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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
506/999

6-46 女神が休む日

―1―


 女神の休息日がやって来る。


 冒険者ギルドが率先して付近の住民に警告を出していく。それに合わせて、皆が迷宮に入っていく。この際、冒険者ギルドに迷宮内の魔獣の掃討が依頼されるらしい。


 通常よりも報酬が多いということもあって、冒険者たちは書き入れ時といわんばかりに大はしゃぎだ。俺も一冒険者として参加したかったのだが、ノアルジ商会のよく分からない手続きや承認で参加することが出来なかった。

 GPも多く貰えるってスカイが言っていたもんなぁ。俺、まだCランクですよ。早く、BやAに上がって、王様とかの前でAランクなのだが、って感じで偉そうにしたいッ!


 ……。


 って、待てよ。よく考えたら、俺ってさ、商会の方の流れで帝都のゼンラ帝とも顔見知りになったし、迷宮都市のトップであるヤズ卿とも知り合いだし、ホーシアの女王も国を救った仲だし、神国の姫さまとは友人だ。


 えーっと、俺のコネってさ、今更だけど凄くないか。何か、アレよ、アレよという間に知り合いが増えているよな。


 ……。


 これ、無理に冒険者のランクを上げて偉そうにしなくてもいいのか? いやいや、でもさ、バーン君より下なのはダメでしょ。うん、やはり頑張ってAランクに上げないとな。



 うちの本社で雇っている鬼人族たちの案内で付近の住民が本社の中庭に集まっていく。うちの本社周辺の住人は地下世界(アンダースフィア)を使うことになっているからな。


 そして、中庭には何故か舞台が用意され、舞台の上に、俺と14型、ユエや羽猫たちが勢揃いしている。

 俺は舞台の上から中庭に集まった人たちを見回す。結構、多いな。帝都自体が広いもんなぁ。にしても女神の休息日か……。コレさ、女神の休息日を忘れていたり、寝過ごしたとか、旅に出ていたりしたらヤバくないか? ま、まぁ、旅先で迷宮に入れば安全なんだろうけど、その間の食事とか、ヤバいよな。1日ならまだしも、1週間続くこともあるんだろ?


「では、ノアルジー商会のオーナーより、集まった皆様にお話があります」

 司会進行はユエの役割のようだ。って、ん?


 何故か、ユエが俺の元へ歩いてくる。


 ん?


「では、ラン様、お願いします……」

 えーっと、お願いしますって、何を?


 集まった人たちが、一斉にこちらを見る。舞台の上に立っている俺はそれをぼーぜんと見ていた。えーっと、何?


 コレ、俺が何か言うパターンなのか。


『よく集まった』

 俺が天啓を飛ばすと皆が騒ぎ始めた。


「チャンプだ」

「噂の芋虫魔獣?」

「え? この商会のオーナーって魔獣なの?」


 うん、好き勝手に騒いでいるな。これ、結構、収拾がつかない感じなんじゃないかなぁ。ノアルジ商会のオーナーが俺だって知らない人てば、意外と多いのか?


 と、そこで何かを叩き付けるような大きな音が響き渡った。


 音の方を見ると、昼の受付をやってくれている鬼人族の女性が巨大な鉄の棍棒を地面に叩き付けていた。えーっと、その棍棒、何処から持ってきたんですか?

「静かにしなさい!」

 大きな声が広がる。うん、うちの受け付け、怖いなぁ。


「不満がある方は、他に行って貰っても構いません……」

 ユエもずれそうになっている片眼鏡を直しながら、そんなことを言っていた。えーっと、うちの商会、はちきゅーさんみたいなんですけど。いつの間に、そんな組織になったのかなぁ。

「ラン様、改めてお願いします」


 先程と打って変わりシーンと静まりかえった人々を見る。えーっと、この状況で何を言え、と。と、とりあえず無難な挨拶をしておこう。

『この商会のオーナー、ランだ。皆で協力して女神の休息日を乗り切ろう』

 俺が天啓を飛ばすとまずは舞台から拍手が、そして、人々からも拍手が沸き起こった。えーっと、これでいいのか。


「では、ラン様、迷宮に行きましょう」

「マスター、こちらです」

 ユエと14型に連れられて本社の中へ。


「迷宮内の魔獣は14型さんが倒してくれているので、復活することは無いと思います……」

 ユエがそんなことを言っている。そういえば、最近、14型が居ないなぁと思ったら、そんなことをしていたのか。

「にゃ、にゃ!」

 俺の横を飛んでいる羽猫も何故か得意気だ。


 ……まさか、お前、姿が見えないことがあると思ったら、地下世界(アンダースフィア)の魔獣退治でもしていたのか?


 うーん。


「ラン様、一応、一週間分の食事は用意しました」

 あー、そうそう、食事の問題があるよな。

「しかし、どうしても持ち運べる食料には限界があるので、我慢していただく場合もあります」

 ま、それは仕方ないよな。


 って、うん? ちょっと待て、ちょっと待て。


『魔法の袋に入れれば良いのでは?』

 そうだよ、せっかくそういう便利アイテムがあるんだから、それを活用すればいいじゃん。

 俺の天啓にユエが何を言っているんだろうって顔でこちらを見る。うん? 俺、おかしなコトを言った?

「そうですね、冒険者になろうという方はMPの総量が多いでしょうから、そういった魔法の袋を持てる方も多いでしょうね」

 うん? MPの総量が魔法の袋と何の関係が?


「私は小銭を入れるような小さな袋が精一杯なので、食料品を入れるのは……無理です」

 そ、そうか。


 って、もしかして、魔法の袋って最大MPで持てる持てないが決まるのか? いやいや、でもさ、最初の冒険者ギルドでも、あのくっそ調子のいい眼帯のおっさんもウーラさんも、そんなことを一言も教えてくれなかったぞ?


 ……。


 あ、そういえば、思い当たることがある。隊商の護衛をした時にさ、俺、なんで魔法の袋に入れて運ばないんだろうなって思ったじゃん。つまり、そうか、これが答えか。

 MPが多くないと大きな魔法の袋は持てないのか!


 魔法のウェストポーチXLが使える俺は、もしかして規格外だったのか? 何てことだ……。

 俺は、そんなことにも気付いてなかったのか。

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