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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
578/999

7-12 祝賀会と祝辞と

―1―


 それから数日後、本社の自室でごろごろと芋虫スタイルを堪能していると、ポンちゃんがやって来た。

「オーナー、明日おこなうぜ。祝辞は考えてるよな?」

 祝辞? 何のことだろう。まぁ、なるようになるだろう。ごろごろー。


 よく分からぬまま翌日となり、14型が迎えに来る。

「マスター、下々の準備が終わったようです」

 下々って、凄いことを言うなぁ。まぁ、いいや。とりあえず会場に向かいますか。


 俺専用のベッドからぴょんと飛び降りる。そのまま14型の案内で中庭へ向かう。途中、ふらふらと飛んでいた羽猫がやって来て、いつものように俺の頭の上に乗っかる。こいつもさ、最近は外出が多いけどさ、どこをほっつき歩いているんだか。不良猫ですな!


 中庭には円形のテーブルが所狭しと並べられ、本社のほぼ全てと思われる人員が集まっていた。


 円形のテーブルの先には少し高くなった台が有り、その上にファットの兄貴とユエがいた。おー、ユエじゃん、久しぶりだな。と、ユエが何か布きれを抱えているな。何だろう。


「オーナー、どうぞ、こちらへ」

 梟顔のメイシンが俺を台の上へと案内する。あれ? 今、昼前なのに起きているのか。メイシンさんって確か夜型だったような……。それだけ重要な会ってコトか。


 台の前では俺を待ち構えるように鬼人族の受付さんがいた。

「オーナーも来られたので始めます。それでは、これよりユエ、ファット夫婦の出産祝いと、前半の年を終える祝いを始める」

 おー、おー、大柄だけあって声が良く通るなぁ。鬼人族は司会向きだよね。って、うん? ちょっと待て、今、何て言った?


「オーナー、祝辞をお願いします」

 鬼人族のお姉さんに連れられて台の上に上がる。いや、あの、調子に乗って台に上がったけどさ、いやいや、俺、聞いてないんですけど。初耳なんですけどー。ど、ど、ど、どういうことだ?

 ファットとユエが夫婦? しかも出産祝い? 何ソレ、初耳です。


 おろおろしている俺をファットが豹のような頭に皮肉気な笑いを浮かべながら見ていた。おまえ、余裕だなー。


 ちっ、しゃーねーなー。本番に強い俺の実力を見せてやるぜ。




―2―


『皆のお陰でノアルジ商会も無事に前半の年を終える事が出来た』

 ま、間違っていないよな? さっき、受付のお姉さんが前半の年を終える祝いって言っていたもんな。


『そんな中、ファット、ユエのノアルジ商会にとって無くてはならない2人に新しい命が生まれたことは大変喜ばしいことである』

 俺は知らなかったけどね。知らなかったけどね! オーナーに教えないとか酷くないか。俺ってば嫌われているのか。あー、だから、ファットが居たのか、とかさ、今更気付いちゃったじゃん。タクワンが来ていたのだって、この準備のためだろうしさ。


『これからのノアルジ商会の発展を願って、乾杯!』

 俺が最後の天啓を飛ばすと、場が静まりかえった。えーっと、俺、何か失敗した?


 何故か鬼人族の受付さんが近寄ってきた。

「あの、オーナー、かんぱいとは何でしょう」

 アレ? 通じていない? いやいや、乾杯は乾杯だろ。この世界でも単語としてあるはずだよ。


 ……。


 となると異能言語理解スキルの翻訳がおかしくなったのか? 前後の文脈とかで違う意味として翻訳しているとか、うーむ。この世界の言葉を知らないってのは今更ながらにダメダメだなぁ。いざって時にちゃんと翻訳されているか不安でしょうがないもん。


 今度、この世界の言葉も習ってみるかなぁ。でも、今更学習するのも少し面倒な気がする……。


『と、とりあえずおめでとう、だ』

 そう、おめでとうなのだった。


 俺の天啓が引き金と鳴って皆々が歓声を上げ食事を始める。好きな料理を食べ、水を飲み、談笑する。えーっと、ユエとファットからの言葉とかはないのか。


 俺はとりあえず台の上に立っているユエとファットの元へと歩いて行く。

『おめでとう』

「オーナー、ありがとうございます」

 ユエが大事そうに抱えている布をのぞき込み、微笑んでから、お辞儀する。ファットは照れくさそうに頬を掻いていた。で、だ。


『自分は2人のことを今日知ったわけだが』

 そうなのだ。


 俺の天啓にユエの笑顔が凍り付く。頬を掻いていたファットの手も止まる。

「まさか、言っていなかったの?」

「い、いや、てっきり知っているものだと……」

 ファットがユエに怒られていた。えーっと、すでに尻に敷かれていますね。


『まぁ、良いのだ。改めておめでとう。ところで子どもを見せて貰っても良いだろうか?』

 そうそう、2人の子どもなんだよな?


「はい、オーナー」

 ユエが少しだけかがみ込み、布をほどくと中には小さな子猫のような赤子が2人居た。

『双子か』

「ええ、男の子と女の子です」

 赤ちゃんの時だと、人よりも動物に近いんだな。黒と白、ホント、子猫みたい。


『名前は決まっているのか?』

「俺様がカッコイイ名前をこれから考えるに決まってるじゃねえかよ」

 そこでファットが口を挟んできた。あー、ファットの兄貴らしいな。にしても、こいつが親か、親かぁ。大丈夫なのか? ユエはしっかりしているけどさ、ファットって、ファットだぜ? いや、でも海賊の親分をしていたくらいだから、大丈夫か。


 にしても、うちで働いていたユエが出産かぁ。何だか、凄い年月が経った気がします。


「さ、俺らも飯を食おうぜ。今回は特別な料理があるってことだからな!」

 はいはい。タクワンが作ったケーキは君ら2人のためだろうしな。存分に食べたまえ。

2016年8月24日修正

異界言語知識 → 異能言語理解

ワンタン → タクワン

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