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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
533/999

6-71 魔法試験開始

―1―


 火の日になり、試験が開始された。


 前半は魔法理論の発表、後半が実技の披露になるようだ。どちらも学院の生徒なら参加自由だが、両方不参加、または結果が残せなかった者は評価がマイナスとなり、最悪、退学になるそうだ。まぁ、それは聞いていた通りの内容だよな。


 魔法理論の発表と言っても、どういった内容を発表すればいいのか分からないので、俺は実技の披露に参加することにした。


 そうそう、魔法理論の発表は学院の生徒全員が見学出来るらしい。まぁ、この学院のレベルを見るって意味でも見学だけはしておくかな。


 魔法学院の中にある、かなり広い講堂に入る。講堂の中は円状になっており、中央が一段低くなった舞台になっていた。舞台はかなり大きくとってあり、簡易な魔法なら、その場でも使用出来そうだった。まるで闘技場だな。


 周囲を見回すと殆どの席が埋まっている。おや、結構、人が多いな。生徒の殆どが居るんじゃないか? もしかして、この発表の方が実技よりも評価が高いのかな?


 座る席を探し、空いていた後ろの方の席に座る。うーむ、ここからだと《遠視》が無かったら何をしているか分かんないよ。それに普通なら声も聞こえないか。うーん、早めに来て前の方の席を取るべきだったかなぁ。


 中央の舞台には10人ほどの生徒の姿と同じ数の教師の姿が見えた。おや、あの見覚えのある木の枝のように尖った耳に銀髪の姿の女性は――どう見てもシロネです。あー、やっぱりシロネって、あのシロネさんで間違いなかったんだなぁ。


 にしても普人族ばかりの中に、一人、森人族がいると凄い浮いているよな。神国に森人族が居て大丈夫なのか? 差別とか受けていないんだろうか。


 教師陣が一人を残して周囲に、観客席側に散らばる。


「これから、魔法具に魔力を込めて魔法防壁を張ります。危ないので舞台に近寄らないように」

 教師の言葉と共に舞台が透明な壁に覆われていく。ほー、そういう感じなんだ。って、もしかして実技もここで行うのか?


「探しましたわ!」

 俺が席に座って舞台を観察していると声がかけられた。


 そこに居たのは豪華な髪型のエミリアだった。今日もゴージャスで無駄に動きにくそうな服装ですね。

「そのような後ろの席では無く、私と同じように前にきなさい!」

 豪華な髪型の少女はそんなことを言っている。いえ、結構です。ここで充分見えますから。俺は目立ちたくないんだぜー。


「いいから、来なさい」

 俺が動かないで居ると豪華な髪型の少女は頬を膨らまして腕を上下に動かし始めた。

「もう、なんでですの!」

 えーっと、目立ちたくないから?


「あなたの席も取ってありますわ。早く来なさい」

 もうね、この子、なんで、そんなに俺に構うの? うーん、よく分からない。まぁ、でもさ、前の席でゆっくり見学出来るっていうのなら、お言葉に甘えますか。


 豪華な髪の少女の後をついて行き、最前線の席に座る。おー、ここだと迫力が違うなぁ。


「今日は新魔法の発表があると聞いて、皆が早くから集まっているんですの」

 豪華な髪型のエミリアさんが解説してくれる。ほー、へー。確かに新魔法って聞くと興味が湧くな。




―2―


 舞台に立っている学生の一人、おっとりとした無害そうな少女がお辞儀をする。そして、そのまま舞台の中央に立つ。

「火の個室持ち、フェンさまですわ」

 隣の豪華な髪型の少女が解説してくれる。

「私が最初に越えるべき方ですわ」

 そして、何故か闘志をメラメラと燃やしていた。あ、そうなんだ。


 舞台のおっとり少女が話を始める。


「……魔法の詠唱は、誰が、または誰を、呼びかける属性、効果、大きさの順となっています」

 へー、そうなんだ。でも、俺の知っている冒険者たちは結構、適当だった気がするよ。多分、魔法はイメージが重要で、それに結びつけるための呪文だから、それを連想できる単語が並んでいれば良いからだろうな。


「今回は、それに新しい効果を混ぜ、威力を上げました」

 う、うーむ。


「その単語が『螺旋』です」

 へ、へぇ。


 舞台のおっとり少女が呪文を唱え始める。ゆっくりと正確に何度も何度も唱え直し、魔法を形作っていく。


「……私は作る、火の針を、螺旋を描き、標的を穿て」

 あー、呪文って繰り返すんだ。そりゃそうか、イメージと結びつけるためのものだしな。


「飛べ、ファイアニードル!」


 少女の言葉と共に生まれた紫の針が渦巻く螺旋を纏いながら飛ぶ。そして、教師が用意していた透明な防壁に当たり霧散した。


「如何でしょうか? 呪文に『螺旋』を加えたことで魔法の威力があがりました」

 う、うむ。


 多分、ニードル系って攻撃魔法の最弱だよな? それに回転が加わって、どうなるんだ? 強くなるのか? 余り変わらない気がするなぁ。


「す、凄いですわ」

 隣の豪華な髪型の少女は驚いているようだ。凄いのか。そうか。


 何だろうなー、呪文にこだわっているのもそうだけどさ、学院のレベルが低すぎないか? こんなものなのか? 俺が戦った魔族とか、よく分からない呪文とか特級魔法とか使ってきていたけどさ、もしかして、それを基準にしたら、ダメなのか?


 う、うーん。


 これさ、俺、生徒の側で侵入したけど、ミスったか? 教師側で侵入するべきだったか? いや、でも、それだと枠があるかどうか分からないし、自由に動けなかった可能性もあるから……うん、ま、まぁ、これで良かったんだよ。そう思うとしよう。

2021年5月10日修正

講堂の中は円上に → 講堂の中は円状に

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