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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
585/999

7-19 学院に芋虫現る

―1―


『ミカンはこれからどうするのだ?』

 俺が天啓を飛ばすとミカンが頷いた。

「せっかくだから、ここの八大迷宮『名も無き王の墳墓』で腕試しをしようと思う」

 そうか。

『しかし、『名も無き王の墳墓』は冒険者としてのランクがC以上必要だが、ミカンは大丈夫か?』

 俺の天啓にミカンが驚いていた。

「C……、ランクC。だ、大丈夫です」

 何だか、大丈夫では無さそうな感じだなぁ。アレ? そういえばミカンの冒険者ランクってどれくらいだったんだろうか。俺、聞いたかな。


『まぁ、今度案内しよう。ユエ、ノアルジ商会でミカンを手助けしてやって欲しい』

「ランさまが言われるのであれば」

 ユエが頷く。


『ユエはどうする?』

「今日はこちらに残ります。明日、迎えに来ていただけると助かります」

 そ、そうか。

『子どもは良いのか?』

 俺の天啓を受け、ユエが一瞬、悩ましげに考え込むが、すぐに顔を上げる。

「大丈夫です」

 そうか。でも、余り仕事人間になったらダメなんだぜ。

『ユエ、ここでミカンも頼む』

 ユエが頷く。どうせ、ミカンちゃんのことだから、泊まる場所も無いだろうしな。

「ラン殿、お心遣い感謝する」

 ミカンが頭を下げる。良いってコトよー。俺ら仲間じゃん。


 さあて、今日はこんな感じか。別に迷宮都市で見て回る所もないし、後は本社に戻ってくつろぐかな。




―2―


 ミカンは迷宮都市に残り、武者修行を続けるようだ。早く、『名も無き王の墳墓』に挑戦出来るように頑張って下さい。

 そして、ユエを本社に送り届けた後、俺は学院に戻った。


 いやぁ、商会のトップをやりながら、学院の生徒もやるなんてキツいわぁ。しかもバレないように行動しないとダメなんて、ホント、キツいわぁ。


――《隠形》――


 《隠形》スキルを使い、人の気配がないことを確認して学院の中へと入る。また正面から入らないとダメなのはキツいよなぁ。こっちは本当にキツい。


 俺は結界を抜け、寮を目指して駆ける。

「虫」

 と、そこで声がかけられた。ほわあぁぁ、見つかった、バレた。害獣指定される、殺される、ヤバい、ヤバい。

「虫、話を聞く」

 うん? と、そこにいたのは紫炎の魔女だった。何だよ、驚かせるなよ。


 俺は足を止め、紫炎の魔女へと振り返る。紫炎の魔女は俺の姿を見て呆れたように肩を竦めていた。


「虫、隠形が解けている」

 だから、虫じゃねえって……って、は、はひぃ? へ、マジですか。いくら人気が無いとは言ってもまったくのゼロじゃないし、いやいや、今、《隠形》スキルが切れるのは不味いだろ。


「あれ? あそこ」

「魔獣がっ!」

 ほらほら、何だか普通に見つかってるじゃん!


「虫、糸を吐く」

 紫炎の魔女がこちらに手招きしていた。へ? 糸を出せばいいのか?


――《魔法糸》――


 《魔法糸》のスキルを使い魔法糸を作り出す。紫炎の魔女が、その糸を握り、そのまま俺の首あたりに回す。


「テイムした魔獣」

 紫炎の魔女は、そのまま俺を引っ張り、他の生徒に説明していた。


「紫炎の魔女さまのテイムした魔獣だったんですね」

「ほら、ソフィアちゃん先生でしょ」

「あ! ……ソフィアちゃん先生、芋虫魔獣をテイムしているんですね」

「何だか、弱そう」

「グロいです」

「私なら3手で倒せそうですわ!」

 学院の生徒達は好き好きに色々なコトを言っている。えーっと、見知った顔もあるんですが、何だろう、何というか、なんとも言えない気分です。


「これはこれで優秀」

 紫炎の魔女が俺の評価を訂正してくれた。ありがてぇ、ありがてぇ。って、お前が急に声をかけるから《隠形》スキルが解けたんじゃんかよ。


「時々、見かけたと噂になっていた魔獣はソフィアちゃん先生のテイムした魔獣だったんですね」

「先生、放し飼いは良くないと思います」

 えーっと、今までの俺の行動って結構バレていた? マジか。


「虫、お馬鹿だから大丈夫」

 紫炎の魔女の言葉に生徒達は納得したようだった。

「間抜けそうな顔しているもんね」

「魔獣だと思ったら怖かったけど、よく見たら無害そう」


 ……。


『おいこら、誰がお馬鹿だ』

 俺は紫炎の魔女に限定して天啓を授ける。

『お前だろうが、ど阿呆』

 紫炎の魔女から念話が返ってきた。


「ソフィアちゃん先生、この魔獣、名前はあるんですか?」

「……ランだ」

 おい、こら。勝手に俺の名前を教えるな。


「ランって言うんですね。何だかキュイキュイ鳴いていて可愛いかも」

「ちゃんと武装させているのですね。さすがはソフィアちゃん先生ですわ!」


 俺は、俺は、この空間がいたたまれないよ。


 俺は女学生たちに囲まれたまま、紫炎の魔女に連れられて学院の中へと入る。そのまま女学生たちと別れ、紫炎の魔女の個室まで引っ張られる。


――《剣の瞳》――


 俺は周囲に人が居ないことを確認し、

『誰がテイムした魔獣だ』

 すぐに天啓を飛ばした。


『お前だ、ど阿呆。いくら気配を消しても正面の目立つ場所から入ってくるヤツがあるか』

 いや、そうは言うけどね、出入り口はあそこしかないんですぜ。

「それはいい」

 あ、はい。

『それよりもだ。ステラの件はどうなっている』

 あー。そういえば、そんなこともあったな。

『もうステラが怪しい行動を取ることは無いと思うぞ』

 もう裏口は――結界の穴は塞がれてしまったもんな。

「何を言ってる」

 ん? いや、だから、結界の穴はなくなったからステラが学院の外に出ることはないと思うぞ。

「ステラは今も同じ」

 へ? どういうことだ? まだ怪しい行動を取っているってコトか? でも、結界は……?


 どういうことだ?

2016年8月31日修正

ステラの件はどうなっているんだ → ステラの件はどうなっている

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