2-34 竹筒
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マイコニドの経験値は64だった。MSPは2も増えている。……これ、ここで狩っていたらすぐにレベルが上がるんじゃね。
狩り場の中心を世界樹に移すべきだなぁ。なんでこんな旨味なのに他の冒険者が見えないのだろうか。レッドアイの時の事が頭を過ぎるが……まぁ、冒険者ギルドで聞いてみることにしよう。
サクサクと帰ることにしましょう。来た道を帰っていく。前回の時のように枝から飛び降りて一気に下まで到達、みたいなことが出来ないのは不便である。
あ、そうだ。ここで転移を使ったらどうなるんだろうか。
――《転移》――
俺の体が持ち上がり凄い勢いで上空へ。そのまま天井にぶつかり、落下し地面に叩き付けられた。うお、うお、死ぬかと思った。け、怪我は無いな。
あの勢いでぶつかって怪我が無いとか――も、もしかして、このスキルを使っている間は防御フィールドみたいな物に守られているのか? 落下時も無理に浮遊使わなくても良かったのか? うは、無駄なことをしていたのか……。ま、まぁ、勉強になったということで。今度からは着地時に浮遊スキルを使わなくても大丈夫ということが分かっただけでも良しとしよう。
うん、転移は天井があるところでは使えない、と。……意外と不便なスキルだなぁ。
魔獣を根刮ぎ狩りながら進んだはずなのに、帰り道にはヴァインが沸いていた。どこから出てきたんだ? 一本道なのに不思議なモノである。
まぁ、迷宮だから謎の力が働いているのだろう。
世界樹の外に出る。
帰りは急ぎ足で戻ってきたのだが、それでも往復3時間である。うーん、これ日帰りでは攻略しきれそうにないなぁ。迷宮内で一泊する準備も必要か……。
さぁ、今度こそ転移で里に帰ろう。
―2―
帰って来ましたスイロウの里。
まずは換金所です。
『換金をお願いしたい』
いつものように森人族のお姉さんに頼む。ホント、休み無しなんですね。
「はい、分かりました」
『後、魔法のポーチの亜空間の中に金色の粘液が入っているのだが』
「あー、はい竹筒を持ってくるので、そちらに移し替えて貰ってもいいですか?」
へ? 今、竹筒と言いましたか? 字幕では確かに竹と表記されている。うおぉぉ、竹があるのかッ! この世界にも竹があったのかッ!
タケノコ食べられるじゃん。
竹アーマーを作ることも出来るじゃん……って、作らないけどさ。
『すまない、この辺りでは竹が取れるのか?』
「いえ、この辺りでは取れませんね。北のフウアの里の特産品です。よく犬人族の方が鉄などと一緒に行商に持って来られるので、安価で手に入って重宝しているんですけどね」
なるほどー。この里の周辺では取れないとしても、竹が存在していたのは嬉しいなぁ。
『ちなみに竹筒は何処で買えるのだろうか?』
「あ、はい。ホワイトさんの鍛冶屋で買えますよ」
へ、鍛冶屋で竹が買えるのかよ。まさか、竹槍とか作ってないだろうな。あったら欲しいかも……ネタとして。
とまぁ、サイドアーム・ナラカを使い金色の粘液を竹筒に移し替える。
『この金色の粘液は何に使われるのだ?』
「これは火に弱い魔獣が多い世界樹攻略の必需品ですね。多くの冒険者が愛用しているのですが、武器に付けると一定時間、武器に火の属性を持たせることが出来るアイテムに加工が出来ます」
エンチャントアイテムになるのか。と言っても加工して――ということはそのままでは使えないってことか。
とりあえず換金しとこ。
ヴァインの種子:14個×640円=8960円
ヴァインの魔石:14個×640円=8960円
金色の粘液:5120円
マイコニドの魔石:2560円
竹筒:サービス
総計:25600円
銀貨5枚である。うはぁ、凄い儲かるんですけどー。や、槍、買っちゃおうかなぁ。これだけ儲かると明日も世界樹に行きたくなっちゃいますね。……明日は行かないけどさ。
うーん、これならヴァインの魔石は砕いても良いかな。早く弓士のスキルを取得したいしなぁ。
―3―
ある情報が欲しかったので冒険者ギルドへ。
『すまない聞きたいことがあるのだが』
「おう、ランじゃねえか」
居たのは眼帯のハゲのおっさんだ。うーん、ちびっ娘の方が物知りなイメージがあるから、このおっさんに聞いてみても良い物なのかどうか悩むなぁ。
「お前、もう世界樹に挑戦しているんだってな。さすがは俺が見込んだだけはあるぜ。普通の冒険者の何倍もの早さだぞ。やっぱり人と星獣様だと造りが違うのか? お前はこの冒険者ギルドの期待の星だぜっ!」
眼帯のおっさんがガハガハ笑っている。何このおっさん。調子良すぎない? 最初、すぐ死ぬからシラネ扱いしていたの、今でも憶えているんですけどー。
『ところで聞きたいことがあるのだが……』
「うん? なんだ」
調子の良いとこ悪いけどさ、聞きたいことがあるんだってば。
『世界樹の中で冒険者を見なかったのだが?』
「ああ、それか」
眼帯のおっさんが語ってくれる。
「世界樹に挑戦出来るような冒険者がまだ育ってねえのよ。逆に育った奴らはここを出て行くしな。丁度、その辺りの冒険者が居ねえのよ。狩り放題で良かったじゃねえか。ま、本来は、世界樹は2人以上で攻略するのが常なんだがな。まぁ、お前なら独りでも大丈夫だろ」
ホント、適当だなぁ。にしても人が居なかったのはタイミング的な事だったのか……ソロでも寂しくないもん。
と、本題、本題。
本当に聞きたかったのはそれじゃない。
『それとだが……この辺りで崖があるところをご存じないか?』
「崖なんて至る所にあるだろうがよ」
はーい、使えないわ、このおっさん、ホント、使えないわー。
「ん、まてよ……? お前が言っているのは、もしかしてあそこのことか」
お?
「フウロウの里行きが何で2日もかかるか知っているか? 直線距離ならすぐの距離だというのに、だ」
あ、そうなの? フウロウの里って実は近かったんだ。
「あそこには大きな崖があって、更にそこを根城にしているシルバーウルフの群れがいやがる。定期的に狩ろうとしているんだがよ、奴らも狡猾で上手くいってねぇ。仕方なく群れを避けて遠回りしているってワケよ」
シルバーウルフ? フォレストウルフがFランクの討伐クエストにあったな。それの上位種とかなんだろうか。
あー、でも、これ完全に当たりだよなぁ。すぐに居場所が掴めたのはラッキーだな。と言っても間違っている可能性もあるし、下見は必須か……。
『すまない、助かった。ちなみに情報料は?』
眼帯のおっさんは手を振る。
「いい、いい。これくらいはサービスの内だ。それにお前、ソフィアに本当に5120円渡しているそうじゃねえか、そのお釣り分ってことでいいぜ」
うん? どういうこと? そういえば字幕が5120円じゃなくて銀貨1枚ってなっていたよね。もしかして、アレって本当に銀貨1枚ってワケじゃ無くてそういう言い回しってだけなのか!? がーん、無知故に損をしていたってことなのかー。って、それならそれでちびっ娘も言えよ、教えてくれよ。素直に銀貨1枚渡しちゃってたじゃないか。
ま、済んだことは仕方ない。
次は鍛冶屋だな。竹筒も買わないと……。
……はぁ。
2015年3月10日修正
過ぎるがの前に空いていた無駄な空白を削除
2021年5月9日修正
合ったら欲しいかも → あったら欲しいかも