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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
396/999

5-92  謎は解けた

―1―


 大きな右の扉を押し開け、進む。一つ目巨人が出てくるくらいだから、大きいな。にしても扉は閉まっているのか……。これ勝手に閉まるのかな? ま、考えても答えが分かるわけじゃ無いし、進みますか。


 右の部屋に入る。天井が高く少し広めの部屋の中には壊れた家具や調度品が散らばっていた。これだけ壊れていると物としての価値はなさそうだよなぁ。で、正面と左手に扉、か。左側の扉は大きく、正面の扉は小さめだな。魔獣も居ないし、このまま進みますか。


 まずは大きめの左側の扉っと。左側の大きめの扉を押し開ける。


 扉の先はアーチを描く長い廊下になっており、その先に一つ目巨人が居た。あ、これはそっ閉じですわ。って、あのおっさん連中、ここに居たのを引っ張ってきたのか? というか、復活してません? してません?

 一つ目巨人が両手を交互に地面へと叩き付け、大きな声を上げる。おー、おー、威嚇してますね。って、ことは、こっちに気付いているってコトだよね。


「マスター、行きます」

 14型が一つ目巨人へと駆け、その足下へ。それを見た一つ目巨人が右手を振り上げ、そのまま14型へと叩き付ける。それを14型が両手を上げ、交差させて受け止める。受け止めた? 14型の速度なら、いくらでも回避出来るだろうに、何でだ?


 一つ目巨人が14型を叩き潰そうと力を入れる。14型が交差した腕で巨人の右手を挟み込み、そのまま受け止める。あ、もしかして、俺に攻撃させる為に受け止めているのか。


――《飛翔》――


 《飛翔》スキルを使い巨人へと駆ける。巨人が残った左手を振り回す。しかし、俺の速度に反応しきれていない。

 俺は巨人の左手をくぐり抜け、その肩に取り付く。


――《スパイラルチャージ》――


 巨人の肩から、その瞳へと真紅妃を捻り込む。赤と紫の螺旋が巨人の瞳を抉り穿つ。巨人が大きく動き、逃げようとする、が、右腕を挟み込んだ14型がそれをさせない。


 サイドアーム・ナラカを使い魔法のウェストポーチから真銀の槍を取り出す。


――《集中》――


 ぐらぐらと揺れる巨人の肩の上で集中してバランスを取る。


――《W百花繚乱》――


 暴れる巨人の上から真紅妃、真銀の槍が動く。穂先も見えぬほどの高速の突きが狙い違わず巨人の瞳を抉っていく。咲き乱れる赤の華。

 叫ぼうとした巨人の口をも槍が塞いでいく。


 14型が手を離すと同時に巨人が後ろへと倒れる。倒れ込む巨人の肩から飛び降り、着地する。しゅたっとな。弱すぎるぜー。って、まぁ、14型さんが動きを封じてくれていたから楽勝だったってのはあるんだけどね。


 さっそく一つ目巨人から魔石を取り出している14型を見る。なんだか、本当に14型が有能だ。これはどうしたことだ。

「マスター、どうしたのです? 私が有能すぎて驚いているのですか? 私は昔から有能だと思うのですが、今になって気付くとは……マスターも仕方ない人ですね」

 はいはい。


 じゃ、先に進みますか。




―2―


 扉を押し開け、その先へと進む。扉の先は左右に3個ずつの扉が付いた廊下になっていた。個室かな。計6部屋か。

 一個一個開けていきますか!


 全ての部屋を探索し終わるが、何も無かった。いやね、ジャイアントラットが居たり、世界樹に居たヴァインの亜種が生えていたり、ジャイアントスパイダーが居たりはしたよ。でも、肝心の宝箱とかが無いんですけど! 崩れたベットや布の切れ端とかさ、そんなのばかり。もしかして客室だったのかなぁ。


 元の部屋に戻り、奥の小さな扉を開ける。この扉の先で右側の部屋の探索は終わりか。


 部屋の先は、一段低くなっており、その先にかまどのような物が作られていた。これ、何個かあるけど、もしかして調理場? うーん、魔獣も居ないし、ここもハズレか?

 並んでいるかまどを見て回ると、そのうちの1つ、1番奥の大きなかまどがおかしいことに気付いた。かまどの薪を入れる部分の中が穴になっている。隠し通路か? って、あー、これ、もしかして地下と繋がっているのか。なーんだ、やっぱり、ここはハズレっと。


 仕方ない大広間に戻るか。


 吹き抜けになっている大広間に戻り、左の扉へ進む。


 左の扉の先は先程の大広間と同じような大きさの部屋になっていた。中央に壊れた円形の机が見える。と、その周りに牛の死骸があるな。他の冒険者が倒したのだろうか? って、ここもハズレか。ここは会議室だったのかねぇ。ま、仕方ない、大広間に戻るか。


 大広間に戻り奥の扉を開ける。


 扉の先は中庭になっていた。まばらだが木々が生え、天然の迷路のようになっている。そして上には開かなかった扉へと続く階段が見えた。なるほど、あの場所の下が、ここか。


 と、そこで奥から何かがぶつかり合う音が聞こえてきた。うん? 誰かが戦っているのか?


