクと動く。

「どうでしょう? 一応、お話は伝えておきます」

 うーむ。うちの支社に冒険者ギルド担当者みたいなのが居るのかな。そういった人とさ、直接、話をした方が早かった気がするんだが、今、手の空いている人が、この羊角さんしか居なかったのかな。


 にしても、急いでこっちに来たのにさ、結局、人を用意するための準備で一日取られそうだな。うーむ、予想外です。


 さあて、どうしようかな。ここでナリンの情報を集めるか? いや、案内人を紹介して貰えるなら、その人に聞いた方が確かだろうし、早いよな。


 よし、そうするか。


『また明日来る』

 俺は一度本社に戻ることにした。


 さてと、軽く準備をしたら、ナリンに出発か。それまでの間、ノアルジ商会の方はユエに任せておけば大丈夫だろうし、学院の方は長期休暇ってコトで大丈夫だろう。うん、多分、大丈夫だ。まぁ、そうは言っても試験にだけは出る予定だしな。うんうん、大丈夫、大丈夫。

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