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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
552/999

6-90 もしやもしや

―1―


「もう、遅いですわ!」

 分身体を動かし、魔法試験などが行われるかなり広めの講堂に入ると、すぐに豪華な髪型の少女から声がかけられた。えーっと、エミリアさん、いつもいつも、すぐに俺を見つけて絡んできますね。


「今日も前の席を取っておきましたわ!」

 あ、はい。そういえば、この子は紫炎の魔女大好きっ子だったな。そりゃあ、一番前で見たいか。

 すでに殆どの学生が座っている講堂をエミリアに引っ張られて進み、一番前の、一番良い場所に座らせられる。

「後から来て、こんな前の席に座るなんて顰蹙を買わないか?」

 そう思うよな。だって、悪いじゃん。


 分身体の言葉に豪華な髪型の少女はため息を吐いていた。

「もう! 皆がノアルジーさま(・・)の為に席を空けていたんですから!」

 えーっと、最近のこの子はもうもう、牛さんみたいですね。

「そ、そうか」

 まぁ、それなら遠慮無く座るか。分身体を一番良い席に座らせると、その隣に豪華な髪型の少女も座った。


 そうして広めの講堂に、ほぼ全ての学院の生徒が集まり、大人しく座って待っていると、舞台の上に木の枝のように尖った耳を持つ銀髪の女性が現れた。そして、その後を続くように教師陣が現れ、シロネを中央に残して壁際へと動く。

「むふー。皆、集まりましたねー」

 シロネが司会進行なのか。紫炎の魔女と知り合いみたいなコトを言っていたような気がするから、その関係なのかな。

「むふー。それで、では……」

 シロネは一番前に座っている分身体の姿を確認して一瞬言葉を詰まらせていた。シロネは何やら色々と喋りながらもこちらをちらちらと見ている。何だろう、そのさ、むすっと興味ないですよーって顔をしながら、こちらの様子をちらちらと覗っている様子はジョアンを思い起こさせるな。小動物系?


「ノアルジーさん、紫炎の魔女さまですわ!」

 物思いにふけって分身体を放置していた俺だったが、エミリアの言葉で慌てて分身体の操作に戻る。


 講堂の舞台の上に気怠そうなちっこい少女と、その後ろに隠れたおどおどとした少しふっくらした少女が現れた。


 ん?


 あれ?


 先頭を歩いているちっこいの、何処かで見た覚えが……。


 いや、アレ? うん? アレって、ナハン大森林の冒険者ギルドにいた物知りなちびっ娘じゃないか? 凄い似ているよな。


 何だ、何だ? どういうことだ?


 俺が考えている間もちびっ娘たちは舞台の上を進み、その中央に立った。


「エミリア、アレが紫炎の魔女か?」

 分身体の言葉にエミリアがため息を吐く。

「もう! ノアルジーさん、アレって! ここからだと紫炎の魔女さまに聞こえてしまいますわ!」

 いやいや、エミリアさん、君の声の方が大きいからね。って、その言い方だと間違いなさそうか。


「聞こえた」

 ちびっ娘がぽつりと呟いていた。

「し、し……師匠?」

 その後ろで少し標準よりはふんわりとした少女が怯えていた。うーむ。分身体ではなくノアルジ形態なら赤い瞳で鑑定するんだけどなぁ。どー見てもギルドのちびっ娘だな。なんでギルドのちびっ娘が紫炎の魔女をやっているんだ?


 よく分からない。




―2―


「ソフィアちゃん先生、自己紹介をお願いします」

 シロネがちびっ娘に話しかけていた。

「ソフィアだ」

 ちびっ娘の自己紹介はそれで終わった。えーっと、何だ、ソレ。


 ちびっ娘は気怠そうにしている。シロネはやれやれとでも言いたそうな感じのあきらめ顔だ。も、もしかして面倒臭いから、それで終わらせたのか。

「むふー。ステラちゃんも自己紹介を」

 シロネに言われ、おどおどとした少しだけふんわりな少女がちびっ娘の影から前に出る。


「ステラ……です。師匠の弟子をしています……」

 ステラ、ステラ……。何処かで聞いたことが、あるような。


 ……。


 って、自己紹介、これで終わりかよ! 何だ、何コレ。司会進行を行っているシロネもどうしたら良いのか、おろおろしているじゃねえかよ。何だ、コレ。


 おろおろしているシロネを横目に、ちびっ娘が小さくため息を吐き、口を開いた。

「学院のレベルを見たい。そこのこっちへ」

 ちびっ娘がこちらを指差す。

「エミリア、ご指名だ」

 分身体の言葉にエミリアは飛び跳ねるように席を立った。

「で、で、では、私が……」

 しかし、ちびっ娘は首を横に振る。


「違う、その隣」

 そのちびっ娘の言葉を聞いて、エミリアは傍目にも分かるくらいにがっかりした様子で着席した。えーっと、俺、俺? いやいや、エミリアさんに譲りますよー。


「ノアルジーさん、早く、むふー、早くお願いします」

 なかなか動こうとしない分身体にしびれを切らしたのか、シロネが俺を名指しで呼びつける。ふむ。やれやれ、仕方ないなぁ。




―3―


 講堂の舞台の上、ちびっ娘のたちの前に立つ。で、どうすればいいんだ?


 ちびっ娘が口を開く。

「一番、得意な魔法を」

 使え、か。


 一番得意って言うとアクアポンドの魔法かな? でも、アレをここで使うのは、なぁ。それ以外だとアイスランスとか、アイスウォールとかアイスストームとか? うーん、それらを使うのも微妙な気がする。

 分身体だと以前と同じ水、風、金、闇しか使えないからなぁ。もちろん上位化なんて出来ないし、そう考えると使える魔法が限られるな。

 ここでサモンアクアとかを使ったら大顰蹙だろうし……むむむ。


――[ウォーターボール]――

――[アシッドボール]――

――[シャドウボール]――


 3つの球体を浮かばせる。これで、どうでしょ?


「むぅ」

 俺が浮かばせた3つの球体を見てちびっ娘は何やらうねっていた。お、意外と好感触?


「この程度?」

 むむ。これはちびっ娘の挑発か? 仕方ないなぁ、じゃあ、ちょっくら挑発に乗ってあげますか。


「3日だ。3日後また見て欲しい。その時、本当の実力をお見せしますよ」

 指を3本立ててびしっと突きつける。それを見たシロネが大きなため息を吐いていた。


「分かった」

 ちびっ娘はこくりと頷いていた。ふぁふぁふぁ、どうかね!


「はい、では今日はこれで解散です」

 壁際にいた女教師が座っている生徒たちに、そう声をかけていた。へ?


 で、えーっと、これで紫炎の魔女の顔見せ、終わり?


 ……。


 いったい何だったんだー!

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