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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
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ひゃくじゅうきゅうだいめのおはなし

「来た」

 少女が目の前の異形に話しかける。

「やあ。まさか本当に来てくれるとは思わなかったよ」

「用件を言え」

 少女はとても気怠そうに口を開く。

「紫炎の魔女に頼み事があるんだ」

『魔族の王が、長い間敵対した――戦い続けた私に何の用がある。今なら、この城、お前たちの本拠地にいる魔族全員を燃やし尽くすことも可能だ』

「さすがは紫炎の魔女、恐ろしいな。人形がなくては動けない僕たちなら簡単に殺されそうだ」

「お前との軽口……飽きた」

 少女の言葉に魔族の王は苦笑する。

「この赤ん坊を預かって欲しい」

 少女の言葉を受け、魔族の王が体内から赤ん坊を取り出した。

「これは?」

「正真正銘、僕の子どもだよ」

『ふむ、魔族も子どものうちは人と変わらないんだな』

「いや、違うよ」

「どういうこと?」


「魔族と君たちの間に生まれた子どもなんだ」

 魔族の王の言葉に少女は大きく驚く。

「何を?」

「何を言っているって言いたいのかい? 言葉通りの意味だよ」

「母親は?」

「残念ながら殺されてしまったよ。同胞を御しきれない情けない王なんだよ、僕は」

 そこで一度、魔族の王は言葉を止める。何かを思い出し、何かを捨てた顔だった。

「この子のことは、まだ気付かれていない。だから、君に託したい」

 少女は赤ん坊を見て、そして受け止める。

「女の子?」

「ああ」

「名は?」

「僕たちの星と君たちの星を繋ぐ道って意味でステラロードと名付けた」

「魔族の言葉?」

「そうだね、僕たちの、僕たちが残した言葉だよ」

 赤ん坊が笑い、少女に小さな手を伸ばす。

「僕たちは人形がなければ、あの壁を越えることも出来ない。だから君に託したいんだ」

 少女は赤ん坊の小さな手を握る。

「わかった」

「助かるよ。このままだとこの子も殺されかねなかったんだよ」

「内乱?」

「そうだね。僕を慕ってくれていたあの子は特に僕のことを許さないだろうね」

『魔族は魔族同士で争って自滅すればいい』

「そうだね。僕たちは、もう先がない。袋小路に行き着いているからね。古い種族はこの辺りで消えるべきかもしれない」

 少女は大きなため息を吐く。

『私が、全力を出せる相手がいなくなるのは詰まらない。死ぬなら私に殺されろ』

 少女の言葉に魔族の王は苦笑する。

「そうだね。君と戦うために生き延びるよ」

「うむ」

 少女が赤ん坊を抱き、そのまま異形が納まっていた部屋を出ようとする。

「今更だけどね、紫炎の魔女、君の名前を聞いてもいいかい?」


「ソフィア・アメシスト」

 紫炎の魔女ソフィアは、その言葉を残して魔王の城を後にした。

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