表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

455/999

5-149 バーン死す

―1―


 さて、行きますか。


――《転移》――


 夕方になり、俺は『名も無き王の墳墓』へと出発する。さあ、最後の戦いだぜ。『名も無き王の墳墓』の主よ、何の恨みも無いが、迷宮攻略の為に生け贄になって貰うんだぜー。


 迷宮都市にある王城、その西側の中庭に降り立つ。さあて、そのまま進みますか。西側の中庭から城内に入り、東側の中庭へ。

 すると東側の中庭には、何故か多くの冒険者たちが集まっていた。何だ? 何かイベントでもあったのか?


「あ、下水の芋虫が居る」

「うが?」


 例の赤髪の騎士パーティも居るな。何だろう、『名も無き王の墳墓』に入りにくいなぁ。


 ちょっと通りますよ。


 冒険者たちを掻き分け、『名も無き王の墳墓』の入り口がある小さな祠に入る。さあて、行くぜ、行くぜ。


 1階層に降り、兵士さんに挨拶をする。

『今日は騒がしいな』

 俺の天啓を受け、兵士さんがニヤリと笑った。

「久しぶりに、この迷宮の主に挑戦する冒険者が現れたから」

 へえ、そうなんだ。って、もしかして、俺の事? ……じゃないよなぁ。にしても、俺が攻略しようとしたタイミングで、かよ。

 うーん、先を越されたのか。コレさ、先に攻略されちゃったら悔しくて夜も眠れなくなっちゃうよなぁ。


 通路を抜け、そのまま台座の前に向かう。あ、台座の下にある円が光っていないな。さっき誰かが使っていたのかな?


 しばらく待ち、光が戻った所で台座に手を触れると、5つの映像が浮かび上がった。選ぶのはもちろん5個目の映像、10階層行きッ!


 映像を選ぶと、俺と羽猫は光に包まれ、気付いた時には10階層に居た。


 目の前には昨日見たのと同じ看板。書かれている内容も変化が……あるな?



 営業時間18:00~28:00

 パーティを組まず、お一人でのご来店をお待ちしています。

 営業中



 営業中? 何を営業しているんだ? 意味が分からない。まぁ、中に入るか。




―2―


 扉をくぐると、そこは長い通路になっていた。背後で勝手に扉が閉まる。うお、勝手に閉まったぞ、しかも開かない。閉じ込められた?

 コレは、前に進めってコトか。


 俺が通路を歩いて行くと、通路に明かりが灯る。何だろう、天井にある、非常灯みたいなのが光っているな。何だか、闘技場に向かう通路って感じだよなぁ。


 天井の明かりを頼りに通路を歩いて行くと、大きな舞台の上に出た。ここが決戦の舞台?


 舞台の上には2つの姿があった。


 1つは腰に古めかしい2本の剣、両手で長剣を持った全身金属鎧の騎士。あー、マントがヒラヒラして格好いいね。あっちがこの『名も無き王の墳墓』の主、名も無き王なのかな?


 で、手前で戦っているのは……バーン君じゃん。


 何だよ、挑戦しているのってバーン君かよ。これ、もしかして、先に攻略されちゃうんじゃないか?


 何で、急に思い立って迷宮の主に挑戦しているんだよ、昨日は、そんな素振りなかったじゃん。


『バーン!』

 俺が天啓を飛ばすと、バーンが正面を、騎士鎧を見据えたまま舌打ちをした。

「ちっ。下水の芋虫かよ。ふん、俺が先に来て良かったぜ」

 あ、何というか。余裕そうだね。

「別にお前に触発されて、挑戦した訳じゃ無いからな! 勘違いするなよっ!」

 ああ、ホント、余裕そうだ。


 でもさ、こんな感じなら勝っちゃいそうだなぁ。これは、ホント、先を越されてしまったか。


 そうだ、ちょっと主の方を鑑定しておくか。


【名前:安藤優】

【種族:ダークロード】


 種族は王じゃなくて領主なのか。って、名も無きって迷宮なのに名前あるじゃん。詐欺じゃん。しかも、なんで和名なんだよッ! そういえば世界の壁のボスも和風な名前だったよな? 何か関係があるのか?


 俺が鑑定を使ったことに気付いたのか、騎士兜のバイザーの奥が赤く光り、こちらを見た。そして、騎士鎧が手に持った両手剣を大きく振るう。すると、俺の目の前から黒い炎の柱が生まれ、俺とバーンを別けるように立ち塞がった。うぉ、びっくりした。って、これじゃあ、戦いが見えないじゃん。触れたらヤバいか? ヤバそうだな。


 仕方ない、戦いが終わるまで、待ちますか。ま、普通にバーン君が勝ちそうだけどさ。焦って攻略を開始するとかさ、大人げないよなぁ。




―3―


 舞台の隅っこで羽猫を構って遊んでいると黒い炎が少しずつ勢いを弱めていった。お、戦いが終わったのか。となると羽猫と遊んでいる場合じゃ無いな。


 小さくなった黒い炎の向こうではバーンが両手剣に貫かれ、持ち上げられていた。へ? え? いやいや、何の冗談だ? ギャグか? そういう自虐ネタはいいからさ。


 騎士鎧が大きく両手剣を振り払うと、バーンがこちらへ飛んできた。いや、お前、お前。


 バーンが地面を跳ね、転がり、俺の目の前に落ちる。そして、それでもバーンはよろよろと立ち上がり、立ち上がろうとして、そのまま崩れ落ちた。

「ちっ……下水の……芋虫か。ドジった……ぜ」

 バーンが口から血をこぼしながら、それでも嫌みな笑顔を作り、ニヤリと笑う。お、おう。その元気なら大丈夫だな。待ってろ、回復してやる。


――[ヒールレイン]――


 バーンへと癒やしの雨を降らす。これで大丈夫だよな。よし、俺が仇を討ってやるからな。

「ちっ……。回復魔法か……無駄だ」

 いやいや、何が無駄だ、だよ。かっこつけている場合か。


「俺の、魔石は……砕けた。ちっ……もう……助からん」

 何だ? 魔石?

