表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
560/999

6-98 セシリー救出

―1―


『真紅妃!』

 俺は真紅妃を呼び寄せる。俺の言葉に応えたのか、しばらく待っていると空から1本の槍が飛んでくる。そして、俺の目の前に突き刺さる。それは、まるで呼ぶのが遅いと怒っているかのようだった。

 サイドアーム・アマラで真紅妃を握る。さあて、では王宮クリスタルパレスに向かいますかッ!


『ソフィア、準備は?』

「誰に」

 はいはい、誰にモノを言っているって言いたいのな。分かった、分かった。


『エミリオ、頼む』

「にゃー!」

 小さくなって羽を休めていた羽猫が再び大きく、羽虎となる。そして、それに俺と紫炎の魔女が乗る。座る関係上、俺はぬいぐるみみたいに紫炎の魔女に抱きかかえられた状態だ。むぅ、ちょっと扱いが酷い気がする。


「では、お姉様、ご武運を!」

 シリアがいつもの自分の飛竜ではなく、カーの飛竜で学院へと飛ぶ。

『ああ、先に行って待っているぞ』


 羽虎が空へと舞い上がる。そして、そのまま王宮クリスタルパレスへと飛ぶ。


 霧深い島の上空、無数の飛竜が飛び交う空を進み、やがて霧の中から頭1つ抜けだし太陽の光を反射して輝く城が見えてくる。

『そのまま突っ込め!』

 羽虎が王宮の前へと降り立つ。


 そして、すぐに衛兵に取り囲まれた。

「何者だ!」

 衛兵の言葉を無視して紫炎の魔女が羽虎の上から俺を投げ飛ばし、優雅に降りる。おま、お前、俺がべちゃぁってべちゃってなるところだったじゃないかッ!


「ウルスラを呼べ」

 紫炎の魔女の言葉を聞いても衛兵は動かない。彼女は、格好つけて言ったのに、誰も反応しないことに、少しだけ不安そうな顔を見せていた。


「ここ、の! 一番偉いのを呼べ! 紫炎の魔女が来た」

 そんな俺たちの様子に衛兵たちは俺たちを取り囲んだまま、困ったようにひそひそと話していた。


「紫炎の魔女? 本物か?」

「あの隣に居る槍を持ったのはなんだ?」

「急な来訪過ぎる」


 えーっと、これ、失敗したかなぁ。紫炎の魔女が自分は偉いから大丈夫だって言っていたけどさ、これ、どうなんだ? うーむ。紫炎の魔女はしびれを切らしたかのように「燃やすか」とか呟いているしさ。お前、名前だけ先行して、本人自身が知られてないじゃん。


