表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
531/999

6-69 宮廷の魔導師

―1―


「おや、よく見たら随分と可愛らしい子だね」

 そっすかー。まぁ、容姿を褒められるのは悪い気がしないな。


「この子はー、どっちの子なんだろうねー」

 今の俺はノアルジだぜ。って、君らは誰なのだ。

「メディア、まずは僕たちから名乗らないとね」

「そうよねー、一理あるよねー」

 この二人は何なんだ。


「僕はダンソン、上級クラスの一人で個室持ち、光のダンソンと呼ばれているんだよ」

 ダンソンさんは、そう言いながら前髪を掻き上げた。へ、へー。

「私はメディア、ダンソンと同じく上級クラスの個室持ち。土のメディアって呼ばれてるのー」

 個室持ちってアレか、属性を言わないとダメなのか。ふーん。まぁ、俺も自己紹介しておくか。


「私はノアルジだ。無級で個室持ち、水、風、金、闇のノアルジだよ」

 俺の言葉にダンソンと呼ばれた少女の口元が引きつっていた。

「そ、それは……」

 メディアと名乗った少女がダンソンの袖を引っ張る。

「ねぇ、ダンソン。この子、きっとね、その胸と同じで残念な子なんだよー」

 胸? 俺の胸の中には夢と希望が詰まってるんだぜー。


「ノアルジーさん、この学院に入った頃は自分を大きく見せようとする子って結構多いんだ。かくいう自分もそうで、ね。そんなにも可愛らしいんだ、余り見栄を張らない方がいいよ」

 男装の麗人ダンソンは、そんなことを言い残して、ぽっちゃりぷよぷよんなメディアと二人で去って行った。何かの講義を受けに行ったのかな? って、いやいや、今の、この時間は講義中だろうから、彼女たちはサボりか? それとも大書庫で自習でもしていたのか? ホント、俺的にはぽかーんだな。


 まぁ、何にせよ、変な出会いはあったが自室に戻るか。今から時間を潰して講義を受けるのも、入れない大書庫の前で佇むのも、無駄でしかないからな。




―2―


「あらあら、お久しぶりですね。皆はもう食事を終えていますよ、こんな時間にどうしたの? やっぱりお腹が空きすぎて耐えられなくなったのかしら。あなたは充分に綺麗な体型をしていますよ。宮廷では細い方が見栄えが良いなんて言われていますけどね、そんな無理してノースのような体になっても……」

 沈黙の魔女リディおばあちゃんは喋り続ける。食事を自室で取ることが出来ないかの交渉に来たんだが……話が長い! 宮廷の事情とかしらねーっすよー。


「すまない。自室で食事を行うことは出来ないだろうか?」

「それは感心しませんね。寮では皆が揃うんですよ。上級も中級も下級もありませんからね。皆で1つの時を共有することで、聖セシリア魔法学院の生徒だという連帯感が生まれて、それがゆくゆくの、そう、あなたたちが卒業した後も続く縁となって……」

 いや、だから、なげぇよ。半分以上、右から左に聞き流しているけど、ホント、無駄だと思います。何だろう、相手を沈黙させる魔法とか使いたいよね。サイレスとか、サイレントとか、そんな感じの魔法は無いのか? 無いのか!


「すまない。私は体が弱いので難しいのだ」

 そう、こういう時の為の体が弱い設定だ。

「あら、そういえば、そのようなことをアルテミシアちゃんからも聞いていたかしら。そうですね。それは仕方ないことですね。分かりました、何かお部屋でも食べることが出来る物を用意しましょう」

 そ、そうか。ま、まぁ、交渉の結果、部屋で食事が出来るようになったってことでいいんだよな?

 まぁ、これで食事問題は解決か。ある程度は週一で本社に戻って補給するとして、その間の食事もこれでなんとかなるだろう。


 ……はぁ、疲れた。




―3―


 一日だけ、試しに宮廷魔導師の講義に参加してみた。いや、だって、宮廷魔導師だよ、宮廷魔導師! それが初級の魔法を教えるって凄い興味があるじゃないか!


 他の生徒を見習い、席について宮廷魔導師がやってくるのを待つ。


 現れたのは杖をついた老婆だった。お、お年寄りかぁ。すっごい若い子が来て、生徒に舐められる的な展開でも無いかなぁって微妙に期待していたのに、がっかりである。


「おや、今日は初めて見る顔があ……む?」

 宮廷魔導師のお婆ちゃんはこちらを見て、一瞬、驚いた顔をした。

「いや、気のせいよな。持っている品位が違う」

 む。何だか、失礼なコトを言われた気がする。ま、まぁ、所詮、分身体だからな、俺の素質が見通せなかったんだろう。うん、仕方ない、仕方ない。


「本日は魔法の呪文についての講義を行う」

 老婆の講義が始まった。


 簡単に内容をまとめると魔法を正しく発動させるのには呪文の正確さが必要って内容だった。う、うーん。俺、スキルと同じように、ぽんって感じで魔法を発動させているんだけどさ、魔法の発動には呪文が必要なの? いやいや、要らないよね。ナハン大森林のちびっ娘もさ、魔法の発動はイメージが大事って言っていたしさ。イメージ出来れば呪文は要らないだろ?

 うーん、本来ならさ、田舎のギルドのちびっ娘の言葉よりも宮廷魔導師の言葉の方が信用できるんだろうけどさ、何だか、宮廷魔導師の方が間違っている気がする。だってさ、呪文が必要だって言うなら、今の俺が説明できないもんな。


 それでも講義が終わった後は、俺の周りで同じように講義を受けていた少女たちが分かりやすい、次の講義も受けたいと話し合っていた。そ、そうか。そして、誰も俺に話しかけないんだな。


 俺はぼっちだ。


 ま、まぁ、これも引き籠もり続けた結果か。


 ……仕方ないよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