さんだいめのおはなし
「行くのか?」
2人は親友だった。
「俺は、俺たちは、お前の考えにはついて行けない」
仲間だった。
「しかし、これしか、これしかもう方法は残されていない」
助けて欲しかった。
「人を止めてまで、アイツと同じになってまで、そこまでして、どうする!」
理解して欲しかった。
「先代が紡いできた思いを終わらせるわけにはいかない」
犠牲になるのは自分だけのつもりだった。
「確かに、あの人形たちが、あの悪魔の作った人モドキが、俺たち人の代わりとして生きていくような世の中は見たくない」
だから一緒に歩んで欲しかった。
「僕はもう決めたんだ」
引き返すことは出来なかった。
「分かった、俺は、もう止めないからな」
それでも賛同して残ってくれた人たちが居た。
「ああ。僕たちの国を――いや、人の世界を終わらせるわけにはいかない」
繰り返される実験。
「そうだな」
消えていく命。
「僕は、僕のやり方で、あの悪魔を止める。お前は、お前たちは人として生き延びてくれ」
人としての生。
「分かった。ここで道は別れた」
化け物としての生。
「ああ」
終わりなき戦いの始まり。
「俺は俺たちのやり方で、人として、人のままで抵抗を続ける」
力なき者は淘汰されていく。
「そう、これはそんな物語なんだよ。お涙頂戴だよね。哀しいよね。でもね、糞虫がどれだけ頑張っても届かない。全てが無駄に終わる物語なんだよ。うん、物語はいいね、最高だよ。まぁ、それでも頑張れるだけ、頑張って、無駄を無駄と知って、絶望して、嘆きながら後悔していけばいいよ。そう私は殺さない。人は殺さない。人は全て、永遠に生かす。でもね、私に逆らった罰は必要だよね。ああ、早くここまで来ないかな。楽しみで、楽しくて、楽しみで、それだけで心が溢れそうだ。こぼれ落ちそうだよ。全てが思い通りに、私が中心の世界で、私のみが世界の法則で、逆らう者が居ない世界で、そんな中で私に届きそうな者達。それでも決して届かない者達。何時までも、何時までも同じところを回り続けて、理解出来なくて、絶望して、ああ、楽しみだよ。沢山、準備をしたからね、簡単には終わらせないからね。さあ、未来が変わらないことを嘆くといいよ」