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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
527/999

6-65 話が進まない

―1―


「学院の敷地内には、そのブラックオニキスを持っていれば入ることが出来ます」

 ふむふむ。

「ならば、今日入ることも出来るのかな?」

 分身体の言葉に女教師が頷く。

「ただ、授業の始まりは来週の火の日からになります」

 いわゆる月曜日だな!

「それまでは学院内にある寮で過ごして貰えると助かります」

 あ、寮があるのか。

「従者はどうなるのだろう?」

 分身体で確認をとると、それにも答えてくれた。

「ええ、従者の方は昨日宿泊された従者用の施設にて控えて貰う形になります。それと注意点なのですが、学院内からは特定の用事が無い限りは闇の日以外の外出は禁止になります」

 あ、そうなの。昼の間に勉強して、夜から街に繰り出すぜー、みたいなことは出来ないのか。ここの料理を食べ歩いてみたかったんだけどなぁ。もしゃもしゃ、と。


 そう、もしゃもしゃ、と!


 もしゃもしゃ。


 そんなことを考えていたらお腹が空いたな。本体の方は――俺の方は食事にするか。まぁ、ご飯を食べながらでも分身体は操作出来るしな。


 じゃじゃーん、今日のお昼ご飯はちょっと柔らかく焼いた小麦パンに干し肉を挟んだ一品です! わぁい。


 ……。


 あー、神国よりもさ、ノアルジ商会の本社の方が美味しい物が食べられるからなぁ、ポンちゃんの料理が恋しいぜ。


 もしゃもしゃ。


「話を続けますね」


 もしゃもしゃ。って、うん?


「先程、お渡ししたブラックオニキスは替えが効きません。なくされた場合は学院から追放になります」


 あれ? なんだ、なんだ?


「それどころか、王宮から賠償金を請求する場合もあります」


 おいおい、何だか、背にしたドアが押されているぞ。ぐいぐい、と無理矢理開けようとしているな。ちょっと、待て、ちょっと待て。


「あら? ノアルジーさん、どうかしましたか?」

「い、いえ。何でもありません」


 いやいや、今、中に入られたら不味いんだって。誰だよ、誰が俺の部屋に入ろうとしているんだ。

「おい、どうしたんだ」

 部屋の外から声が聞こえる。

「こちらのお部屋をクリーニングしようとしたら、開かないんです」

「そんなことがあるか。先程、こちらの令嬢は従者を連れて出て行かれた所だぞ」

 やばい、やばい。ベッドメイキングか、何かか。サービス不要ですとか、言っておけば良かった。いや、だってさ、こっちの世界にも、そんなサービスがあるとは思わないじゃん。

「ちょっと、どいて見ろ」

 やばい、やばい。


「では、話を続けますね」

 女教師の方の話は普通に続いているし、こっちは、こっちで大変だし、頭が混乱しそうだ。

 天啓を飛ばすか? いや、でも、俺が外出しているのは見られているわけだから、いや、でも俺は中に居るんだけどさ。

 ウィンドボイスの魔法を使う? いやいや、だから、俺は外出していることになってるじゃん! どうする、どうする?

「にゃ?」

 俺の横では羽猫がのんきに毛繕いをしていた。お前は、こんな時でも余裕だな……。


 って、待てよ!


――《魔法糸》――


 《魔法糸》を飛ばし、天井に張り付く。


――《隠形》――


 そのまま《隠形》スキルで気配を消す。俺は居ません。居ませんよー。


 勢いよく扉が開き、宿泊施設のボーイが倒れ込むように入ってきた。

「おっとっとっと。開くじゃないか!」

「おかしいですね」

 それに続くよう女性のハウスキーパーも入ってくる。二人が室内を見回し、毛繕いをしようとした姿のまま、驚き固まっている羽猫を見つける。

「こいつか!」

「あの令嬢が飼っているペットなのか、テイムした魔獣なのか、置いていくなんて……」

「襲うタイプじゃないよな?」

「魔獣は外見で判断出来ないので怖いです」

「仕方ない、ベッドメイキングは諦めろ。この魔獣を置いていたのが悪いんだ」

 あ、はい。すいません。


 二人は口々に色々と愚痴をこぼしながら部屋から出て行った。いやぁ、お客がいないと思って好き放題言うなぁ。まぁ、でもさ、接客業ってそんなもんか。


「では、ノアルジーさん、そのようにお願いします」

 はッ!?


 部屋の方の出来事に気を取られて、女教師の解説が頭に入っていない! ま、まずいぞ。


 わ、わんもあぷりーず。



 女教師に呆れられた顔をされつつ、もう一度簡単な説明を聞き、分身体を自室に戻す。はぁ、これ、大丈夫かなぁ。とりあえず、今日はもう寝るか。早く寮に入って、鍵を見つけないとなぁ。見つけた後の交渉は辺境伯と第一王女が上手くやってくれるだろうし――まずは交渉の舞台に立つための鍵探しだな。


『14型、お前はここで待機だ』

「了解です」

 ま、まぁ、14型さんなら上手くやってくれるでしょう。


 俺でブラックオニキスの登録をかけるわけだから、俺じゃないと学院内には入れないよな? 分身体で登録をかけて、俺自身が入れなかったら、全てが無駄になってしまうからな。となると《隠形》スキルを使いながら上手く学院内に侵入し、中で《分身》スキルで分身体をつくって寮に入るって感じか。うん、動くのは明日になるな。


 いやぁ、もうね、ホント、不安しかないよ。

2021年5月10日修正

寮に入るって感か → 寮に入るって感じか

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