「この騒ぎは何だ?」

 しばらく衛兵たちとにらみ合っていると、その奥からきらびやかな鎧とマントを着けた騎士がやって来た。おー、よく分からないお偉いさんぽい若騎士じゃん。


「いえ、それが紫炎の魔女を名乗る者が、やって来て、偉い者を呼べ、と」

 衛兵の一人が困ったように説明していた。


「ウルスラはどうなっている?」

 話が分かる者が来たと思ったのか紫炎の魔女が話しかけていた。それを聞いた若騎士はすぐに表情を変えた。

「それを……何処で。ここでは不味い、こちらに来て貰おう」

 うーむ、俺、置いてけぼり。俺は姫さまを助けに来ただけでウルスラさんには興味が無いんだけどなぁ。




―2―


 何故か王宮の中にある少し豪華な部屋に案内された。あ、途中でお前は控えの間に居ろって言われましたけど、無理矢理ついて行きました。


「ウルスラ殿下をご存じとは……本当に紫炎の魔女か?」

 紫炎の魔女が頷く。

『お前は話が分かるようだ。ウルスラは何処に居る? あやつの管轄地に魔族が入り込んでいるのだ。怠慢だ』

 紫炎の魔女の念話を受け、若騎士は大きなため息を吐いた。

「ウルスラ殿下は眠っておいでです」

「ならたたき起こせ」

 紫炎の魔女の言葉は乱暴だ。しかし、若騎士は首を横に振る。


「あなたは国を追放されご存じないのでしょうが、ウルスラ殿下は、もう10年以上も眠ったまま起きられていないのです」

「な、なんだと」

 10年も眠ったままとか、良く生きているな。


「今は誰が?」

 若騎士は、それに対しても首を横に振る。


「ゲオルギオス王が代理で行っていましたが、心労で倒れられ、今は、その第一王子が」

「無能」

 紫炎の魔女の言葉は冷たい。そりゃまぁ、魔族に侵入されてしまっているんだから、そうか。でも、もうちょっと言い方もあるよな。


「追放された紫炎の魔女、今回の訪問はどういった理由でしょうか?」

 そして若騎士は本題に入った。

「追放と違う、出て行きたくなっただけ」

 あ、そこは訂正するんだね。いや、そうじゃなくて、理由を言ってあげて下さい。それが俺の目的なんだからな。


「第三王女の解放だ」

 若騎士は苦い顔で首を横に振る。

「出来ません。セシリア姫さまはバレンタイン王子の手によって幽閉されています。もし、王子の許可が下りたとしても、その鍵を今は女神教団が持っている為、すぐの解放は出来ません」

 紫炎の魔女が俺の渡していた鈴を取り出す。

「鍵」

 それを見た若騎士は驚き、口を開ける。

「そ、それは……。分かりました。後はお任せします」

 若騎士は疲れ切ったかのように頭を下げていた。


 さ、これで解放だ。いやぁ、アオがお馬鹿さんで助かったぜ。




―3―


 紫炎の魔女とともに姫さまが幽閉されている尖塔へと向かう。空中に架けられた階段を上がり部屋の中へと入る。

 そこでは前回と同じようにスーが座り込み、その奥でセシリア姫が寝そべっていた。いや、あのさ、随分と楽な暮らしをしているな。


「む、ランか」

 俺に気付いたのか座り込んでいたスーが立ち上がる。

『待たせたな』

 俺の天啓を受け、スーがニヤリと笑う。


 紫炎の魔女が部屋の境界に立ち、鈴を鳴らすと何かの結界が消えたようだ。


「ランなのじゃー」

 姫さまがベッドから飛び降り、そのまま結界の外、こちら側へと駆けてくる。おうさ、姫さんの友人のランだぜー。


 そして、結界の外に出た姫さまはすぐに紫炎の魔女へと向き直った。

「ソフィアさまもお帰りなさいませ」

 そして、綺麗にお辞儀をする。それを当然とばかりに紫炎の魔女が胸をはって答える。あ、えーっと、紫炎の魔女が偉いって本当だったのか。


「うむ。急ぎで悪いが手伝え」

 いや、ホント、無駄に偉そうだな。


「ご命令とあれば」

 姫さまが頷く。


「ラン、行くのじゃー」

 こうしてみると二人とも、性格とか容姿とか似ているな。まぁ、紫炎の魔女の方が無駄に偉そうだけどさ。


 姫さま、スー、紫炎の魔女、羽猫とともに八大迷宮『空中庭園』のある中庭へと向かう。何を目的としているか分からないが、魔族のアオたちはすでに、この中に侵入しているはずだ。追いついて野望を挫かないとな!


「ノアルジーお姉様!」

 中庭にはすでにシリアとカーに14型、そして、何故かシロネとステラの姿もあった。

「マスター、お待ちしておりました」

 14型がシリアを撥ね除け、前に出て優雅に挨拶する。すると、すぐにシリアも14型を撥ね除け前へ出ようとする。そこで二人がぶつかった。何故かにらみ合っている。いや、あのね、お前さん方、今はそういうことをしている場合では……。


「ノアルジーお姉様、救出成功されたのですね!」

 14型と争いながらシリアがそんなことを言っている。あ、ああ。


「行かせませんよ!」

 と、俺たちが騒ぎすぎたからか、そこで騎士たちを連れたバレンタイン王子が現れた。あー、ちゃんと王子も居たのか。今頃出てきたのは騎士を集めていたからかな。

「お前たち、姉様たちを取り押さえるのだ!」

 王子の命令で騎士たちが槍と剣を構える。


 それを見た紫炎の魔女が腕を伸ばす。そこには紫に燃える腕輪があった。いや、お前、何をしようとしているの、不味いって。

「やれやれ、これはよー」

 と、そこでスーが剣を抜き放ち、一歩前に出る。

「スー、腕がなまっているんじゃないか?」

 青騎士のカーも剣を抜き、前に出る。

「ぬかせ。姫さん、ここは俺たちに任せてくれ。ちょっと若いヤツらに騎士の心得を教えてやるからさ」

「スーも若いじゃないか」

 青騎士の言葉に赤騎士は苦笑していた。


「任せたのじゃ!」

 姫さまの言葉に二人は笑って頷く。そうだな。ここは二人に任せる場面だろう。


 じゃ、俺らは迷宮へ、『空中庭園』へ向かいますか!

2016年8月6日修正

無理矢理ついてきました。 → 無理矢理ついて行きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