5-86 わくわくだ
―1―
さて、扉を調べますか。
両開きの大きな扉に触れると、扉が、錆び付いていたのか、悲鳴のような、金属と金属が擦れる音が――そんな嫌な耳障りな音ともに内側へと開いていった。おー、オートで開くとかハイテクだねぇ。
部屋の中は石壁の通路よりは少しだけ明るかった。広さは――少し狭い講堂って感じだな。部屋の奥にはガラスによって作られたであろうステンドグラスのような飾りがある。地下室にステンドグラスってさ、陽射しも入ってこないだろうに何の意味があるんだろうね。にしてもガラスかぁ。
ステンドグラスの下には祭壇のようなモノ、部屋の中央には、まるで怪しい儀式でも行うかのように、円上に配置された燭台があった。なんだろう、何か怪しいおかるてぃな儀式でも行っていたんだろうか。
って、アレ?
ちょっと前にも同じようなコトが無かったか? 俺、似たようなモノを見た覚えがあるぞ……。えーっと、何処だったかなぁ。うん、忘れた! これはデジャヴか! ま、まぁ、調べているうちに思い出すだろう。
中央の燭台を確認する。銀かな?
――[クリエイトインゴット]――
燭台が光に包まれ四角い金属の塊になる。お、出来た。窃盗とかにはならないのかな? ま、ちょっと鑑定してみよう。
【上質な銀のインゴット】
【銀を精製し作成された上質な銀の塊】
金属の塊は2つ、と。燭台一個で2個の銀のインゴットが作成可能か。上質になったのは俺のクリエイトインゴットの熟練度が高いからかな?
よし、もう一個作ってみよう。
【銀のインゴット】
【銀を精製し作成された銀の塊】
あら? 失敗したのか? いや、普通か、普通。
ま、せっかくだから燭台を全部、インゴットに変えちゃいますか!
置かれていた8個の燭台から、上質な銀のインゴットを4個、銀のインゴットを10個、クズ銀のインゴットを2個、作成です。
一個、失敗してクズになったのが勿体ないよなぁ。にしても、クズって、クズって呼び方は酷いよなぁ。もうちょっと言いようってあると思います。
まぁ、魔法のリュックに入れておくか。
燭台から美味しい? アイテムもゲットしたことですし、祭壇の方に行ってみますかね。
祭壇に近寄ると祭壇の上に金属の塊が乗っているのが見えた。あー、分かっちゃった。謎のパーツって線が伸びているもん。これってアレだ、帝都の闘技場の地下にあった小迷宮と同じじゃん。
鑑定してみよう。
【謎のパーツ】
【何かに使う謎の部品】
はいはい、そうだよね。謎だよね、あー、もう、ホント、謎!
……。
後で14型に渡しておくか。って、14型? ちょっと待てよ。14型ってロボだよな。機械的な存在だよな? も、も、もしかして精神的な攻撃とかを無効化するんじゃないか? 一緒に小迷宮『異界の呼び声』に行けば、何とかなるんじゃないか? よし、明日、試してみよう!
―2―
何故か偉そうに俺の前を歩く羽猫とともに小迷宮『試練の迷宮』を脱出する。
「試練の迷宮のクリア……おめでとうございます」
猫人族のお姉さんが少し引きつった笑顔でお祝いしてくれる。はい、ありがとうです。と、そうだ。1つ、確認しておこう。
『封術士というクラスがあると思うのだが』
「え、ええ、治癒術士の派生クラスですね」
へぇ、あれってば、治癒術士の派生クラスなんだ。って、ことはさっきの冒険者パーティ、回復2枚かよ。クラスかぶってんじゃん! いや、待てよ。でもさ、生きるの死ぬのの世界なんだ、生存率を上げるのは重要か。回復2枚って賢い選択かもしれないなぁ。
『封術士は、この小迷宮『試練の迷宮』に挑戦出来るのだろうか?』
俺の天啓に猫人族のお姉さんが首を横に振る。
「封術士になれるほどの方は冒険者として優秀ということですから――それに需要も高いですし、『試練の迷宮』に挑戦して貰う必要はありません」
やはり、そうか。封術士のスキルや特性は分からないけど、多分、そのクラスなら幻覚を受けることなく、奥の扉に到達してしまうだろうからね。どう考えてもさ、俺が初めて奥の扉に到達した感じだったもんな。こういうカラクリがあったってワケだね。いやあ、俺凄い!
……。
でも、手に入ったのが謎のパーツではなぁ。もっといいモノや何かこの世界の秘密に迫るような何かが欲しかったなぁ。
ま、冒険者ギルドに行きますか!
そのつもりで迷宮都市に《転移》したワケだしね!
コカトリスを換金しないと! というかだね、この地で倒した魔獣だから、現地で換金すると何か特典が無いかなーって考えたワケですよ。
ということで冒険者ギルドへ出発! その後は14型にパーツを渡して、迷宮探索に連れて行くことを話して、フルールに銀のインゴットを渡して――あ、そうだ。ついでにフルールに銀から何が作れるかを聞いてみるか。俺にとって有用そうなモノが作れるなら、それはゲットするってコトで。
よしよし。
楽しくなってきた!