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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
450/999

5-144 名も無き王の墳墓9階層

―1―


「ちっ。レーンとセッカは後方支援、ジンは俺とともに来い」

 バーンの言葉にパーティが動き出す。

「バーン、私はー?」

 探求士の少女が短剣をクルクルと回しながらバーンに問いかける。

「お前は好きにしてろッ! それと紫炎のバーンだっ!」

 一瞬、バーンが振り返り、探求士の少女に叫ぶ。と、そこへドリアードの枝が迫る。しかし、その枝を飛んできた矢と短剣が跳ね返す。

「紫炎のバーン様、油断、油断」

「油断してるよなぁ」

 その言葉を聞いてバーンが舌打ちする。そして、そのまま持っていた長剣に紫の炎を宿す。おー、長剣がメラメラと燃えているな。魔法剣なのかな?


 バーンが炎の剣でドリアードを切り裂く。一緒に駆けていた侍の人が持っていた刀を地面に叩き付けると周囲に水の波紋のようなモノが広がった。そして、そのまま刀を腰に構え直し、高速の突きを放つ。突きがドリアードを削り、木片の華を咲かせていく。


 と、バーンたちの戦いを見ている場合か。俺の方も戦わないと。目の前に迫る木の枝を回避しながら、考える。いやあ、ホント、これ、どうしよう。待っていたらバーン君たちが全部倒してくれそうだけどさ。さすがに全部任せるのは、どうかと思うワケよ。でも、氷の魔法も、氷でエンチャントした真銀の槍も、風属性がメインの真紅妃も、全部、効果が無いんだもん。頼りにしていた14型の怪力も封じられている状態だしさ。って、うん? 属性? ぞくせい?


 全部、風が混じっているじゃないかッ! コレ、攻撃が効かないのってさ、コレが原因だよな。間違いないッ! ああ、もうッ!


――[アシッドウェポン]――


 真銀の槍を覆っていた氷が砕け散り、酸に覆われる。俺は、そのまま目の前に迫っていた木の枝を真銀の槍で斬り払う。おー、スパスパと。イケる、イケるじゃん。やはり、属性が原因であったか。

 俺は木の枝を斬り払いながら、真紅妃を自分の手に持ち直し、サイドアーム・アマラを使って魔法のウェストポーチXLの中から金剛鞭を取り出す。持ってて良かった予備の武器ッ!


――《ゲイルスラスト》――


 放たれた金剛鞭が木の枝を打ち砕きドリアードの体を凹ませる。俺はさらに金剛鞭を何度も叩き付ける。ホント、この武器、剣なのに棍棒みたいだよなぁ。真銀の槍で枝を斬り払いながら、金剛鞭を何度も叩き付けているとドリアードの動きが止まった。よっし、1匹、打倒。と、次は14型を助けに向かうか。まだ木の枝に絡まって遊んでいるもんなぁ。


 そこで俺の視界が回転した。へ? 気付くと俺は地面に寝転がっていた。な、何だ、何が起こった? よく見れば、俺の足に草で作られた輪っかが引っかかっていた。うお、コレに引っかかって転けたのか。びっくりしたな。


 転けた俺の上に赤い線が灯る。それを追いかけるように無数の尖った木の槍が降り注ぐ。うお、不味い。コレは、魔法か? 魔法だよな? 魔法であってくれッ!


――[ウォーターミラー]――


 とっさに水の鏡を張る。木の槍が水の鏡によって跳ね返り、バーンたちパーティの元に降り注いだ。あ、しまった。いやいや、狙ったワケじゃ無いからね。それにAクラス冒険者のバーン君たちなら余裕だよね? ね?


「ちっ! なぎ払うっ!」

 バーンの長剣が弧を描き木の槍を打ち消していく。侍の人も何だかよく分からないが、刀で斬り払っていた。おー、大丈夫そうだ。良かった、良かった。


 俺は足に絡みついていた草を真銀の槍で斬り払い起き上がる。まぁ、芋虫スタイルでも余裕だけどさ。


『14型、大丈夫か』

 無数の枝が絡みつき身動きの取れなくなっていた14型に天啓を飛ばす。返事の代わりか、中で枝を引き千切っているであろう音だけが返ってきた。大丈夫そうだな。


 酸に覆われた真銀の槍を振るい枝を斬り裂いていく。枝が斬り払われ、中から凶悪な牙が生まれる。そして牙の先が――14型が飛ぶように絡みついた枝を引き千切り姿を現す。そして、そのまま駆け、ドリアードの腹部分に凶悪な篭手を突き刺す。左のボディブローか。木が砕け、大穴を開ける。そのままドリアードは動かなくなった。一撃かよ。


