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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
7  二つの塔攻略
572/999

7-6  うらのとりひき

―1―


「ほほう!」

 俺は、感嘆の声を上げる少女の目の前に、うっすらと黒く輝く金属の塊を積み上げていく。

「お納めください」

「うむ!」

 目の前の少女が積まれた金属の塊を手に取り、誰にも渡すまいとでも言わんばかりに抱え込む。

「虫、良くやった」

 いや、だから、俺は虫じゃねえって。そう、俺の――俺が作り出した分身体の目の前にいるのは紫炎の魔女だ。そして、ここは学院の教員用個室。そこで俺と紫炎の魔女は悪巧みをしているって寸法さ!


「食べ物」

 そして、紫炎の魔女は、一言、そう呟いた。あー、そういえば食事も用意するって言っていたな。


 あー、うー、うむ。どうしよう。


「帝都の俺の本社まで飯を食べに来るか?」

「無理」

 分身体の言葉に紫炎の魔女は首を横に振る。いやいや、《転移》スキルを使うから一瞬だって、そんな時間を取らせないぜ。


「俺の移動用のスキルを使うから一瞬だぜ」

 紫炎の魔女は移動用のスキルという、俺の言葉に興味を惹かれたようだが、それでも首を横に振る。


「ステラ」

 紫炎の魔女は一言、そう呟いた。むぅ。ステラがいるからダメってコトか?


「ステラも一緒に来ればいい」

 分身体の言葉に紫炎の魔女はため息を吐く。


『だから、無理だと言っておろうが。私はステラの保護を頼まれている。約束を破るわけにはいかぬ。半魔族のステラを、何処に狂信者がいるかもわからない帝国の、それも帝都に連れて行けるか。場所は、ラン・ノアルジー、お前が、この神聖国に用意しろ。約束は守れ』

 紫炎の魔女が念話で話しかけてきた。いやぁ、無駄に偉そうですね……。というかだね、それだけ喋れるならさ、最初から念話で話せっての!


 まぁ、でもさ、紫炎の魔女には今回、かなり働いて貰ったしなぁ。


 むむむ。




―2―


「というわけですの」

「な、何がというわけですの! もう、いきなり何なんですの!」

 俺が分身体を使って話しかけるとエミリアは非常に驚いていた。いや、だからね。


「今週の闇の日――外出日にエミリアの屋敷を使って、前回と同じように料理を振る舞いたいんですのー」

「そのとってつけたような言葉使いは止めてくださいまし」

 だめですのー。まぁ、ダメなら姫さまの別荘を使うしかないか。一度使っている分、エミリアの屋敷の方が、ポンちゃんたちも使いやすいかなぁって思ったくらいだしね。


 豪華な髪型の少女は大きなため息を吐く。


「もう、分かりましたわ。用意はこちらで致します。で! 誰が来るんですの?」

 えーっと、うちの商会の料理人だろ? それに紫炎の魔女と弟子のステラか。まぁ、シロネはどうでもいいな。姫さまたちを呼ぶのも……いや、面白そうだから呼んでおくか。


「多分、だが、うちの料理人たち、ソフィア、ステラ、セシリアとその護衛騎士2人かな」

 分身体の言葉に豪華な髪型の少女は天井を見て泡を吹きかけていた。蟹さんの物まねかな?


「何なんですの! そ、ソフィア様って紫炎の魔女様ですの? それに第三王女様まで……本当に本人なんですの?」

 本人たちだと思いまーす。


「分かりましたわ。ノアルジーさんがアレなのは今に始まったことでは無かったですものね……」

 いやいや、アレって酷いな。アレって、何だよ。


「またお父様に手紙を書かないと……」

 豪華な髪型のエミリアさんは心ここにあらずと言った感じでぶつぶつ呟きながら、何処かへ消えていった。


 あのー、今から授業ですよー。


 うーむ。紫炎の魔女も姫さまも近くにいると天然系、お馬鹿系、ゆるキャラ系なんだけどなぁ。やはり肩書きが重いんだろうか。


 ま、俺には関係無いことだな!




―3―


 《変身》した俺はまず《転移》スキルで本社に戻った。


「マスター、お帰りなさいませ」

 本社に戻ったところで、すぐに現れた14型にポンちゃんを呼ぶように頼む。そして、そのまま会議室で待つ。


「オーナー、どうしたよ」

 しばらくするとポンちゃんがやって来た。


「いや、神国で料理を作って貰いたいんだが、大丈夫か?」

 俺の言葉を聞いたポンちゃんが吹き出した。


「オーナー、似たようなやり取りをやらなかったか?」

 お、おう。そういえば、前回と同じ流れだな。で、ポンちゃんどうよ。


「オーナー、しかしよぉ、それはもうちょっと早く言って欲しかったな」

 むむ?

「俺は問題ない。が、よ。動かせる普人族の料理人がいないんだよ。殆ど猫人族ばかりだ。神国で大丈夫か?」

 むむむ。マジかー。神国は普人族以外はコロコロしちゃうような国だろう。せめて森人族なら人族として認められているらしいんだが、うーむ。


 事前に言っておかなかった俺が悪いんだろうけどさ、学院から脱出するのって難しいからなぁ。やっぱりさ、メールとか電話みたいな距離が離れていてもやり取りできる仕組みが欲しいなぁ。


 ホント、何とかならないんだろうか。


 しかし、困ったな。

2016年8月18日修正

豪華な髪型のノアルジーさん → 豪華な髪型のエミリアさん

2017年1月3日修正

人族として認められているらしんだが → 人族として認められているらしいんだが

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