「下水の芋虫……、このステータスプレート……、お前のだって言っていたな……返すぜ」

 バーンが胸元に掛けていたステータスプレートを鎖ごと引き千切り、俺に手渡してくる。いやいや、お前、何言っているんだよ。


――[ヒールレイン]――


 俺は、もう一度、バーンへと癒やしの雨を降らせる。いや、だから、ステータスプレートを渡している場合じゃ無いだろ。こんなの感動的でも何でも無いからな、止めろよ。お前、何、普通に負けてるんだよ。


「あいつら……元気でやって……」

 そのままバーンは動かなくなった。いやいや、え? マジで? いやいや。お前、死んでも死にそうに無いようなヤツじゃん。え? マジで?


 いやいやいや、おかしいだろ。


 騎士鎧は両手剣を地面に突き立てたまま動かない。


 ちっ、ああ、そうだよな。まずはコイツに勝たないとな。


 俺はバーンが握ったままのステータスプレート(黒)を見る。こんな、こんな形で戻ってきて欲しくなかったな。短い間だったけど、バーンとは一緒に戦ったこともあるからなぁ。ま、それは《変身》した姿だったけどさ。


 俺は静かに、動かなくなったバーンに黙祷する。そして、硬くなっているバーンの手をゆっくりと開き、ステータスプレート(黒)を取る。


 バーン、確かに返して貰ったぜ。


 俺がステータスプレート(黒)を受け取ると、何やら輝き始めた。へ?




―4―


 変身が始まる。


 俺の体を無数の魔法糸が覆っていく。なんで、変身が始まったんだ。


 まだ、《変身》スキルが使えるような日数は経っていないはずだ。どどっど、どういうコトだ?


 手を伸ばし、繭から出て見れば、確かにいつものノアルジーの姿だ。メーターは倍くらいに伸びているな。ど、どどど、どういうコト? 制限時間があるのは変わらないけどさ、かなり時間が延びている。


 ま、まぁ、服を着よう。


――《魔法糸》――


 大量の魔法糸を紡ぎ、簡易的な服を作る。そしてッ!


――《換装1》――


 《換装》スキルを使いてぶくろに指を通す。


――《換装2》――


 《換装》スキルを使いフェザーブーツを履く。


――《換装3》――


 さらに《換装》スキルを使い赤竜の鱗衣を装備する。その上から夜のクロークをマントの代わりに羽織り、女神セラの白竜輪を風に靡くマフラーのように装備する。


 いつものノアルジースタイルだ。

「エミリオ、お前は端っこで見ていろ」

 さっきまで一緒に遊んでいた羽猫に声を掛け、待機させる。バーンが負けるほどの相手だからな、ちょっと舐めていたかもしれん。


「行ってくるぜ、バーン」

 さあて、行ってきますか。


 と、ちょっと待て。せっかく《変身》したんだから、前回、手に入れた謎の小瓶を鑑定してから戦うか。アレ、中級鑑定では鑑定出来なかったからな。ちょうど、騎士鎧も待ってくれているしさ、うん、先に鑑定しよう。何か戦いに有利になるアイテムかもしれないし、さ。


 魔法のリュックから謎の小瓶を取り出し、そのまま赤い瞳で見つめる。


【エリクサー】

【壊れた魔石を修復する霊薬】


 ん? んん?


 何だろう、コレ。そう言えばバーン君、魔石が壊れたって言っていたな。


 えーっと、うん。


 何だろうなぁ、コレ。


 誰かが筋道でも作ったというか、タイミングが良すぎないか。狙いすぎだろう。運が良いというか、ご都合というか。いや、でもさ、ご都合だろうと、何だろうと、それで助かるのかもしれないなら、使うべきか。


 俺は動かなくなったバーンの口を無理矢理こじ開け、その中に小瓶の中身を突っ込んだ。コレで助かれば良いんだけどな。まぁ、助かっても、このステータスプレート(黒)は返さないけど、な!


 って、アレ? ステータスプレートの形状が変わってる。何だ? 黒と白が混ざったような……。もしかして《変身》に巻き込まれたから、作り替えられたのか?


 いや、何だ、コレ。


 俺の頭の中に、無数の魔法の情報が。も、もしかして、バーンの力を取り込んだのか? この世界の人たちってステータスプレートに力を溜めているとか? いやいや、そんな馬鹿な。


 でも、コレ。


――[ファイアボール]――


 右手に火の玉を浮かべる。


――[ウォーターボール]――


 左手に水の球を浮かべる。


 うん、本来、使えないはずの相反する属性の魔法が発動出来る。ま、ま、間違いない。バーンの使えた魔法が全部、使えるぽいぞ。しかも相反した属性でも関係無しだ。ステータスプレート(黒)にデータを移行せず、ステータスプレート(金)を持ったまま変身したから、情報が混ざっておかしくなったのか? そんなゲーム的な……。


 いや、コレは、この騎士鎧との――ダークロードとの戦いに有利になったと前向きに考えるべきだな。


 さあて、待たせたな。いや、ホント、律儀に待ってくれてるんだけどさ。


 次は俺が相手だぜ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