6-1 率爾の女王
―1―
気が付くと見知らぬ世界に居た。
ここは何処だ?
真っ暗闇に2人の人物。周囲は、黒、黒、真っ黒だというのに、2人の姿だけは場違いなほど華美で暗闇に浮かび上がっていた。
1人は着物を着崩した女性。長い黒髪に赤い瞳。額に小さな目のような赤い宝石が6つ光っている。
そして、もう1人は浴衣のような緑の着物を着た金髪少女。何も無い空中に座り足をバタバタと動かしている。
黒髪の女性が妖艶な笑みを浮かべ、後ろに下がる。それに合わせて金色の瞳を持った少女が何も無い空間から飛び降りる。そのまま嫌らしい笑みを浮かべ、こちらへと歩いてくる。金髪で浴衣とか違和感が凄いなぁ。
金髪少女はニヤニヤと笑いながら、俺の周囲をクルクルと何かを観察するように廻る。何だ、何だ?
そして金髪少女が変態した。
大きく口を開け、そのまま大きな牙が生える。
瞳が大きく開き昆虫のような目に変わる。
浴衣の背中が破け、虫の羽が現れる。
そして、姿が消えたのかと錯覚する速度で蹴り掛かってきた。いや、今の超知覚スキルを取得した俺には、それがしっかりと見えているんだぜ。
――《飛翔》――
《飛翔》スキルを使い、距離を取る。
――《魔法糸》――
《魔法糸》を作成し金髪少女へ飛ばす。金髪少女が空中で軌道を変え、《魔法糸》を回避する。俺の《飛翔》スキルと同じような感じか?
何か武器は? 武器は――無いか。仕方ない、強化された魔法たちを見よッ!
――[アイスウォール]――
金髪少女が突如、目の前に現れた氷の壁に驚き動きを止める。
――[ファイアウォール]――
そして、そこを目掛けて炎の壁を作る。
金髪少女が氷の壁と炎の壁に挟まれる。
――[ファイアウォール]――
さらに閉じ込めた少女目掛けて炎の壁を張る。足下から吹き上がる炎によって金髪少女が燃える。
俺はそのまま炎の壁が消えるのを待つ。
そして、炎が消えた先には金色に包まれた金髪少女が居た。何だ? まるで体が黄金にでも変わったかのような……。何をしたんだ?
金髪少女の体から金色が剥がれ落ちる。なるほど、体を金属化して魔法を防いだのか? うーん、よく分からないが、そんな感じぽいな。
再度、金髪少女が姿を消す。
――《集中》――
何処だ? 俺は集中し、ゆっくりと動く世界の中で金髪少女を探す。金髪少女は俺の周囲を高速で回っていた。そして、そのまま口から酸の液を吐き出す。残像が見えるほどの高速で周囲から酸の液が降り注がれる。
――[ファイアシールド]――
俺は上空に炎の盾を作り出す。炎の盾が降り注ぐ酸液を蒸発させていく。
それを見て、金髪少女が虫顔のまま、驚いたように動きを止める。そして、すぐに、その場で地団駄を踏んだ。おー、おー、悔しそうだ。
再度、金髪少女がこちらへと突っ込んでくる。どーにも近接戦闘がしたいみたいだな。が、相手の土俵に付き合う必要なんてないからなッ!
――《飛翔》――
《飛翔》スキルを使い、大きく後方へと飛ぶ。俺を追いかけるように金髪少女が飛ぶ。しかし、俺の《飛翔》スキルの方が性能が高いのか、どんどん距離が開いていく。よし、終わりにしよう。
――[アイスウォール]――
飛んできた金髪少女の目の前に氷の壁を張る。金髪少女が氷の壁にぶつからないように空中で制止する。おー、ピタッと止まれるのは凄いな。
そして、氷の壁を迂回しようと動く。
――[アイスウォール]――
――[アイスウォール]――
その動きを封じるように三方から氷の壁で封じ込める。更にッ!
――[ファイアウォール]――
――[ファイアウォール]――
――[ファイアウォール]――
その内側に炎の壁を作る。
金髪少女が空へと飛び上がり、逃れようとする。狙い撃ちだぜッ!
――[アイスランス]――
右手に氷の槍を。
――[ファイアランス]――
左手に炎の槍を。
更に追い打ちッ!
――[アクアランス]――
――[ウッドランス]――
降り注ぐ魔法たち。そしてッ!
――《飛翔》――
俺自身が被害を受けないためにも、空高くへと飛び上がる。
――[トルネード]――
嵐を呼び、
――[アイスストーム]――
そこに氷と風の嵐を混ぜ、
――[メテオフォール]――
そこへ炎の塊が降り注ぐ。
金髪少女を囲っていた壁が砕け散り、中から金髪少女が飛び出す。金髪少女は何も無い空間を何度もバウンドしながら、飛んでいった。やり過ぎたか?
金髪少女がよろよろと立ち上がり、そのまま逃げ出した。あ、まだ、元気そうだ。
金髪少女は、黒髪の女性の元まで逃げ、その袖を引っ張る。そして、そのまま、その後ろに隠れた。いや、ホント、元気そうだ。俺の全力の魔法だったんだけど、こうも無事だと傷付くんだぜ。
黒髪の女性が口元にうっすらと笑みを浮かべる。そして、仕方ないなぁとでも言わんばかりに指を鳴らす。すると暗闇の世界が剥がれ、壊れ始めた。
虫顔から普通の姿に戻った金髪少女は黒髪の女性の後ろから顔だけを覗かせ、こちらへと舌を出す。それを見た、黒髪の女性が金髪少女の頭をなでる。
崩壊していく世界の中、黒髪の女性がお辞儀をし、そこで俺の意識は途絶えた。




