2-42 中層
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朝ー。朝だよー。
ということで翌日です。
ふあぁ、眠い。ステータスプレート(銅)にも時刻表示機能があるんだから、目覚まし機能くらい合っても良いのにね。
さあ、さくっと朝食を戴いて冒険者ギルドによってみるか。ちびっ娘が居なかったら世界樹行きは止めということで。
ちなみに昨日の晩ご飯はスープともさパンでした。どーも食事が冒険者が狩っている魔獣に左右されている気がする。
朝ご飯は前回も食べた甘いおかゆもどきだった。女将さんに原材料を聞いてみる。場合によってはご飯として活用できるかもだしー。
「それかい、そいつはキャリア・ビーの卵だね」
ぶほっ、食べたものを吐くかと思った。む、虫の卵かよ……。
「最近、世界樹の中層で狩りをしている冒険者が居てね。その素材が回ってくるんだよ」
俺以外にも世界樹攻略者が居たのか……。しかも中層というとこれから向かうとこだな。
「猫人族の子なんだけど、その子もあんたと同じでソロで頑張ってるんだと。見かけたら声かけたげなよ」
うお、猫人族だと!? 猫耳か、猫耳なのか。キター、ついにキター。何を隠そう、俺は猫耳が大好物なのだ。是非知り合いにならないとなッ!
うん、イエス、猫耳。
女将さんから猫耳という非常に有用な情報を得たし、冒険者ギルドに行きますか。
―2―
冒険者ギルドに到着っと。最初の頃からは想像できないくらいに早く歩けます。さすがに里の中で魔法糸を使って移動は出来ないからなッ! レベルアップサマサマですよー。そこらで歩いている人より早いくらいだぜッ!
さっそく冒険者ギルドの中に入ってみると――中に居たのはちびっ娘だった。良し、当たりだ。
俺の登場に沢山居た他の冒険者が静かになる。お? ふふふ、俺に恐れを成したか。
「む。虫」
はい、芋虫です。
「クエストか?」
違いますぅー。
『情報を貰いたい』
「む」
『昨日、中層に到達した。中層と上層の情報が欲しい』
「むうぅぅ」
ちびっ娘が腕を組んでうなる。
「思っていたよりも早い」
そうだろう、そうだろう。俺は本気で強くなるつもりだからな。強くなる――その為に世界樹を攻略しているんだ。
「わかった。銀貨1枚」
俺は銀貨1枚をちびっ娘に渡す。これはそういった言葉遊び、というか、言い回しなんだって分かったけど、それでも俺は銀貨1枚を渡す。ちびっ娘の情報にはそれだけの価値があると思ったからだ。
「うむ」
ちびっ娘は頷いて受け取る。って、当たり前に受け取るのかよ。遠慮とかしろよー、もう。
「まずは中層、一本道。ぐるぐると回るように中心に進み、中心に登る坂がある」
ふむふむ。中層は登っていく感じじゃないのね。
「ここでもポイズンワームが出る。後はEランクの『ラージマイコニド』マイコニドがもっと大きくなって手が付いた、お父さんマイコニド。殴られると死ぬ。素材は一緒。金色の粘液の量が多い」
死ぬってなんだよ、死ぬって。
「次がEランク『キャリア・ビー』上層に居るクィーンの働き蜂。卵を運んでいる。下半身が卵で覆われている。それが素材、食用。甘くて美味しい。動きは遅めだけど空中に居るのがやっかい。やっぱり火に弱い」
うーん、想像するとすっごいグロい姿なんですが。俺も食べたけど、虫の卵だって思うと食べる気が失せるよなぁ。
「最後がFランク『アッヒルデ』ネバネバ、ぬらぬらした血吸い虫。気持ち悪い。素材は魔石だけ。火に弱い」
よーわからんな。まぁ、気持ち悪そうだってことは伝わった。
「次に上層」
はーい。
「中層からの坂を登ると広間、その後一本道で外周へ向けて登る」
ふむふむ。
「上層に上がってすぐがクィーンの巣。Eランクのキャリア・ビー、『ソルジャー・ビー』『エリート・ビー』とDランクの『クィーン・ビー』が居る。全部火に弱い。素材は卵と甲殻、顎」
なんだか、いきなりキツそうだな。中ボスか?
「次がEランクの『ジャイアントクロウラー』虫」
おい、説明しろよ、虫って何だよ、虫って。しかし、Eランクなのか……。
「後はBランクの『セフィロスライム』遭遇したら絶対逃げる」
Bランクだと? 一気にランクが上がったな。
「セフィロスライムには攻撃が効かない。武器を突き刺せば、そこから武器が溶かされる。火属性なら若干通る。中のコアを潰せば勝てるが危険。その前に溶かされる。素材はそのコア」
ちょ、勝つにはコアを潰す必要があって、素材はコア? どんなとんちだよ。ま、まぁ危険なのは分かった。スライムって雑魚なイメージがあったんだけどなぁ。僕は悪いジャイアントクロウラーじゃないよ、ぷるぷる。
「最後が世界樹の迷宮のボス、Dランクの『ウッドゴーレム』倒せば世界樹の迷宮は終わり」
へ? そこで終わりなの? どーいうこと? 俺が居た場所やシロネさんが居た場所がないんだけど。上層が、そうなのか? うーん、わかんないなぁ。
「ウッドゴーレムは火に弱い。素材は動力コア。倒すと小部屋が開いて、そこから地上に転送される」
ふむふむ。
「最初はそこに杖があったって言われている。世界樹の杖、ちょっとした魔法具」
初回限定アイテムか――無くて当然だよな。すでに攻略済みって言われていた迷宮だもんな。
「以上」
『わかった。かたじけない』
うん、すげぇ参考になった。けどね、俺はお金を払って情報を聞いているから良いんだけど、周りの冒険者連中も聞き耳立てているんですけど、ですけどーッ!
タダ聴きかよッ! お前らも金払えよ……。
お、大らかで優しい俺は何も言わないけどさ。ちょっとどうかと思うなー。ホント、どうかと思うなー。俺は小物じゃないから何も言わないけど、そういうのはちょっとどうかと思うなー。ホント思うなー。
冒険者の多い朝一で来たのが不味かったか。
ま、まぁ良い。さあ、これから世界樹の中層だ。頑張るぞー。
しかし、アレだな。情報を得て思ったけど上層が怖いなぁ。大量の蜂に襲われるんだろうなぁ。矢だと数が足りなくなるだろうから、槍で頑張るしかない……か。槍が壊れたときが怖いなぁ。その時はなんとか撤収するしかないか。
ま、まぁ頑張ろう。