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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
530/999

6-68 こねこちゃん

―1―


 これは、アレだ。シリアが俺を見ている時の目だ。怖い! 思い出しただけで寒気がしてきた。紫炎の魔女さんも大変だな。


「現在のあなたたちは無階となります。一般的な魔法知識の講義に参加は出来ますが、深い知識を教えることは出来ません」

「まぁ! 私が、ですの」

 だから、凄い自信だな。

「ええ、お二人の才能はしっかりと拝見しました。しかし! あなたたちはこの学院で何も結果を残していないのです」

 確かに、そうか。

「もうすぐ――来週の火の日には次の試験が開始されます。その時の結果によって階位は決まり、周囲のあなたたちを見る目も決まるでしょう」

 なるほどね。


「そんなの! 今すぐ試験をすればいいのですわ。私なら!」

 豪華な髪型の少女が立ち上がる。仕草は上品なのに女教師に噛みつこうとしているようにしか見えない――なんて、恐ろしい少女だ。

「ルールを守りなさい」

 女教師の言葉は冷たい。

「私をエミリア・ゼーレと知っての言葉ですの」

「ここでは、あなたの立場も、地位も、家柄も関係ありません。ここでは、あなたは『ただのエミリア』なのです」

 豪華な髪型の少女は悔しそうに唇を噛み締めながらも、ゆっくりと席に着いた。


「アルテミシア先生、我が儘を言いました」

 お、凄いな。そういうことがちゃんと言えるんだ。まぁ、俺もすぐに試験をして欲しいってのは賛成だけどね。


「はい。では、話を続けます。その試験に受かるために個人講義を行います。私たちも優秀な魔法使いの卵をつまらないことで失いたくはありません」

 ふーむ。


「アルテミシア先生、よろしいか?」

 俺は分身体を動かし、しゅたっと手を上げる。

「え、ええ」

 手を挙げた分身体に驚きながらも女教師が頷く。

「個人講義に参加せず、封印された大書庫で本を読むことは可能か?」

 そうそう、俺の目的はそっちだからな。上手くいけば、サクサクッと終わって、学生ごっこをしなくても済むからな。


「それは出来ません」

 へ?

「封印された大書庫の解放は入り口部分でも下級クラス以上、禁書庫は上級クラス以上になります」

 いやいや、話が違うじゃん。さっきさ、そちらを使って個人学習をするのも有りって言ったじゃん、言ってたじゃん。それなのに制限するのかよ!

 となると、俺も禁書庫に入るために上級クラスを目指さないとダメなのか、ダメなんだな! やれやれ、俺は目立ちたくないんだがなぁ。いや、ホント、目立ちたくないんだよ、でも、それなら仕方ないよね、上級クラスに入るために全力を尽くさないとな。うんうん、これは仕方ないんだってばさ。


「これから一週間、闇の日を除いた全ての日で、私があなたたちに個人講義を行う予定です。どうしますか?」

 そんなの決まってる。


「お……私は不参加でお願いします」

 参加する必要性を感じないんだぜー。


「そ、それなら私も不参加ですわ!」

 何故か、ゴージャスな服装の少女も、そんなことを言っていた。そして、こちらを勝ち誇ったかのような瞳で睨み付けてきた。えーっと、何、その、えー。

「私の真似をする必要はないと思うが?」

「真似じゃありませんわ!」

 えーっと、真似じゃないとしたら、なんなんですの?

「私もあなたと同じで講義を受けなくても余裕だからですわ!」

 うーん、この子、面倒だ。まぁ、でも、仕方ない。


「違う、違う。私が参加しないのは体が弱いからだ。体が弱く体調を崩すことがあり、まともに講義を受けることが出来ないから遠慮したのだ。おま……エミリアさんは、私を気にせず講義を受けるべきだ」

 そうそう、体が弱い設定だからな。が、俺のフォローも豪華な髪型の少女には通じなかったようだ。

「どのような理由があるにせよ、あなたが受けないのなら、同じ条件にならないですもの! 上に立つ者が、そのようなコト認められません!」

 う、うーん。この子、何だろう、凄い真面目なのかな。あのシリアと性格がかぶって見えて、凄い寒気がする。


「なぁ、身内にシリアって名前の女の子がいたりしないか?」

「まぁ! あなた、シリアさまを知っているの?」

 う、うーん。シリアって様付けされるような立場なんだ。凄く、頭、痛い。


「うーん。エミリアさん、君が、この学院に来た意味を思い出して行動したらいいと思うよ。私のことは気にしなくても大丈夫。人の心配をするのは上に立つ者としては立派だけど、結果を残すことも必要だからね」

 上から目線の説教、どや!


「ま、まぁ! なんて、なんて! 分かりましたわ! 私は私で勝手にやります。アルテミシア先生、一週間よろしくお願いします」

 豪華な髪の少女は分身体から顔を逸らし頬を膨らませる。まぁ、なんて貴族の令嬢らしくない態度ですの、なんだぜー。


「それでは、私は失礼します」

 頭痛いし、帰ろう。帰ろうって言っても、俺はすでに自分の部屋の中にいるわけで、分身体を戻そうが正しいんだけどな。




―2―


 分身体を戻すついでに講義の予定を確認してみる。何々、宮廷魔導師オペラの初級魔法講座、森のシロネ魔法学……、うん、色々あるな。何処かで見たことがあるような名前もあるな! すっごい偶然だなー、俺の知っている人と同じ名前だなー、ふっしっぎっだなー。


 にしても、宮廷魔導師って……。王宮の魔法使いが、わざわざ、ここまで来て初級魔法の講義をするのか? 階位は関係無いみたいだから、今度、参加してみるか。シロネの方は、何気に上級クラス限定なんだな。何と言うことでしょう!


「おや、君、新しく入ってきた子だよね?」

 俺が予定表を見ていると、背後から声がかけられた。うん、俺か?


 分身体で振り返ると、そこには二人の少女? が居た。


 一人は背が低くまるまると可愛らしい容姿の女の子。針金で釣ったようなスカートが特徴的だ。

 そして、もう一人はすらりとした体躯で背が高く、さわやかな短めの髪にキラリと眩しい笑顔の見るからに優男風の少女だ。えーっと、女の子であってるよな?


「ダンソン、この子、固まってるよー」

「ふむ。僕の容姿に見惚れちゃったのかな、子猫ちゃん」

 えーっと。アレだ。


 やべぇ。


 超、やべぇ。


 分身体で良かった。これが本体だったら、笑い転げてヤバい所だった。子猫、子猫ちゃんだって。マジかよ。何ソレ、俺の翻訳がおかしいの、おかしいの? この世界にも子猫ちゃん居るの? 居るんだな? 猫人族のことじゃないよな? 何だよ、ソレ! 俺を笑い殺す気か!

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