表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
6  空中庭園攻略
467/999

6-8  心にくるお話

―1―


――《転移》――


 《転移》スキルを使い、迷宮都市にある王城の西の中庭に着地する。うん、一瞬だぜ。帝都から迷宮都市まで結構な距離があるはずなのに、ホント、一瞬だなぁ。うん、便利、便利。


 と、さあて、迷宮都市も見て回るかな。まずは、いつもの食堂兼酒場だな。ハゲのおっさん元気にしているかなぁ。うん? そういえば、ポンちゃんも禿げちゃっていたよな。も、も、も、も、もしかして、この世界って料理人になると禿げるのか? そうなのか? お、俺は絶対に料理人にならないぞ、それなら、ならないぞ!


 にしても、どうしようかな。普通に門から外に出るか? いや、でも王城の中を通るのも面倒だしなぁ。普通に《飛翔》スキルで飛ぶか。うん、その方が手っ取り早いぜー。


 俺が西の中庭の中心で、そんなことを考えていると何かが凄い勢いで駆けてきた。その駆けてきた見覚えのある何かには、やはり見覚えのある人がぶら下がっていた。

「ちっ、おい、やっと来やがったかっ!」

「お、おい、バーン、落ち着けって」

 ぶら下がっている人が必死に、その見覚えのある何かをなだめている。どうどう、大変だねぇ。


「ちっ、何処に行ってやがった!」

 シラネ。


 そこに居たのはバーン君だった。相変わらず俺様キャラだなぁ。鬱陶しいことこの上ないです。

「あの時、俺を助けたのはお前だろっ! ノアルジー!」

 へぇへぇ。

「バーン、お前、まだ力を取り戻している途中なんだから、無茶するなって」

 バーンの腰にくっついているのはレーン君か。君も大変だなぁ。

「いいや、コイツを、今を逃したら、何処まで逃げられるか分かったものか!」

 バーン君がレーン君を引き摺りながらこっちへと歩いてくる。コレ、何かのコントか。にしても、バーン君がちょうど王城にいる時に降り立つとか、何だろうな、コレ。悪意を感じるぜー。


「お前の、お前のせいで『名も無き王の墳墓』を攻略したのは俺ってことになってるんだぞ!」

 あー、そういうコトになったのか。そっかー、って、そうだよ!


 俺、『名も無き王の墳墓』を攻略したじゃん。その時によく分からない杖とスキルツリーゲットしてるじゃん。色々あって、確認を忘れている! もう、俺はホント、駄目なヤツだなぁ。まぁ、後で確認しておこう。


「おい、ノアルジー聞いてるのか! ちっ! それに、あの下水の芋虫はどうなったんだ!」

 うん? あー、そうか。バーン君は俺と俺が同一人物だって知らないのか。俺と俺は同一人物――当たり前だよなぁ。

「無事だ」

「ちっ、そうかよ」

 なんだかんだでバーン君はいい奴なのか? まぁ、面倒臭い性格しているけど。うん、面倒だよな。これ、そのまま《飛翔》スキルで逃げたらダメなのかなぁ。いや、何だろう、その時はレーン君に撃ち落とされそうな気がするぞ。バーン君と出会ったのもレーン君に撃墜されてだしなぁ。


 うーむ、どうしよう。


 ホント、面倒だ。


【[ディスオーダー]の魔法が発現しました】


 うん? このタイミングで? えーっと、効果はなんじゃらほい。


 赤い瞳で習得した魔法の流れを読み取る。ふむふむ。対象を混乱、思考制御する闇属性の魔法か。怖ッ! ちょー怖い魔法だよ。ナイトメアの魔法といい、闇属性は怖い魔法しか揃っていないのかよッ!


――[エルディスオーダー]――


 と言うことで、さっそくバーン君たちに魔法を掛けてみた。


「おい、聞いているのか! ちっ、これだから」

 バーン君が見当違いの方向に叫んでいる。おー、おー、効いた、効いた。Aランクの冒険者だから無効化されるかと思ったら、普通に効いたな。


 というわけで。


――《飛翔》――


 ばいばーい。おさらば、さっさだぜー。


 にしてもバーン君たちが元気そうで良かったな。




―2―


 《飛翔》スキルの勢いのまま、食堂の前に着地する。ずさささっとな。《飛翔》スキルの効果時間も延びてきたな。途中、1回の休憩で到着出来るんだもん、上出来、上出来。


「おっちゃん、お邪魔するぜー」

 俺は中へと声を掛けながら、食堂の中に入る。


 食堂の中には誰も居なかった。あれ? 今、飯時だよな? 間違っていないよな? そ、そう言えば、普段だったら、外でズースの肉を焼いたりしてるよな。どどど、どういうこと。

「おっちゃーん、居ないのかー!」

 俺がもう一度、大声で呼びかけると、奥から、のそりとバンダナをしたスキンヘッドのおっさんが現れた。

「何だ、嬢ちゃんか。久しぶりだな」

 おうよ。

「飯を食いに来た」

 俺の言葉にスキンヘッドのおっさんがニヤリと嬉しそうに笑い、そして大きくため息を吐いた。

「それは嬉しいな。だけどよ、今は夜の酒場しかやってないんだよ」

 へ?


 えー、いやいやいや、どういうこと? 1年前は凄い繁盛していたじゃん。俺、真剣に引き抜きを考えていたくらいに繁盛していたじゃん。

「何があったんだ?」

「ああ、嬢ちゃんは知らないのか」

 はい、知りません。

「この近くによ、ノアルジー商会って所の食堂が新しく作られたんだよ。そっちに客を全部取られて、このザマよ」

 へ?

「まぁ、向こうは酒場はやらないみたいだから、夜の酒場をやって細々と続けているような状態よ。まぁ、これも時代の流れってヤツだな」

 スキンヘッドのおっちゃんが、そう言って寂しそうに笑った。え、えーっと、えーっと、これは、いや、その、あのー、俺、凄い、反応に困るんだが。


 うにゅうにゅうにゅ。どうしよう。


 いや、マジで考えがまとまんない。俺はノアルジ商会のトップだから、俺が言えば、ここのノアルジ商会運営の食堂を潰すことは出来るだろうけど、そういう問題じゃないと思うし……。じゃあ、俺がおっちゃんを雇うってのも違う気がするし、うわぁぁ。


 これはキツいわ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