6-83 料理を作ろう
―1―
俺、もう帰ってもいいよな。後は、ここの騎士たちが上手くやってくれるでしょう。
「帰ってもいいよな?」
俺はとりあえず、この騎士たちの中で一番偉そうな若騎士に聞いてみた。
「あ、ああ。今回の件はすまなかった。いや、それで済む問題ではないが……」
ま、俺的にはどうでもいいかな。若騎士が言っているように謝られて済む問題じゃないけどさ、そこまで大変でもなかったから別にいいんだぜ。
「バレンタイン様の近衛騎士であるウースターの言葉、行動、女神騎士団……。一部の騎士しかセシリア姫の現状を知らないが、私たちはもう一度考え直す必要があるのかもしれない」
そうか。セシリーの現状は全員の騎士が知っていることじゃないのか。まぁ、これで少しは味方が増えたらいいな。
「では、俺は魔法学院に帰るよ」
俺の言葉に若騎士が驚く。
「き、君は魔法学院の生徒なのか? 騎士の方では、無く?」
うむす。俺がこくりと頷くと、若騎士は更に驚いているようだった。
「た、確かに、先程のキュアライトの魔法は見事だった。最近の魔法学院の生徒は凄いな……」
いやいや、魔法学院に入ってみて思ったけどさ、結構、レベルが低いと思うよ。
「良ければ飛竜で送ろう」
いや、《転移》で帰るから必要ないっす。
俺はそのまま手の平をふりふりして騎士たちの間から立ち去る。さあ、色々あったけど、帰ろう。これで騎士団も少しはまともになるんだろうか? まぁ、セシリーが戻ってきた時には大分、やりやすくなっているんじゃないかな。
となると、次は女神教団を(特にアオをなんとかするのと)鍵の捜索か。現状、女神教団にちょっかいをかけるのは難しそうだから、俺は鍵の捜索に専念するかな。姫さまと会えた時にヒントが貰えていればなぁ。まぁ、でもさ、あの時は王子たちも居たからな、下手に王子たち側へ情報を渡すのも不味いか。
よし、では寮に戻ろう。
俺は、14型、羽猫と共に我が物顔で王宮を歩き、そのまま外に出る。のっし、のっし。では、《転移》しますかね。ああ、そうだ。今回も貴重な《変身》なのにさ、無駄な時間を取られたから、残りの時間を有効活用する為にも本社に一度戻るのも有りか?
……いや、途中で効果が切れると寮に戻るのが大変になるし、寮で時間を潰すか。はぁ、勿体ないなぁ。
―2―
禁書庫を探索しようと思っていた次の週、何故か豪華な髪型の少女、エミリアの家に行くことになっていた。ま、まぁ、王子からは半年の猶予を貰っているから時間的余裕はあるし、うん、まぁ、なんとかなるか。
それに、この豪華な髪型の少女のところに行くのはちょっとした頼み事を兼ねてだしね。
《変身》した俺はまず《転移》スキルで本社に戻った。
本社に戻り受付に居た鬼人族の大柄なお姉さんにポンちゃんを呼ぶように頼む。そして、そのまま、会議室で待つ。
「オーナー、どうしたよ」
しばらくするとポンちゃんがやって来た。
「いや、神国で料理を作って貰いたいんだが、大丈夫か?」
俺の言葉を聞いたポンちゃんの頭の上にはてなマークが浮かんでいた。いや、まぁ、言葉通りの意味です。
「現在、今すぐ動かせる料理人は何人いる?」
ポンちゃんが指を動かす。
「俺と、メシド、それと手伝いに何人か、だな」
ふむ。《転移》スキルの人員の関係もあるから、4、5人運べばいいか。
「料理の食材、調理道具、必要な物をすぐに用意してくれ。今から神国に飛び、すぐに料理開始だ」
「お、オーナー、ま、まさか。あの、山岳都市から一気に帝都へ戻ったのをやるのか?」
俺が頷くとポンちゃんは頭を抱えて座り込んだ。大丈夫、大丈夫、問題ないって。それに現地ではエミリアに飛竜を用意して貰っているから、飛ぶのは学院近くまでだしさ。
「時間が無い。頼む」
俺が頼むと、ポンちゃんはよろよろと立ち上がり、青くなりながらも会議室の外へと歩き始めた。
「では、食材を魔法の袋に入れるため、俺も食堂に行こう」
―3―
食材を集め、調理器具と共に魔法のウェストポーチXLに入れる。もちろん、何個かは料理人たち自身で持って貰う。いくら、魔法のウェストポーチXLが万能でも入れられる個数には限界があるからな。
そして、集まって貰った料理人たちとパーティを組む。
ポンちゃんが、
「お前ら、気をしっかり持てよ、高い所が苦手なヤツは俺がいいって言うまで、何があっても目を開けるな!」
なんて言っていた。そんなに《転移》がトラウマになっているのか……。まぁ、途中で気絶していたもんな。
準備が終わり、《転移》スキルで学院の裏まで飛ぶ。その後、14型、羽猫と合流する。
14型が用意して待っていた飛竜馬車に乗り、島の入り口まで進む。すると、そこには豪華な髪型の少女が4騎の飛竜を用意して待っていた。
「の、ノアルジーさん、その方々が料理人ですの?」
何故か、少し驚いているようだ。あー、そういえば従者は一人までって決まりがあったか。何て誤魔化そう。いや、でもさ、さっき、衛兵さんは普通に通してくれたよな? うーん、まぁ、考えず、そのまま押し通そう。説明しなければ、エミリアが勝手に何か理由を思いついて、勝手に納得してくれるだろう。
「ああ、そうだ。飛竜の用意をありがとう」
「いいんですのよ、これくらいゼーレ家の力を持ってすれば簡単ですわ」
豪華な髪型の少女は何やら楽しそうだ。
そのまま豪華な髪型の少女が用意した飛竜に乗り込み、首都ミストアバンに降り立つ。そこからは彼女専用の飛竜馬車で家まで向かう。
うっすらと漂う霧の中を飛竜馬車が進む。
このエミリアは領地を持っている領主なのかと思ったけど、王宮に仕える貴族なんだな。
「エミリアが住んでいる実家が首都にあるのか?」
俺が聞くと豪華な髪型の少女は不思議な生き物でも見るようにこちらを振り向いた。
「ゼーレ家を知らないんですの? いえ、そうですね。ノアルジーさんでしたわ」
何、その言い方。俺が物を知らない子どもみたいじゃないか。
「もちろん、実家の領地は、ここにはありませんわ。お父様が王宮に勤めているので、こちらにも家を持っているのですわ」
へぇ。貴族ってやっぱり領地持ちなんだな。
「領主が領地を離れていて問題ないんだろうか」
俺の言葉に豪華な髪型の少女がため息を吐く。
「お父様が王宮にいる間は、お父様の弟が領地を動かしていますもの、何の問題もありませんわ」
へー、そうなんだ。この世界の、この国の、貴族のありようとか実態とか良くわかんないしなぁ。そういう感じなのか。
「さあ、ノアルジーさん、もうすぐ家に着きますわ」
あ、はい。
霧の中、大きな庭を持った屋敷が見えてきた。お、おう。浮遊する島ってことで、土地が限られている首都でさ、かなり大きな家を持っているんだな。はー、確かに大貴族って感じだな。この場所は、多分、貴族の家が並ぶ貴族街なんだろうけどさ、他の家々と比べても飛び抜けて大きな屋敷だ。いやぁ、土地の無駄だな!




