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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
574/999

7-8  政治的な裏取引

―1―


 ポンちゃんたちが屋敷の中へと消えていく。まぁ、何だ、これで大丈夫かな。


 にしてもエミリアは出てこないし、ゼーレ卿の姿も見えないし、どうなっているんだ? ゼーレ卿は王宮とかなのかな?


 屋敷の外で待っていると、執事が慌てた様子でやって来た。何度も頭を下げる執事の案内で屋敷の中へと通される。


 案内された客間には退屈そうな紫炎の魔女とステラ、シロネの姿があった。あのー、シロネ先生は呼んでないんですけどー。

「エミリアの姿が見えないようだが?」

 待っている3人に聞いてみる。紫炎の魔女は肩を竦め、ステラは首を傾げ、シロネは俺の姿を見て驚いていた。


「ノアルジー様、申し訳ありません。お嬢様は、今、旦那様をお呼びしている所です」

 執事の人が答えてくれた。ふむ。何だろう、エミリアが家に手紙を送って連絡しておくと言っていたが、何かの手違いがあったのか?


 まぁ、それよりも、だ。まずは料理をしないとな。紫炎の魔女なんか待ちくたびれて恐ろしい形相でこちらを見ているからな。

「すまない、調理場に案内して貰っても良いか? うちの料理人たちに道具を渡したい」


 執事の人の案内でポンちゃんたちが待っている調理場へと移動する。


 調理場の中ではポンちゃんがうんざりとした顔で待ちくたびれていた。

「オーナー、待ってたぜ」

 お、おう、待たせたな。

「こんな状態だ。こいつらの道具を使う気にもなれないじゃんかよ。進まない、進まないじゃんかよ」

 すまないねぇ。


 14型に持たせていた道具類や食材で時間がかかる物は最初に作ってしまっているようだが、そこで作業が止まってしまっているようだ。


 魔法のリュックと魔法のウェストポーチXLから食材と調理道具を取り出し、ポンちゃんたちに渡す。

「任せた」

 俺の言葉にポンちゃんが手を挙げて応える。しかしまぁ、これだけ面倒なことになるなら、姫さまの屋敷でやった方が良かったのかなぁ。




―2―


 客室に戻り、ソファに座ってくつろいでいると豪華な髪型のエミリアがやって来た。

「遅れてしまい申し訳ありません」

 その顔は暗い。

「父様は王宮での事後処理に追われ、私の手紙を読んでいなかったようですの……」

 あー、うん。そっかー。で、急いで連絡を取っていたというワケか。


「よいよい」

 それでも何故か姫さまは上機嫌だ。姫さまの問題でゼーレ卿が残業しているような状態だと思うんだけどなぁ。


「もうすぐ父様は来ると思いますの……。申し訳ありません、もう少しお待ちください」

 豪華な髪型のエミリアは姫さまの前で膝をついて、そう言った。まぁ、料理にも時間がかかるし、ちょうどいいんでない。待ちきれなさそうな紫炎の魔女っていう大人子どもはいるけどさ。


「む」

 何故か、紫炎の魔女がこちらを睨んだ。いやいや、俺は何も言っていないからな。


 むふー、むふーと落ち着きなくキョロキョロと室内を見回しているシロネを観察していると、やがてゼーレ卿がやって来た。


「遅くなりました」

 ゼーレ卿が姫さまの前で小さくお辞儀をする。

「よいよい」

 姫さまはご機嫌だ。あれ? 前回の俺の時は跪いていたのに、姫さまには立ったままなんだな。うーん、ゼーレ卿の立ち位置がイマイチ分かんないな。


 ゼーレ卿が戻ってきたことで、客室から食堂へと移動する。俺たちが食堂に入るとすでに料理は用意されていた。おー、タイミングが良いな。ちゃんと熱々じゃないか。


「旦那様、その料理は……」

 ゼーレ卿の傍らに控えていた執事の人がゼーレ卿に何やら耳打ちしている。むむ。余り楽しくない内容だな。


 ゼーレ卿は執事の言葉を聞いて、すぐに姫さまの方を向く。そして、それを迎え撃つように姫さまが胸を張る。

「なるほど、そういうことですか」

 ゼーレ卿がぽつりと呟く。


 そして、何故か俺の方へと向き直り、弱々しく微笑んだ。

「この場を用意したのは、あなたと聞きました。ふぅ、セシリア姫の陣営は随分と優秀な方が多いようだ」

 うん? どういうこと? ま、まぁ、俺は優秀だけどな。


 ゼーレ卿がゆっくりと料理が並べられた机の前へと歩いて行く。そして、一つの皿を手に取った。おー、アレはショートケーキか? ショートケーキぽいよな。白い表層に、切り分けられた内側から見えるのはまごう事なき黄色いスポンジ! イチゴは乗ってないけど、スポンジケーキじゃん!


「旦那様!」

 執事が悲鳴を上げる中、ゼーレ卿は、そのショートケーキを口の中に入れた。

「美味い」

 そして、蕩けそうな極上の笑顔を作る。いや、あの、俺も食べたいんですけど……。ほら、紫炎の魔女さんなんて待ちきれなくてゼーレ卿を燃やしそうな勢いじゃん。


 ショートケーキを堪能したゼーレ卿は、再度、姫さまへと振り返る。そして、膝をついた。

「ゼーレ家はセシリア姫の傘下へ入ります」

 胸を張っていた姫さまはゼーレ卿の言葉に満足そうに頷いていた。

「うむ、なのじゃ」

 なんだか、よく分からないが、これで良かったのか?


 そして、お食事会が始まった。紫炎の魔女は甘味を大量に摂取し、大満足のご様子だ。シロネは周囲の権力者から隠れるようにちびちびと果実酒を飲んで楽しんでいた。ステラは何やら難しい顔で食事をしている。


 姫さまと赤騎士、青騎士の3人はゼーレ卿とともに食事をしながら、何やら難しい話をしている。


 俺は、久しぶりの甘味に舌鼓を打っていた。うん、うまい。これはさ、タクワンを是非、うちの商会で雇わないとなぁ。

2016年8月20日修正

姫さまと赤騎士、青騎士の2人は → 姫さまと赤騎士、青騎士の3人は

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