5-116 名も無き王の墳墓2階層
―1―
――《ライト》――
羽猫から光が放たれ、周囲を明るく照らしていく。
広がった光の中、俺の目の前にはズタボロになった2匹のネザーブレイドが居た。こうしてみると、アイスストームの威力を実感出来るなぁ。ホント、現段階では最強の攻撃方法だよな。地上とか、広い場所って感じでさ、使用場所を限定されることを除けば、ホント、いい魔法だよね! オレサマ、サイキョウ。
にしても、酷い有様だ。ネザーブレイドの長い手足は折れ曲がり、氷の塊によってか、手に持っていた棍棒も砕け、周囲に破片が散らばっている。こうしてみると、持っていた棍棒って骨っぽいなぁ。にしても、ここまでボロボロでも買い取って貰えるんだろうか? とりあえず魔法のリュックに入れておきますかね。で、魔石か。えーっと、この人型ぽい形状を斬り裂いて、中から魔石を取り出すのか? うーん。やっぱり、こういう時に14型が居ればッ! って思うよなぁ。今度、連れてきますかッ! ま、今回は俺が頑張って解体するけどね。
ネザーブレイドの体を切り開き、魔石を取り出す。やっぱり、体の中には魔石があるんだな。まぁ、いくら人型って言っても魔獣だから当たり前か。
で、だ。
この2体が持っていた、袋は無傷なんだよなぁ。どんだけ丈夫な袋なんだって思うよな。こっちの方が武器よりも素材になるんじゃないか? ま、まぁ、気にしたら負けか。
で、袋だよ、袋。冒険者ギルドでは中身を見るなって言われたけど、これは見るしかないよなッ!
うんうん。さあ、開けるぞッ!
袋を開けて、中を覗く。
……。
しかし、中は空っぽだった。何だ、何も入ってないじゃん。何か、恐怖を呼び起こすような、そんな名状しがたいモノでも入っているかと思ったのに、俺は、がっかりだよ。
もう1個も開けてみるか。
……。
中には……カエルの置物が入っていた。へ? これ、カエルだよな? 陶器製ぽいけど、えーっと。この世界にカエルが居たことも驚きだけど、陶器製の置物が壊れずに中に入っていたことに驚きだよ。散々、叩き付けたり、地面をこするように引き摺っていたりしたのにさ、不思議だよな。周りの袋がそれだけ丈夫ってコトなのかなぁ。ますます、袋の方が素材になりそうな気がするんだけど、うーん。
まぁ、この置物、せっかくだから、持っていくか。
―2―
柱のある通路を探索し、下り階段と4つの扉を見つけた。通路をまっすぐ進めば下り階段があるとか、手抜き過ぎじゃないですかね。
これなら、駆け抜けるだけだからさ、ネザーブレイドを無視して下の階に降りるのもそれほど難しくないかもしれないね。ちょっと、通路は長めだけど、天井も高いし、通路の幅も広いからね。回避しながら、進むのは楽そうだ。
後は等間隔に扉が左右二つずつ、か。ま、せっかくだから、全ての部屋を開けてみますかね。
1階層側の扉から開けていく。まずは右の扉、と。右の扉は少し狭めの部屋になっており、そして、何も無かった。何だ、この部屋? 何のためにあるんだ? あッ! もしかして、ネザーブレイドから逃げるための部屋なのか? なんとなく、そんな気がするな。
では、向かいの部屋を開けてみますか。
扉を開けると、中には俺よりも一回り大きなカマキリが居た。うお、ま、魔獣かッ!
カマキリがすぐさまこちらへと大きな鎌の手を振り下ろしてくる。
――《払い突き》――
真紅妃で相手の鎌を打ち払い、一回転、そのままカマキリへと突きを放つ。真紅妃がカマキリを貫き、魔石を砕き、そのまま喰らう。そして、カマキリが動きを止めた。あ、やっちゃった。
カマキリの死骸から真紅妃を引き抜く。はぁ、魔石は手に入らなかったけど、コイツって何か素材になるのかな? うーん、丸ごと持って帰る? いや、でも2階層程度の魔獣だからなぁ。大きいサイズだから、魔法のウェストポーチXLにしか入らないだろうし、余り入れすぎると、いくら容量を増やしていると言っても、後で困りそうだし、うーん。よし、このまま放置しますかッ!
で、室内には何があるかな?
ちょっと広めの部屋の中には謎の金属で作られた小さめの箱が置かれていた。おー、宝箱だ。鑑定、鑑定っと。
【どくガス】
へ、へぇ。毒ガスかぁ。って、宝箱に必ず罠がかかっているんですけどッ! 罠ばっかりじゃん。まぁいいか。俺にはトラップの解除なんて出来ないし、サクッと開けますか。
真銀の槍を魔法のウェストポーチXLに仕舞い、サイドアーム・ナラカで宝箱を開ける。
宝箱を開けた瞬間、箱の中から黄色の煙が立ち上る。しかし、それだけで何も起こらない。あれ? 不発か。ラッキー。さあて、中には何が入っているかな?
謎の金属で作られた小さな箱の中には金色に輝く鍵が入っていた。えーっと、鍵? 何処の鍵? 何で、箱の中に鍵が? うーん。とりあえず鑑定しておく?
【金色の鍵】
【金色に輝く鍵】
あー、まんまですね。でも、金で作られているワケじゃないのか。また謎金属なんだろうか。金だったら換金が出来そうなのにね。ま、使い道が無いようならインゴットに作り直すかな。
―3―
次の扉を開ける。今度は左側を先に開ける、と、中は小さな部屋になっていた。あら? ここには何も無いのか。これ、クロスを描くような感じになっているのかな? となると向こうの部屋は少し広めの部屋で宝箱があるって感じなのかな。
じゃ、向こう側の部屋に行ってみますか。
そのまま向かいの部屋まで歩き、扉を開けると、中には無数のスケルトンが居た。奥には何やらローブを纏い、ガチガチと顎を鳴らしているスケルトンも居る。魔法を使うスケルトンか? いや、いくら広めの部屋だからって多すぎだろ。何匹居る? 10? 12? うじゃうじゃ居やがるッ!
天井は? 結構、高いな。これなら行けるッ!
――《飛翔》――
《飛翔》スキルを使い、一気に天井へと飛び上がる。いくぜッ!
――《スピアバースト》――
赤い光に包まれた真紅妃が骨を掻き分け地面に激突する。走る衝撃波。赤い衝撃波によって周囲のスケルトンが吹き飛んでいく。
奥のローブスケルトンだけ、まだ残っているか? いや、でもフラフラと今にも倒れそうだな。ローブの隙間からチラチラと魔石が見えている。
そのまま駆け、真紅妃でよろめいていたローブスケルトンの魔石を貫く。はい、お終いっと。
うん、まぁ、所詮2階層だからな。楽勝、楽勝。いくら数が多くても所詮スケルトン程度、楽勝ですよ。部屋の外で徘徊していたネザーブレイドと比べると、雑魚過ぎるよなぁ。敵の強さの差が大きすぎるぜ。
さてと、ここには何があるかな?
広めの部屋の中には、謎の金属で作られた小さめの箱があった。あー、ここにも宝箱があるんですね。で、また罠があるんでしょ? 俺は知っているんだ。
【どくガス】
はい、毒ガスっと。って、こっちも毒ガスかよッ! ま、開けるか。
金属の箱を開けると中から黄色の煙が立ち上がる。しかし、何も起こらない。えーっと、不発? まぁ、いいか。中は何だろうかー?
箱の中には陶器で作られた熊の置物が入っていた。あー、この世界にも熊の置物があるんだー。って、何コレ?