 14型がこちらへと振り返り、左手だけでスカートの裾を摘まみお辞儀をする。さ、さすがは馬鹿力だなぁ。

「マスター、心配をおかけしました」

 いや、別に心配してないよ。それよりも残りをどうするか、だな。


 俺が全体の戦況を見ようと、見回すとバーンたちのパーティが残りの4体も倒しきろうとしているトコロだった。へ? マジかよ。早いな。さすがに人数が居るパーティは違うなぁ。




―2―


「ちっ。おい、下水の芋虫!」

 バーンが俺に声を掛けてくる。はいはい、何でしょう。

「こいつらを活性化させたのはお前かっ!」

 活性化? まぁ、先制攻撃をしたのは俺だな。

『ああ』

 俺が天啓を飛ばすとバーンは伸びた長髪をガシガシと掻き、そして大きく舌打ちをした。

「これだから分かってないヤツは嫌なんだ。ちっ。ルールだからな、素材はお前らが持っていけ」

 ん? どういうコト? 素材をくれるってコト? いや、この状況では、さすがに貰えないだろ。

『自分たちは倒した2体分で充分だ』

 俺が天啓を飛ばすとバーンが大きく髪を掻き上げた。

「ちっ。雑魚は素直に貰っておけ」

 うーん、何だか、悪いなぁ。って、そうだ。バーン君に会ったら聞いておきたいことがあったんだ。


『素材は全部譲ろう』

「ちっ、だからよ!」

『いや、聞いて欲しいのだが、それよりもバーンに聞きたいことがあるのだ』

 俺の言葉にバーンがニヤリと口の端を上げ笑う。

「下水の芋虫ごときが、俺に、交渉か? いいぞ、言ってみろ」

『バーン、その黒いステータスプレートは何処で手に入れたのか教えて貰えないだろうか?』

 俺の天啓を受け、バーンが懐から黒いステータスプレートを取り出す。

「まず、下水の芋虫。俺は紫炎のバーン様だ。馴れ馴れしく呼ぶな」

 はいはい、そうだね。紫炎のバーン様だね。で、何処で手に入れたんだよ。

『教えて貰えないだろうか?』

「何故、お前に言う必要がある?」

 バーンがニヤリと嫌みたっぷりの顔で笑う。こんにゃろ、ムカつく顔しやがって。


『以前、自分は黒いステータスプレートを持っていたのだが、魔人族に奪われてしまったのだ』

 俺の天啓を聞きながらバーンが黒いステータスプレートを掌の上でクルクルと回している。

「なるほど。それが、これだと言いたいのか。ちっ。そういうことか」

 バーンは何かを理解したのか、苦い顔でこちらを見る。

「下水の芋虫、お前の話は分かった。確かに、これはお前が持っていた物かもしれないな」

『ならば』


 俺の天啓をバーンが片手を突き出し、止める。

「もう俺が登録した後だ。分かっているんだろう? そうなっては、もう無理だ。お前がやっているのは納得したいだけの行動か?」

 へ? 無理なのか? 登録したら無理なのか? いや、でも、それなら、俺で登録してあったんだろうから、バーンが登録出来たのはおかしいじゃないか。


「まぁいい。ちっ。話してやる。確かに、こいつは魔人族が持っていた」

『それは狐目の魔人族の男か?』

 俺の天啓にバーンが首を振る。

「いや、違うな。何処かで受け渡しがあったのかもしれんな」

 そこでバーンがため息を吐く。

「俺が手に入れた時は未登録の状態だった。魔人族はステータスプレートが使えないから当然だな。まぁ、知っているだろうが、ステータスプレートは持ち主が死ねば、未登録状態に出来るからな。そうやって死体から漁った物だと思ったんだよ」

 いやいや、そんな情報知らないんだけど。そう言えば冒険者ギルドでは、冒険者の死体を見つけたらステータスプレートは持ってきて下さいって言っていたような……。つまり、再利用しているのか?


「これで気が済んだか?」

 う、うーん。何というか、納得出来ないけど、納得するしか無いというか、やるせないなぁ。俺がもう一度、黒のステータスプレートを手に入れるには、バーンを殺して未登録状態にするしかないのか? いや、さすがにそれは、なぁ。


「やはり、素材は、下水の芋虫、お前が持っていけ」

 そのままバーンが俺の横を抜け、歩いて行く。


 仕方ない。


 気持ちを切り替えて、頑張るか。まぁ、また黒のステータスプレートが手に入るかもしれないしさ、うん。そうだよ、この世界に1個しか無いって決まったわけじゃ無い。気持ちを切り替えていこう。

2016年4月18日修正

呼びの武器 → 予備の武器

気が晴れたか? → 気が済んだか?

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