2-35 白米
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鍛冶屋ー、鍛冶屋ー。
『竹筒をくれ』
「と、いきなりだな、おい」
今日もりりしい犬頭のホワイトさんである。
「竹筒か、良いぜ。アレに使うんだろ? 4個で640円だ。何個いるんだ?」
何個か。何匹倒す予定かってことだよなぁ。まぁ、安いし2セット買っておくか。
『2セット貰おう』
「はい、まいど」
ホワイトさんが小さな竹の筒を8個持ってきてくれる。ちっちゃな蓋もしっかり付いている。試しに魔法のポーチSに入らないか、試してみたら入れることが出来た。と言うことで魔法のポーチに封印です。これ、素朴な疑問なんだけど金色の粘液が入った竹筒と空っぽの竹筒、別扱いなんだろうか。なんだろうなぁ。うーん、これが2種までだったなら、なぁ。
ま、まぁ、次だ次。
『後、弓はあるかな? あるならば、どんな弓があるかを教えて欲しいのだが』
「弓か、良いぜ」
そう言って奥から3種類の弓を持ってきてくれる。
「最初はショートボウ、軽くて取り回しの良さが売りだな。サブの遠距離武器として持っている冒険者も多いな。ちなみに10240円だ」
ふむふむ、銀貨2枚っと。これは初心者の弓に毛が生えた程度に見えるなぁ。
「次がコンポジットボウだ。鉄板と木を組み合わせて作られているので破壊力は結構あるな。サイズは小さく迷宮での使い勝手も良いが重く飛距離もそこそこって感じだな。価格は20480円だ」
銀貨4枚ね。サイズ的にはショートボウと余り変わらないように見える。加工はこちらの方が豪華だなぁ。
「最後にロングボウだな。距離も破壊力も、今回紹介した中では一番だな。だがまぁ、耐久性では一番劣る。乱暴に扱うと壊れるぞ。こいつも価格は20480円だ」
同じく銀貨4枚か。見た目は和弓によく似ており、2メートルはあろうかというサイズは凄い迫力だ。距離も破壊力もあるのは良いが壊れやすいと聞くと躊躇するなぁ。
「ちなみにオーダーで耐久力を上げた鉄製のロングボウなんて物も作れるぞ。その代わり熟練の弓士でも無いと引けないくらいのキロ数だがよぉ」
金額的にはショートボウだけど、まぁ、コンポジットボウだよなぁ。
『コンポジットボウを貰おう。後、鉄の矢も4本貰えるか』
くうぅ、鉄の槍が買えなかったか……。買うのは次だな。
「まいど」
銀貨5枚と銅貨2枚を支払う。
「今使っている弓はどうするんだ? 要らないなら下取りしとくぞ?」
お言葉に甘えて下取りして貰う。と言っても銅貨1枚にしかならないんだけどねッ!
矢筒に入らなくなった木の矢も引き取って貰った。こちらはお金にならなかった。廃棄処分っすかー。
次に買うのは槍と矢筒だな。それが終わったら服を買おう。そろそろ素っ裸は卒業したいです。
―2―
まだ少し早い時間だが宿に帰ってきた。
「おや、今日は早いね」
女将さんがテーブルを拭くなどの片付けをしていた。
『うむ』
「こっちはこれから晩の仕込みだよ。食事はそれからになるね」
スープか? スープだな?
『わかった、後で部屋に持ってきて貰っても良いか?』
「はいはい、後でステラにでも持って行かすよ」
ステラ……あー、あのぽっちゃりなおとなしい娘さんね。鑑定していたから名前は知っていたけど、女将さんから聞くのは初だなぁ。
俺は女将さんに向けて頷くと部屋へ。
部屋に戻った俺はとりあえず魔法のポーチSから竹筒を取り出し床に置く。さあ、こっそり水魔法の練習だ。
現在、最大MPは32まで増えている。
消費MPは念話が4秒に1。当初に予想していたとおり熟練度1000につき、1MP辺りの時間が1秒延びるようだ。
糸を吐く(今は魔法糸だが)の消費も一回につき1。これは6連続で発動させても、1回でも1だ。
サイドアーム・ナラカは発動に8MPを消費。一度発動させてしまえば消さない限りはMPの消費は無かった。ちなみに発動後は寝たりしても消えることは無い。
浮遊の消費MPは1秒に1。これも念話と同じで熟練度1000につき、1MP辺りの時間が1秒延びそうだ。
転移の消費MPは16。予想外に多かった。というか、転移も浮遊もスキル扱いなのにMPを消費するのが納得できません。
アイスボールの消費MPは一個2。俺は一度に6個浮かべることが多いから、それだけで12も消費です。今までの戦歴を考えるとMP消費と威力が合っていない気がする。
アクアポンドの消費MPは1でした。が、これ熟練度を上げると消費MPが増えそうな気がする。熟練度を上げると水たまりの規模が大きくなるんだけど、それに伴ってMPの消費が増えてる気がする。
スキル関係はMPを消費しないが、連続使用が出来ないって感じですね。
とまぁ、そんな感じで今まで知り得た情報をまとめてみる。うーん、メモ用紙でもあれば、こういうことをメモしておくんだけどなぁ。
――[アクアポンド]――
竹筒の中に水たまりを作ろうとするが発動しない。熟練度は増えているし、MPは消費しているのでこのまま続けることにする。多分、この魔法って、地面がないと発動しないんじゃないかな。
で、最大MPの増える法則だが、だんだん分かってきた。多分、MPを消費する行動をとると増えることがある、だ。後は枯渇させれば必ず1増える、だね。MPを消費する行動で増えるのは本当に稀みたいで枯渇させた方が効率が良いくらいだった。
コンコン。
と、そんなことをしているとドアをノックする音が。
『どうぞ』
入ってきたのはぽっちゃりな娘さん、ステラさんだ。
「あ、あの……置いときますね」
ステラさんは食事を置くとすぐに帰って行った。
さぁ、今日のメニューはなんだろうなぁ。何スープだろうな……って、おいッ!?
こ、これは……。
器に入った物を見て驚いた。こ、これは米か!?
びちゃびちゃとスープみたいに浸された白い米のような粒。見た目は米ぽい。おかゆみたいになっているな……。
ま、まずは食べてみよう。……一口。
こ、これはッ!?
……甘い。なんだコレ、甘い。おかゆに砂糖と蜂蜜を入れた感じだ。食えないことは無いけど納得出来ない感じだ。米っぽいのになぁ。
期待した分、凄いがっかりした。懐かしの白米にありつけると思ったのに……。まぁ、食文化の遅れている異世界だもん、米を白くなるまで削るなんて思い浮かぶわけ無いよな。もし米が出てきたとしても玄米じゃないとおかしいよな。見た目で期待した俺が馬鹿だったよ。
おかずも何も無く、晩ご飯はこれだけである。仕込みの準備をしてこれだけとか、おかしくない? 絶対、おかしいよ。
それだけ、この甘い米もどきの調理が大変なんだろうか。まぁ、こんな世界だし、甘味ってのは貴重なのかも知れないしなぁ。