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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
584/999

7-18 すでに攻略済み

―1―


 目を覚ました眼帯の猫人族の女侍が凄い勢いでご飯を食べている。えーっと、支社の食料が食い尽くされそうな勢いです。


 こっちは支社だから手の込んだ料理は無いはずなんだが、それでもどんどん食べられると……その、困るな。


「お腹一杯になったようですね」

 ユエが眼帯の女猫侍に話しかける。

「助かりました」

 眼帯の猫侍が箸を置き、頭を下げる。そりゃね、どんぶり4杯に饅頭何個だ、それだけ食べれば満足でしょう。

「食べた分はお代をいただきます」

 そうユエが告げると眼帯の猫侍は困ったように視線を泳がせていた。

「今、持ち合わせが……」

「持ち合わせもないのに料理を食べたのですか?」

 ユエさん怖いです。眼帯の猫侍が小さくなってるじゃん。


「冗談です」

 冗談だったかぁ。いや、あのユエの顔は本気だ。会話の内容次第ではお金を絞り尽くす気だ。


「ここはノアルジー商会迷宮都市支部です。あなたのことを聞いても良いですか?」

 ユエの言葉に猫侍が頷く。

「私はミカンだ」

 そう、ミカンちゃんだよなぁ。ミカンちゃんだと思ったけど、やっぱりミカンちゃんだったか。何というか、ホーシアで頑張って貫禄が身についたとか、そういうこともなく、ミカンちゃんだよなぁ。

「ノアルジー商会で働いているジャイアントクロウラー――芋虫型の魔獣と似た姿をしている星獣様のラン殿をご存じだろうか?」

 俺だ!


 そう、俺はミカンの前に居ない。今、俺は、一段高くなった隣の部屋に居るのだ。向こうからはこちらの様子が見えず、こちらからは見える、といった作りになっている特殊な部屋だ。

 ユエがよく分からない人物をオーナーと会わすわけにはいかない、まずは自分が対応すると言って、俺はこの部屋に押し込められている状態だ。


「そのランさんとあなたの関係が分かりません」

 ユエの言葉は冷たい。しかし、ミカンは怯むことなく、顎に手を当て頷く。

「旅の仲間だ。理由あって離れることになったが、私の用事が終わった後、合流する約束をしていたのだ。私は彼の仲間として、この迷宮都市にある八大迷宮『名も無き王の墳墓』攻略の手助けがしたい」


 あ。


 あー、うん。


 そういえば、ホーシアでの後片付けが終わったら駆けつけるって言ってたような気がするなぁ。うん、言ってたよね。


 そっかー。ホーシア、やっと片付いたのか。


 そっかー。


 迷宮都市の八大迷宮かぁ。


 実はね、そこ、すでに攻略終わっているんだ。


 終わっているんだよッ!


 ユエが困ったようにちらちらとこちらに視線を送っている。お、おう。俺も対応に困るんだぜー。


「ノアルジー商会が作った道のお陰で思ったよりも早く迷宮都市に来ることが出来たのだ。こちらでラン殿の居場所は分からないだろうか?」

 むにゃむにゃむにゃ。


 いや、今、ちょうど、この支社に来ているとこなんだけどね。


 ユエが困ったようにちらちらと、あー、もう。そうだよね、そうだよね、コレは俺が出て行く場面だよね。俺自身としては、別にミカンと会うのが嫌ってワケじゃないし、それどころか久しぶりに会って再会を喜ぼうとしていたくらいだもんね。


 部屋を出て、階段を降り、ミカンとユエのいる部屋に入る。14型は隣の部屋に控えさせたままだ。

『ミカン、久しぶりだ』

 俺が天啓を飛ばすとミカンが驚いたように口を開き、ユエがこちらへと振り返って頭を下げた。

「ランさま、よろしかったのでしょうか?」

「ラン……さま?」

 ユエの言葉にミカンが首を傾げる。そうそう、俺は偉いんだぜー。


 そして、気を取り直したように話し始めた。

「ラン殿、約束の通りやって来た。微力ながら、この侍の力を貸そう」

 あー、うん。


『実はな、ミカン。迷宮都市にある八大迷宮『名も無き王の墳墓』は攻略済みなのだ』

 そうなのだった。

「確かにバーンという冒険者が攻略したとは聞いている。だが、そうであったとしても私たちの手でもう一度攻略しても良いと思うのだ」

 あー、そういえば、そうなっていたんだったな。

『いや、世間ではバーンが攻略したことになっているが、実際は自分が攻略したのだ』

「それは……どういう……?」

 ミカンの動きが固まる。あー、うん。信じられないよね。

『これは、その時手に入れた攻略の証だ』


――《スイッチ》――


 俺は《スイッチ》スキルを使い(そういえば、このスキルも『名も無き王の墳墓』の攻略特典だな)真魔石の杖を取り出す。


「ま、まさか」

「ランさま!? ランさまが『名も無き王の墳墓』を攻略されていたのですか!」

 何故かユエの方が驚き、凄い食いついてきた。


「そ、そうか……。私は遅かったんですね……」

 ミカンが肩を落とししょんぼりっく状態になっていた。


 えーと、あーっと、うーっと。


『そ、そうだ。ミカン、次は砂漠にある『二つの塔』に挑む予定なのだ。その為に妖精の鐘という魔法具を探している所でな。何か情報を持っていないだろうか?』

 そうだよ。まだ、迷宮は攻略するつもりだからな。ミカンの力が必要なんだよ!


「すいません……。何も無いです」

 ミカンは落ち込んだままだ。あー、言葉遣いまで素になってるじゃん。


「魔法具ですよね。スカイの元にも情報は集まっていないようです」

 ユエも落ち込んだように首を横に振っていた。


 と、そこで、ミカンがハッと気付いたように顔を上げた。

「魔法具! 途中、山岳地帯で聞いたのですが、近くの国で魔法具を集めて値段を競わせる? といったようなことをすると聞きました」

 競わせる? もしかして競売かッ!


 オークションでも開くってコトか? もしかすると色々な魔法具が集まるかもしれないな。

『ユエ、その国の情報を、何処で開催されるのか調べてくれ』

 俺の天啓にユエが頷く。まぁ、ユエに頼むことでは無いのかもしれないけどさ、ユエが一番頼りになるからなぁ。


 にしても、これで一歩前進したかもしれないな。

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