2-38 暗算
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さあ、楽しい楽しい買い物タイムだ。
さっそく鍛冶屋です。
『参ったぞ』
奥からやれやれと言った感じでホワイトさんが出てくる。
「お前、ホント偉そうだよな」
他にお客いないじゃん、いないじゃん。
『矢筒を買いたいのだが。後、鉄の槍と鉄の矢も欲しい』
「矢筒か……何個かあるが全部見るか?」
俺は頷く。
「仕方ねぇなぁ」
ホワイトさんが奥から4つの矢筒を持ってきてくれる。
「とりあえず説明するぞ。最初が竹の矢筒、鉄の矢なら4本ほど入る。金額は1280円だ。安くて軽いのが売りだな」
銅貨2枚か……安いけど、これは要らないな。鉄の矢4本で何が出来るってんだ。
「次が皮の矢筒だな。軽くて丈夫、鉄の矢なら12本ほど入る。金額は3840円だ」
銅貨6枚ね。2本しか増えないって……要るか?
「次がオススメの鉄の矢筒だな。重さはあるが鉄の矢が16本入るな。価格は10240円だ」
銀貨2枚か、一気に高くなったな。にしても16本か……それでも物足りない気がするなぁ。
「最後が魔法の矢筒だな。軽いし矢も32本入るぜ。金額は163840円だな」
小金貨4枚ね。頑張れば買えそうな金額だけど……それは、まだまだ先だな。
『鉄の槍と鉄の矢筒と鉄の矢を10本貰おう』
「まいど、38400円だな」
えーっと、38400円だと銀貨7枚と銅貨4枚かな……。
【暗算スキルが開花しました】
【暗算スキルの開花に伴い異能言語理解スキルと連動します】
は? どういうこと? 買い物の度に暗算を繰り返していたからスキルとして開花したのか? というか、効果が分からない……。
まぁ、暗算スキルは後で考えるとしよう。俺は小金貨を渡し、お釣りを貰う。
【鉄の矢筒】
【鉄で補強され沢山の矢を入れることが出来るようになった矢筒。木の矢なら48本、鉄の矢なら16本程度】
―2―
次はお隣の服飾店に。
「いらっしゃいませ、ラン様」
普人族の女性店員さんが挨拶をしてくる。お、ちゃんと憶えていてくれたのか。店員の鏡だね。
『麻のベストを頼みたい。後、マントはあるだろうか?』
「麻のベストですね。2560円(銅貨4枚)になります。後はマントですね。マントも銀糸製と麻糸製があります。銀糸製ですと81920円(小金貨2枚)、麻糸製ですと5120円(銀貨1枚)になります」
うお、字幕に変化が。円と通貨の自動変換がされるようになっているぞ? もしかして暗算スキルの効果ってコレか? いやまぁ、便利だし、最初に欲しいって願っていたけどさ――なんというか、今更な気が……。
まぁ、小金貨は持っていないし、素直に麻のベストと麻のマントを買うことにしよう。
『麻のベストと麻のマントを貰おう』
俺は銀貨2枚を渡し、銅貨4枚のお釣りを貰う。にしてもお店の人たちはすぐにお釣りを出してくるし、細かいお金を沢山持っているんだな。……聞いてみようか。
『細かいお金を沢山持っているようには見えないのだが、すぐにお釣りが出てくるのだな』
「え? ああ、そうですね。見慣れない方からすると不思議に思われるのでしょうか?」
はい、不思議です。
「それなり以上の商人は必ず持っているのですが、小さな――Sサイズを4種類だけ入れることが出来る魔法の財布と言う物がありまして……それを使っているのです。魔法の財布も入れ物系の魔法具なので登録者しか開けることが出来ません。盗まれる心配もなく安心してお金を所持出来る為、非常に重宝しています」
へぇ、便利だな。
『ちなみに幾らくらいするのだろう?』
「そうですね……私は1310720円(金貨4枚)で購入しました」
高い、超高い、べらぼーに高い。でもあると便利なのも分かるんだよなぁ。これもいつか欲しいリストで。
「あ、そういえば……今日、と言いますか、今、入荷したばかりなのですが、シルバーウルフの毛皮で作られた銀狼のマントも提供できますよ」
……それ、俺が売ったヤツじゃないか。時間的にそうだよね。今さっき売ったヤツだよね。
『ちなみに価格は?』
「最近だとシルバーウルフ自体の素材が貴重になっていますので40960円(小金貨1枚)ですね」
……本体全部で銀貨4枚で売ったのに、毛皮だけで小金貨1枚になるのかよ。ぼったくりかよッ! この世界、一番儲けているのは商人だわー、冒険者とか足下を見られて終わりだわー。
『素材の持ち込みは可能か?』
「はい、大丈夫ですよ。その際はお安く作らさせていただきます」
……次は換金せずに持ち込もう。くっそ損した、損したッ!
『銀狼のマントは……ま、また機会があれば、な』
うーん。今度、銀色狼を狩ったら素材の持ち込みだな。
「麻のマントは手直しの必要がありませんので、今お渡しできますが、如何なさいますか?」
あ、マントはそのままだから、今、貰えるのか。
『うむ、戴こう』
俺は麻のマントを受け取る。
さっそく試着室で付けて貰う。
このマントは首部分に巻いて羽織るタイプだった。勇者とかが付けているようなヒラヒラとした空でも飛べそうなマントではなかった。なんだろう、ポンチョとかレインコートとかって言った方が合っている気がする。
麻生地だからなのか、ごわごわとしたマントだ。特に全裸で着込んでいる俺にはチクチクとして余り着心地が良い物ではない。ベストはそうでもなかったんだけど加工の違いだろうか。
まぁ、何にせよ、全裸卒業である。少しは文明人に返り咲いたんだろうか。
……裸マントって完全紳士スタイルだよね。
コレ、自分が芋虫じゃなかったら通報モノだよね。芋虫で良かった、芋虫万歳。
さあ、用事も済ませたし、後は宿に帰って明日の準備だな。
明日は世界樹の攻略だ。
3月10日修正
金額は1280だ→金額は1280円だ
?」 はい、不思議です。→改行もれを修正
金額の表記をルビから()に変更(PCからだとルビが読めなかったため)