5-135 名も無き王の墳墓7階層
―1―
次々と矢を放つ。放たれた矢がサンドワームの水晶体を砕いていく。さあ、残り1個だぜッ!
と、そこでサンドワームが動きを見せる。大きく体を揺らし、砂をまき散らす。サンドワームを中心に大きな砂の嵐が巻き起こる。俺は、突如、生まれた砂嵐に巻き込まれる。ぺっぺっぺ、何だコレ。砂嵐で前が見えないぞ。そのまま、何かが蠢いている気配だけが続く。って、まさか、逃げようとしているのかッ!
この砂嵐で見えない状況で、どうする、どうする? 俺には心眼なんて無いし、うーむ。もう、ここはアレしか無いよね!
――《魔法糸》――
魔法の糸を伸ばす。さあ、行くぜ。
――《チェイスアロー》――
砂嵐の中、矢がぎゅんぎゅんと動きを変えながら、何処かへと飛んでいく。と、見ている場合か、逃げられる前に次の行動を取らないとな!
――《飛翔》――
砂嵐の中、《飛翔》スキルを使い伸びた魔法糸の先へと飛ぶ。この魔法糸の先に――そこへ向かえばヤツの水晶体へと辿り着けるはずッ!
砂嵐の中、砂地へと潜ろうとしている何かの黒い影に辿り着く。さあ、ここだッ!
――《スパイラルチャージ》――
魔法糸の先、突き刺さった黒金の矢へと目掛けて螺旋を描いた真銀の槍をねじ込む。確かな手応え。そして何かが砕け散る音。それと共に砂嵐が止む。
俺は真銀の槍を引き抜き、飛び降りる。サイドアーム・ナラカに持たせた真銀の槍を振り払い、振り向く。
俺の目の前でサンドワームが形を変え、砂となり崩れ落ちていった。へ? 砂、なんで、砂に?
砂とともに俺が放った矢と魔石がこぼれ落ちてくる。あ、魔石。魔石はあるんだな。よっしゃ、魔石ゲットだぜ!
―2―
さてと、サンドワームも倒したからね。気になっていた櫓まで飛びますか。
――《飛翔》――
《飛翔》スキルを使い櫓が建っている高台の上に上がる。何だろう、ここ? ちょっと、暗くて見えにくいな。羽猫がライトのスキルが使えるようになるまで待つか。
――《ライト》――
高台の上でしばらく待ち、羽猫にライトを使って貰う。羽猫の光によって照らし出されたのは櫓と言うよりは小さな小屋のようだった。俺は開いている入り口部分から、小屋の中へと入る。
中には上に続く縄ばしごと下へと降りる螺旋階段があった。ここが下へ降りる階段か。円形の高台をくり抜いて下へ降りる螺旋階段を作っているのかな。まぁ、でもさ、最初はとりあえず縄ばしごの先に行ってみるかな。って、俺の体型だと梯子の上り下りは無理だな。仕方ない。
――《浮遊》――
《浮遊》スキルを使い、上昇していく。潤沢なMPがあるからこその力業だぜ!
上の階へと浮かび上がっていくと、すぐ目の前に棍棒を持った腐った体の巨人が居た。ふわふわと浮かんでいるこちらに気付いたのか、巨人が棍棒を振り回す。いやいや、こんな狭い場所で振り回しているんじゃねえよ。建物の壁が削れてるじゃん。と、同時に俺の視界に横からの赤い線が走る。やべっ。
――《魔法糸》――
背後の壁へと《魔法糸》を飛ばし、すぐさま後方へと飛ぶ。俺の目の前を棍棒が通り過ぎる。何だよ、この腐った巨人は。腐りすぎて脳みそがやられているのか?
俺はそのまま壁に足をつけ、その反動で前へと飛ぶ。
――《飛翔撃》――
光る三角錐となって巨人に真銀の槍を突き刺す。さらに俺の頭の上の羽猫が飛びかかり、腐った巨人を鋭い爪で斬り裂く。俺が真銀の槍を引き抜くと、羽猫も腐った巨人の顔から、俺の頭の上へと飛び移ってきた。はいはい、飛ぶよ。そのまま、後ろへと跳ぶ。あ、やべ。後ろに飛んだら下に落ちるじゃん。
――《魔法糸》――
魔法糸を天井へと飛ばし、そのままぶら下がる。って、まだ腐った巨人は生きているか。いや、生きているのかどうか分からないが、まだまだ元気に動いているな。
――《ウォーターカッター》――
高圧縮した水をレーザーのように飛ばし、腐った巨人を貫く。これで、どうだ?
しかし腐った巨人は痛みを感じないのか、穴の開いた体のまま棍棒を振り回してきた。ちょ、お前、それはッ! 赤い線とともに棍棒が迫り、俺の体が吹き飛ぶ。とっさに魔法糸を外し、その勢いのまま、転がる。あいてて。
俺の眼前に棍棒を持った腐った巨人が迫る。
――《百花繚乱》――
真銀の槍から高速の突きを放つ。棍棒を削り、腐った肉片を飛び散らせ、腐敗した華を咲かせていく。うおおおおぉぉぉ! ってなもんよッ!
はぁはぁ、狭い場所で襲ってくるとか、ホント、酷いな。と、とりあえず回復しておくか。
――[ヒールレイン]――
癒やしの雨を降らせ、一息つく。ふぅ。
腐った巨人を倒し、一息ついた後、俺は狭い室内を見回す。おや? 奥に木箱があるな。もしかして、さっきの巨人はコレを守っていたのかな。となると! とりあえず罠が無いか鑑定だよな。
【テレポーター】
あ、うん。これは開けたら駄目なヤツだ。コレ、開けたら終わるよな。さすがに色々、無謀なことをやって来た俺でも、コレは開けられない。あー、くそう、中身が気になるなぁ。
はぁ、仕方ない。下に降りるか。