 14型とともに音がする方へと駆けていく。まぁ、木々が生えているって言っても視界が悪いくらいで、その隙間が通れないわけじゃ無いからね。直進ですよ。


 中庭を進んでいくと戦っている者達の姿が見えてきた。おー、スキンヘッドに短髪少女たちじゃん。まだ、ここで戦っていたのか。戦っている相手は――牛か。まぁ、アレがアストラルデーモンらしいから、当然か。ここで戦う理由って、そのアストラルデーモンが落とす異形の石だろうからね。にしても、牛の姿なのにアストラルデーモンって凄い違和感があるなぁ。もっといかにも異次元の悪魔って感じで、半透明だったり、黒い影みたいな形で揺らいるようなのを想像していたよ。


 スキンヘッドのおっさんが牛の体に目にも止まらぬ早さの6連撃を叩き込む。それが致命傷になったようだ――牛が崩れ落ちる。おー、スキンヘッドのおっさん、強いなぁ。格闘系のクラスなのかな? せっかく、《格闘》スキルがあるんだから、俺も格闘系の技を覚えたいよなぁ。


「あ、芋虫ちゃん!」

 短髪少女がこちらに気付いたようで声をかけてくる。気付くの早いなぁ。

「と、誰? 芋虫ちゃんの飼い主?」

 飼い主? って、14型か。逆です。ぎゃーくーでーすー。


 短髪少女の言葉を受け、14型が今にも殴りに行きそうな臨戦態勢を取る。って、好戦的だなぁ。14型が脳筋になってる。


『14型、昨日、ここでアストラルデーモンからの精神攻撃を受けて危なかったトコロを助けて貰った冒険者の方々だ』

 俺の天啓を受け14型が構えを解く。

「そうでしたか。私は至高のマスターに仕える戦闘(バトル)メイドの1人、14型です」

 14型がスカートの裾を掴み優雅にお辞儀をする。


「芋虫ちゃんの……従者?」

 そう言えば従者登録していたな。うん、完全に忘れていた。

『ああ』


「おー、何だ、お前、ちゃんと仲間が居たのかよ。そんなナリだからよ、1人なのかと思ってたぜ」

 スキンヘッドが腕を振り回しながら、こちらへと歩いてくる。1人じゃないんだからね! ちゃんと、こっちにも姫さまっていうお友達や商会の仲間とかいるんだからね! と、そうだ。


『ここで、この中庭は終わりか?』

「ああ、そうだ」

 モヒカンが教えてくれる。そっかー、てっきりここに何か上の扉を開くスイッチでもあるのかと思ったけど、無さそうか。むむ、どうしよう。


「芋虫ちゃん、もう他の部屋は回ったの?」

『ああ、上の開かない扉以外は回った』

「じゃあ、途中で徘徊騎士には会わなかった? よく逃げれたねー」

 うん? 徘徊騎士? 何のこと?

『徘徊騎士とは?』

「ありゃ、会ってない? この小迷宮『異界の呼び声』を彷徨っている動く鎧なんだぜー。倒せないし、再生するから逃げるしかないんだ」

 そ、そんなのが居るのか。


「ま、だからよ。俺たちはそいつと鉢合わせしないように避けながら、アストラルデーモンを狩ってるって訳よ」

 スキンヘッドが笑っている。ほー、そうなのか。でも、そんな存在が居るとなると……倒したら上の扉が開くとかありそうじゃね?


「マスター、よろしいですか?」

 何かね、会話に割り込んできた14型さん。

「そろそろ、もったいぶらずに上の台座に、ここの地下で手に入れたカンテラを置いても良いと思うのですが」

 うん? ううん?

「サイズ的にも形的にも間違いないと思うのですが、私はマスターが何故、もったいぶるのか分からないのです」

 えーっと、何故繰り返した。14型、お前、絶対、俺が分かっていなかったことを皮肉ってるよね、知ってて言ってるよね?


 にしても、そうか。あの左右の塔って……。あー、確かに言われてみれば、見張り塔としてはおかしな位置だし、2つあるし、下で手に入ったカンテラも2つだし……。


「ん? ん? 芋虫ちゃんとお姉さん、何話しているんだぜー」


 そうか、そういうことか。

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