5-147 登録手続き
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――《転移》――
《転移》スキルを使い自宅へと戻る。さあて、と。まずは冒険者ギルドに、スカイのトコロに行きますか。今回は、ちょっと確認したいことがあるからな。
14型を引き連れスカイの居る冒険者ギルドに向かう。自宅の敷地内に冒険者ギルドがあるって、凄い不思議な気分だよなぁ。
冒険者ギルドの中に入ると数人の猫人族が忙しく働いていた。ああ、人が増えたのか。冒険者の姿は……見えないな。
「お帰りなさいませ、帝都冒険者ギルドへ……え?」
こちらに気付いた猫人族の女性がお辞儀をしようとして、そのまま固まる。と、すぐに隣に居た同僚が固まっている猫人族の女性の脇腹を肘で小突いた。
「有名なチャンプだよ」
「え、ええ? 魔獣にしか見えない」
俺ってば、相変わらず帝都ではチャンプ呼びなんだなぁ。
「マスター、あの者たちには教育が必要なようです」
背後の14型が、一歩前に出て、そんなことを呟いていた。いやいや、君はすぐに手を出そうとするなぁ。
『いや、必要無い』
俺が14型に天啓を飛ばすと、14型は1つ軽く頷き、すぐに後ろへと下がった。まぁ、俺はここのオーナーだから舐められないようにするのは重要かもしれないけどさ、正直、あんまり関わりがないから、どうでも良いというか、なるようになるだろ的な感じなんだよなぁ。と、それよりも、だ。
『すまないが、スカイは居るだろうか?』
俺が天啓を飛ばすと、何かの書き物作業をしていた猫人族の1人が顔を上げた。
「スカイさん? 何か外回りの仕事だって出掛けたままです」
「まだ戻ってきていないよね」
「遅いよね」
そうか、スカイは居ないのか。
「マスター」
14型が俺に顔を近づけてささやく。はい、14型さん、どうしました?
「すぐに連れてくるのです。マスターはこちらでお待ち下さい」
へ? ど、どういうコト?
俺が問い質すよりも早く14型は消えていた。は、早い。ホント、行動が読めないなぁ。
「あ、チャンプどうぞ」
猫人族のお姉さんが並んでいるテーブルの1つに案内してくれる。いや、俺、座るのキツいんですけど。
俺がテーブルの前で立って待っていると、もう1人の猫人族のお姉さんが陶器の器に入った飲み物を持ってきてくれた。更に俺の体型だと飲みにくいと思ったのか、ストローのようになっている何かの植物の茎も刺してくれる。おー、サービスが行き届いているなぁ。
ちゅうちゅうちゅう。
俺が飲み物を飲みながらくつろいでいると、冒険者ギルドの扉が開いた。そこには凶悪な篭手側の手でスカイを持ち上げて運んでいる14型が居た。
「マスター、予想通り、食堂でサボっているところを連れてきたのです」
あー。そりゃ、不味いな。
いや、何だ。スカイ、お前、ホント、首になるぞ。
「あ、オーナー、違うんだって。ちょっと外回りが終わった後に休憩していただけ、そうだよー」
そうか、そうだよな。で、冒険者ギルドの仕事に外回りなんてあるのか? 何を外回りするんだ? はぁ、コイツ、一度痛い目に合わないと駄目なんじゃないか? まぁ、それは、いいか。スカイの冒険者ギルドがどうなっても俺には余り関係がないからな。それで、だ。スカイ君には、ちょっと聞きたいことがあったんだよ。
『スカイ、良いか?』
俺が天啓を飛ばすと犬頭のスカイが14型に持ち上げられたまま、コクコクと何度も頷いた。
「え、お、オーナー、まさか、く……」
いやいや、お前を首にするとかそういう話じゃないからな。それに何度も言うけどさ、俺にそんな権限はないからな。
『いや、ステータスプレートの移行について聞きたいのだが』
「何だ、そんなことか……って、駄目だよ。あんまり詳しい内容は、話したら俺が消されちゃうよ」
14型に持ち上げられている犬頭のスカイが必死に暴れている。そうか、消されるのか。冒険者ギルドは怖いなぁ。
『いや、多分、それほど難しい話じゃない。例えば、ステータスプレートを銀から金に移行したとすると、最初のステータスプレートは再利用出来るのだろうか?』
俺の天啓を受け、スカイが14型に持ち上げられたまま首を傾げる。いやいや、14型さん、いい加減下ろしてあげようよ。
『データを移行すれば、最初のステータスプレートは未登録状態になるのでは?』
スカイが再度、首を傾げる。
「チャンプ、良くわかんな……いてて、いてぇ!」
14型が持ち上げたスカイを締め上げていた。いやいや、14型さん、話が続かなくなるから止めて、止めてー。
『一度登録されたステータスプレートを未登録状態にする方法を探しているのだ』
データ移動した後は未登録状態になるんじゃね、って思いついたワケよ。それが出来るならバーン君からステータスプレート(黒)を返して貰うことが出来るんじゃないか?
「うーん、確かにさ、ここだけの話だけど、新しいのを作ったら、前のは再登録出来るようになるから冒険者ギルドで回収して再利用しているよ」
あ、やっぱり? それなら、スカイに頼んで裏から手を回して貰えれば、何とかなるか?
『それを、こっそり譲って貰うことは可能か?』
「う、うーん。さすがにそれは不味い気もする」
あー、やっぱり不味そうか?
「ま、でもオーナーの頼みじゃん。多分、大丈夫、大丈夫」
そんな簡単に、大丈夫なのか? スカイが言うと凄い不安だなぁ。
「不正が行われてます」
「このギルド内で不正の会話が堂々と」
「どうします?」
猫人族のお姉さんたちの声が丸聞こえだ。いやまぁ、確かに不正なんだろうけどさ。持ってて良かった、ギルドの知り合いッ!
「でもさ、チャンプ、あいてててっ」
またも14型さんがスカイを締め上げていた。いや、そういうコントはいいからさ。
「はうはうはう、ふぅふぅ」
スカイ君、息が荒いけど大丈夫かね。
「で、でもさ、オーナー。ステータスプレート(銀)からステータスプレート(銅)みたいな感じで下への登録は出来ないけど、大丈夫?」
ん?
んん?
ちょっと待て、ちょっと待て。
ステータスプレート(黒)って金や銀より下ってコトはないよな。
……。
つまり、この方法では黒よりも上のステータスプレートを見つけないと駄目ってコトか? いやいや、それが見つかったら黒にこだわる必要無いじゃん。
はぁ、結局、無理じゃん。いい案だと思ったんだけどなぁ。




