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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
394/999

5-90  地下を進む

―1―


 下水を進んでいく。


 下水の通路の先から何やら、あー、うー、と言った空気が漏れているような音が聞こえてきた。


 そのまま、しばらく進むと道の左右に牢屋が見えた。下水道に牢かぁ。誰か捕まっていたのかな……って、誰か居る?


 よく見ると牢の中をボロボロの衣服を身につけ、体がただれ落ちた死体が歩いていた。動く死体かよ……、ホント、ファンタジーな世界だな。


 動く死体が鉄格子を握り、声にならない叫び声を上げる。こわっ! えーっと、これはどうしたら良いんだろうか。眠らせてあげればいいの? 牢を開けて開放してあげればいいの? それとも無視が正解か?


「マスター、どうしたのです? 消しますか?」

 消しません。いや、あのね、消しますか、とか怖い言い方をするなぁ。ま、まぁ、ここは無視して、見なかったことにして進みますか。


 あー、あー、とうめき声が響く下水道を歩いて行く。


 するとすぐに開けた場所に出た。そして、そこには頭部分だけでも4、5メートルはあろうかという巨大な烏賊が居た。天井に頭をぶつけそうだ。って、く、クラーケン? まずは鑑定だ。


【種族:ケルクラーケン】


 いや、本当にクラーケンだったよ。って、こんな水気が無いような場所で良く生き延びていたな。

 目の前の烏賊がこちらに気付いたのか巨大な2本の触手を振るわせこちらへと歩いてくる。って、歩きかよ! ねちょりねちょりと這うような、ゆっくりとした速度だけど、よく地上で動けるな。なんだ、このクラーケン。


 クラーケンが長く伸びた触手をこちらへと叩き付けてくる。

「マスター」

 俺の前に飛び出した14型が触手を左手の甲で受け止める。そして、そのまま腕を回転させ、クラーケンの触手を軸として飛び上がり、その触手を引きちぎる。扇風機?

 って、感心している場合か! 俺も戦闘に参戦しないと。


――《飛翔撃》――


 真紅妃を構え飛び上がり、そのまま巨大な烏賊の脳天へと突き刺す。そして、槍を引き抜き、そのまま後方へと飛ぶ。


――《飛翔》――


 すぐに《飛翔》スキルを発動させ烏賊の頭に取り付く。連続攻撃だぜ、喰らえッ!


――《スパイラルチャージ》――


 赤と紫の螺旋を描いた真紅妃が烏賊の頭を削り、穿つ。脳みそを削って馬鹿にしてやるんだぜー。

 と、そこで烏賊が放電した。俺の体に電流が走る。へ、あ、ががががが。


 俺の体が、力なく、そのまま――烏賊の頭から落下する。

「マスター!」

 14型が俺の体を受け止める。ほ、放電するとか卑怯だろ……。


――[ヒールレイン]――


 癒やしの雨を降らせ、焦げ付いた体を癒やす。し、死ぬかと思ったぞ。烏賊のくせに放電するとかおかしいだろッ!


『14型』

 14型からコンポジットボウを受け取る。放電する烏賊とか近寄れないじゃん。よし、せっかくだから最強の弓技を使ってみるぜ。


 コンポジットボウに黒金の矢を番えスキルを発動させる。


――《ファイナルアロー》――


 番えた黒金の矢に螺旋状の光が集まっていく。うお、これサイドアーム・ナラカを伝って俺にまで振動が来そうな感じだぞ。空気が振動しているというか、凄い力を感じる。


 螺旋を描く光ごと矢を放つ。光の矢が烏賊の頭を螺旋状に削り大きな穴を作り上げる。お、おう。凄い威力だな。烏賊の頭が消し飛んだぞ。チャージアローがピンポイントの貫通、防御無視って感じなら、こちらは破壊って感じだなぁ。にしても、これも結局、矢は戻ってこないのか。使い捨てになるのは、なぁ。


「マスター、まだ終わっていません。戦闘中に考え事をして余裕アピールをするのは、また今度にしてください」

 いや、アピールじゃないからね。って、まだ烏賊が生きているのか?


 頭部分が吹き飛び、下部分だけになった烏賊が触手を振り回す。迫る烏賊の触手を、俺はとっさに真紅妃を使って受け流した。この烏賊、なんという生命力だッ! 烏賊はしぶといなぁ。


「マスターを攻撃するとは……私が終わらせます」

 14型が駆け、そのまま烏賊の目が付いた下部分を叩き潰した。え、あの、14型さん?


 14型の攻撃を受けて、烏賊は動かなくなった。え? 倒した? 14型の一撃で終わり?

 14型が振り返り、こちらへと優雅なお辞儀をする。得意気だなぁ。




―2―


 14型に魔石を回収して貰い、残った死骸は魔法のウェストポーチXLに収納する。これ、ここまでズタボロだと素材としての価値はなさそうだよな。ポンちゃんに渡して俺のご飯にして貰おう。そうしよう。


 道を塞いでいた巨大なクラーケンを片付けると、明かりが漏れてきた。うん? 出口か?


 そのまま道を進むと外に出た。って、崖じゃん! いや、崖って言うほど高くは無いか。


 壁をくり抜かれたような形で作られた道の先には小さな桟橋が作られていた。出っ張った桟橋の先には何も無く、下を見れば、流砂が渦巻いていた。ここから流砂までの距離は余り高くない――4、5メートルほどだろうか。


 うーん、これで終わりか。烏賊が居ただけで何もなかったなぁ。でも、なんでこんな水気も無いような場所に烏賊が……。そりゃまあ、井戸の下や穴の下にはクラーケンやジェノサイドな蟹が居るモノだけどさ。ここは井戸じゃないんですぜ。下水道なんだから、聖杯くらい置いといて欲しいよね。


 ま、ここに居ても仕方ない。戻りますか。


――《飛翔》――


 《飛翔》スキルを使い来た道を戻る。《飛翔》スキルを数度ほど使った所で中央の分岐路へと戻ることが出来た。


 んじゃまぁ、残りの道を探索しますか。


 で、次の道は、と――こちらはすぐに行き止まりとなった。上に穴が開いているのも同じ、と。じゃ、戻りますか。


 道を戻り、次の道を進む。しばらく進むと、元々は行き止まりであったであろう崩れた壁に当たり、その崩れた壁の先は沢山の樽が並ぶ倉庫になっていた。


 倉庫?


 この樽、なんだろう? よし、鑑定だ。分からなかったら――困ったら鑑定だ。樽って線が見えているってコトはアイテムだろうしね。


【ワイン樽】

【年代物のワインが入った樽】


 あー、そうなんだ。って、この世界にワインがあったのか。でもブドウとか見たこと無いんですけど。うーん、謎の果実から作られたワインなのかな? ま、せっかくだから貰っていきましょう。

 並んでいる樽を魔法のウェストポーチXLに入れていく。よっし、全部で12個と。これ、かなりの年代物ぽいけど、まだ飲めるようなら食堂で出すのも悪くないよね。


 で、奥の壁には上に上がる梯子と――その先は壁か。このワイン蔵が埋められたって感じなのか?


 残りの2ヶ所の道もすぐに行き止まりとなっていた。これで全部回ったか。これ以上は何もなさそうだな。仕方ない、来た道を戻って、橋の上に戻りますかね。


 ということで、やっと城の中の探索が出来るね。ここからが、14型さんの出番ですぜ!

2021年5月4日修正

で、置くの壁には → で、奥の壁には


2021年5月10日修正

渦巻いていたい → 渦巻いていた

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